
高熱、倦怠感、関節痛…つらいインフルエンザの症状に襲われた時、一刻も早く楽になりたいですよね。
ドラッグストアで手軽に買える市販薬に頼りたくなる気持ちも分かります。
しかし、その選択、本当に安全でしょうか? 実は、インフルエンザの時に安易に市販薬を使うと、症状を悪化させる危険性があることをご存知ですか?
この記事では、インフルエンザにおける市販薬の正しい使い方、市販薬と処方薬の違い、そして知っておくべき注意点について医師が徹底解説します。ご自身の健康を守るための知識を、ぜひここで身につけてください。
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インフルエンザの症状と市販薬の選び方
インフルエンザにかかると、高熱や全身の倦怠感で何も手につかなくなり、日常生活に大きな支障をきたします。
しかし、インフルエンザに対する市販薬の使い方には注意が必要です。この章では、インフルエンザの症状に合わせた市販薬の選び方や、注意すべき点について、医師の立場から詳しく解説します。
インフルエンザの主な症状4つ
インフルエンザの症状は風邪と似ていますが、その程度は一般的に普通の風邪よりも重く、全身症状が強く出ることが特徴です。主な症状は以下の4つです。
38度以上の突然の高熱:インフルエンザでは、多くの場合、悪寒と共に急激に体温が上昇し、38度以上の高熱が出ます。風邪でも発熱することはありますが、インフルエンザほど急激で高熱になることは稀です。
強い倦怠感:倦怠感は、体のだるさや疲労感、無気力感といった状態を指します。インフルエンザでは、この倦怠感が非常に強く、起き上がることも困難になることがあります。風邪でも倦怠感はありますが、インフルエンザの場合、日常生活に支障が出るほどの強い倦怠感を覚える方が多いです。
関節痛や筋肉痛:全身の関節や筋肉が痛み、まるで体中を殴られた後のような痛みを経験する方もいます。風邪でも多少の筋肉痛を感じることはありますが、インフルエンザでは、より強い痛みを感じることが多いです
咳や鼻水、喉の痛み:風邪と同様に、咳、鼻水、喉の痛みといった症状も現れます。これらの症状は、ウイルスが呼吸器系に感染することで引き起こされます。
これらの症状は個人差があり、全てが現れるとは限りません。また、高齢者や乳幼児では、典型的な症状が現れにくい場合もあり、より注意が必要です。

インフルエンザに対する市販薬の種類と効果
インフルエンザの症状緩和に用いられる市販薬には、主に以下の種類があります。
症状に合わせた市販薬の選び方
インフルエンザに効かない市販薬
一点、皆さんに覚えておいて欲しいポイントがあります。
それは市販薬は、インフルエンザウイルスそのものを退治することはできないということ。
ニワトコなどのハーブが上気道症状の緩和に有効(※1)という研究結果もありますが、インフルエンザウイルスへの直接的な効果は認められていません。
市販薬は、あくまで発熱や咳、のどの痛みといった症状を一時的に緩和するための対症療法です。
インフルエンザを早く治したい、あるいは抗インフルエンザ薬で治療したい場合はクリニックで抗インフルエンザウイルス薬による治療を受ける必要があります。
注意!インフルエンザの市販薬で悪化するケース
また市販薬の中には、インフルエンザの症状を悪化させる可能性のあるものがあります。
特に、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる成分を含む解熱鎮痛薬は、インフルエンザ脳症のリスクを高める可能性が指摘されているため、15歳未満の小児には使用を控えましょう。
また、アセトアミノフェンであっても、過剰摂取は肝障害を引き起こす可能性があります。用法・用量を守って服用することが大切です。
症状が改善しない場合や、悪化した場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、インフルエンザ治療も行っているので気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

インフルエンザの市販薬と処方薬の違い
市販薬と処方薬の成分の違い
インフルエンザの市販薬と処方薬の最も大きな違いは、その「成分」にあります。
処方薬には、インフルエンザウイルスが増殖するのを直接抑える「抗インフルエンザウイルス薬」が含まれています。オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)などがその代表です。これらの薬は、医師の処方箋がないと入手できません。
市販薬には、この抗インフルエンザウイルス薬は含まれていません。市販薬に含まれるのは、発熱や痛み、鼻水、咳などの症状を和らげるための成分です。例えば、解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンやイブプロフェン、咳止めとしてデキストロメトルファンやジヒドロコデインリン酸塩などが配合されています。
必ずしも処方薬を使用しなければインフルエンザが治らない訳ではないのですが、薬の成分としては全く違うものになっています。
市販薬と処方薬の効果の違い
成分の違いにより、効果にも違いが現れます。
処方薬である抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザウイルスそのものに直接作用し、増殖を抑えることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めます。ウイルスが増えるスピードを弱めることで、私たちの体がウイルスに対抗するための時間を稼いでくれるのです。
市販薬は、発熱や痛み、咳などの症状を一時的に和らげる効果はありますが、インフルエンザウイルス自体を退治することはできません。つまり、根本的な原因であるウイルスへの攻撃ではなく、あくまで症状を抑えるための対症療法です。
有効成分の働き方や期待できる効果が異なることを理解しておく必要があります。

市販薬と処方薬の副作用の違い
市販薬も処方薬も、副作用のリスクが全くないわけではありません。
処方薬である抗インフルエンザウイルス薬には、吐き気や嘔吐、下痢、めまい、異常行動などの副作用が報告されています。特に、タミフル服用後の異常行動については、過去に痛ましい事例も発生しており、10代の方への処方は原則として控えることになっています。
市販薬では、配合されている成分によって、胃腸障害、眠気、めまいなどが起こる可能性があります。特に、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)は、インフルエンザ脳症のリスクを高める可能性があるため、15歳未満の小児には使用を控えるべきです。インフルエンザ脳症は、インフルエンザに合併して起こる脳の病気で、意識障害やけいれん、異常行動などの症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。
それぞれの薬によって副作用の種類や頻度は異なりますので、医師や薬剤師に相談し、指示された用法・用量を守ることが大切です。
市販薬と処方薬の価格の違い
一般的に、市販薬は処方薬よりも価格が安価です。
市販薬は、薬局やドラッグストアなどで手軽に購入できます。
一方、処方薬は、医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で処方箋を出してもらい、薬局で購入する必要があり、診察料や処方箋料などがかかるため、市販薬に比べると費用がかかりますが、保険適応では多くの場合3割負担なので費用も抑えられます。
どちらを選ぶべき?市販薬と処方薬
インフルエンザが疑われる場合、基本的には医師の診察を受けることをおすすめします。
特に、高熱が続く場合や、呼吸が苦しい、意識がもうろうとするなどの重い症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
救急の受診でも構いません。医師の診察を受ければ、適切な検査を行い、インフルエンザかどうかを診断してもらい、適切な処方薬による治療を受けることができます。
早期に適切な治療を開始することで、重症化のリスクを減らし、回復を早めることができます。また、周りの人への感染拡大を防ぐためにも、医療機関を受診することが重要です。
市販薬は、医療機関を受診できない場合や、症状が軽い場合に、一時的に症状を和らげるために使用することを検討しましょう。あくまで対症療法であることを理解し、使用する場合でも、用法・用量を守り、自己判断で長期間使用することは避けましょう。
症状が改善しない場合や、悪化した場合は、すぐに医療機関を受診してください。

インフルエンザの市販薬に関する注意点とQ&A
よくあるQ&Aについてもまとめておきます。
インフルエンザの時に解熱剤は使って良い?
高熱が続く場合は、アセトアミノフェンを成分とする解熱剤を使用することができます。
アセトアミノフェンは、比較的副作用が少なく、胃腸への負担も軽い解熱剤です。ただし、アセトアミノフェンにも副作用のリスクはありますので、用法・用量を守り、過剰摂取は避けましょう。
一方、イブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を成分とする解熱剤は、インフルエンザ脳症のリスクを高める可能性が指摘されているため、15歳未満の小児は使用は控えましょう。
ただし、15歳以上であれば使用に関しては制限されていないので、アセトアミノフェンなどで解熱せず、しんどい症状が続く場合は使用する選択肢もあります。
子供や高齢者に市販薬を使う際の注意点
子供や高齢者の方は、市販薬の副作用が出やすい傾向があります。
子供に市販薬を使用する場合は、小児用量を必ず守り、NSAIDsを成分とする解熱剤は使用しないでください。高齢者の方は、持病や他の薬との飲み合わせに注意が必要です。

インフルエンザが疑われる場合の相談窓口
インフルエンザが疑われる場合は、もし症状が重篤であればかかりつけや地域の救急外来で相談しましょう。
重篤ではない場合は、現在は薬局でのインフルエンザの検査キットで判断をつけ、オンライン診療でお薬を処方してもらうケースも増えています。
また、例えば家族内や職場内でインフルエンザが増えている場合に、急な発熱や寒気、関節痛の症状が起きるなど、明らかにインフルエンザを疑わせる場合は、周囲の感染状況を鑑みて医師が検査なしの「臨床診断」でインフルエンザと診断する場合もあります。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも「インフルエンザの臨床診断」を行い、検査を行っていない場合も医師が病歴からインフルエンザと診断すれば抗インフルエンザ薬を処方するケースもございます。
まとめ
インフルエンザの症状緩和には市販薬も選択肢の一つですが、ウイルスそのものを退治することはできません。
症状を一時的に和らげるための対症療法として使用します。こちらで症状が十分に良くなることもありますが、
重症化リスクがある場合や、早めに症状を緩和したい場合は抗インフルエンザウイルス薬の処方が必要な場合もあります。市販薬を選ぶ際は、成分や副作用、他の薬との飲み合わせに注意し、用法・用量を守ることが大切です。
特に小児や高齢者、持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、医師や薬剤師に相談しましょう。インフルエンザが疑われる場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
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参考文献
- ※1Hawkins J, Baker C, Cherry L, Dunne E. Black elderberry (Sambucus nigra) supplementation effectively treats upper respiratory symptoms: A meta-analysis of randomized, controlled clinical trials. Complementary therapies in medicine 42, no. (2019): 361-365.