ブデホル吸入粉末剤の正しい使い方|効果が出るまで・副作用について医師が解説

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喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療において、吸入薬は欠かせない存在となっています。

その中でも「ブデホル吸入粉末剤」は、シムビコートというお薬のジェネリック医薬品として、多くの患者さんに使用されています。

この記事では、ブデホル吸入粉末剤の特徴や正しい使い方、効果、副作用などについて詳しく解説します。吸入器の使い方がよく分からない方や、効果がいつから出るのか気になる方、副作用が心配な方にも参考にしていただける内容となっています。

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ブデホル吸入粉末剤とは

ブデホル吸入粉末剤とは、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状緩和や治療に用いられる吸入薬です。

このお薬はシムビコートタービュヘイラーというお薬のジェネリック医薬品で、「ブデホル吸入粉末剤30吸入」と「ブデホル吸入粉末剤60吸入」があり、製薬会社によって「JG」「MYL」「ニプロ」などの製品が販売されています。

ブデホル吸入粉末剤の成分

ブデホル吸入粉末剤はぜんそくやCOPDの治療に用いられる吸入薬です。特徴的なのは、1つの吸入器の中に、働きの異なる2種類の有効成分が配合されている点です。

  1. ブデソニド(吸入ステロイド薬:略してICS)
    気管支の壁で起きている「炎症」を根本からしっかりと抑える働きがあります。ぜんそくやCOPDの多くのケースでは、気道に慢性的な炎症が起きており、これが症状の原因となっています。
    ブデソニドは、この炎症を鎮めることで、気道が過敏になるのを防ぎ、症状の悪化や発作を予防します。気道の”火事”を鎮火してくれる頼もしい成分です。
  2. ホルモテロールフマル酸塩水和物(長時間作用性β2刺激薬:略してLABA)
    気管支を取り囲んでいる筋肉(気管支平滑筋)の緊張をほぐし、狭くなった気道を効果的に広げる働きがあります。
    “長時間作用性”という名前の通り、効果が比較的長く続くのが特徴で、呼吸が楽な状態を維持するのを助けます。空気の通り道である気道を広げ、スムーズな呼吸をサポートしてくれる成分です。

この「炎症を抑える力」と「気道を広げる力」が組み合わさることで、ぜんそくやCOPDの症状を効果的にコントロールします。

ブデホル吸入粉末剤の効果

  • ぜんそくの発作を予防する
  • ぜんそくやCOPDの日常的な症状(咳、痰、息切れなど)を和らげる
  • COPDの症状が急に悪化する「増悪(ぞうあく)」を減らす
  • 肺の機能(呼吸機能)を改善・維持する

ブデホル吸入粉末剤は、症状の波を穏やかにし、安定した状態を長く保つことを目的としたお薬です。

どんなときに使う?(適応疾患)

  • 気管支喘息(吸入ステロイド薬と長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が必要とされる場合)
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD) の症状の維持・管理

ブデホル吸入粉末剤は、基本的に「発作止め」ではありません!

多くの場合、ブデホル吸入粉末剤は症状がない時も毎日コツコツと続ける「長期管理薬(コントローラー)」という位置づけです。
急に起こった発作をすぐに鎮めるための「発作治療薬(リリーバー)」(例:短時間作用型の気管支拡張薬など)とは役割が異なります。(ただし、医師の特別な指示で、発作時にも頓用する「SMART療法」もあります。)

ブデホル吸入粉末剤の使い方(用法・用量

正しい吸入・保管方法

ブデホル吸入粉末剤の効果をしっかり得るためには、吸入器(タービュヘイラー)を正しく使うことが何よりも大切です。少し練習が必要かもしれませんが、慣れれば簡単ですよ。

  1. 薬のセット
  2. ゆっくりと息を吐く
  3. 強く」「深く」「速く」 吸入
  4. 5-10秒息を止める
  5. ゆっくりと息を吐く
  6. うがいをする

詳しい使用・保管方法はこちらの記事をチェック

残量カウンターの見方

吸入器の側面には、あと何回吸入できるかを示すカウンター(窓)があります。

使い始めは「60」(または「30」)と表示されています。数字が「20」になると、赤い印が見え始めます。これは、そろそろ新しい吸入器を準備するサインです。

カウンターの数字が「0」になったら、中にお薬は残っていませんので、吸入器を振ってもカラカラ音がしても使用できません。

用法/用量

使う回数や吸入量は、患者さんの病状や年齢によって異なります。必ずお医者さんの指示に従ってください。

気管支喘息の場合

  • 維持療法(毎日続ける使い方)
    通常、大人は1回に1吸入または2吸入を、1日2回(例えば朝と晩)吸入します。症状によっては、1回4吸入まで増えることもあります。
  • SMART(スマート)療法(医師の特別な指示がある場合)
    これは、普段の維持吸入(例:1回1~2吸入を1日2回)に加えて、ぜんそくの発作が起きた時にも、頓服(とんぷく:発作時のみ使用)としてブデホル吸入粉末剤を追加で吸入するという使い方です。
    発作時には通常1回1吸入し、数分経っても改善しない場合は追加できますが、1回の発作での合計吸入回数や1日の総吸入回数には上限があります(通常1日合計8回まで、一時的に最大12回までなど、医師の指示によります)。
    SMART療法を行う場合は、そのルールを必ず医師から詳しく聞き、しっかり守ることが非常に重要です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の場合

  • 通常、大人は1回に2吸入を、1日2回(例えば朝と晩)吸入

あくまでこれらは一般的な例です。あなたにとって最適な用法用量は、診察したお医者さんが判断します。
指示された吸入回数やタイミングを必ず守ってください。

吸入後のうがい、なぜ必要?忘れるとどうなる?

うがいが必要な理由

ブデホル吸入粉末剤に含まれるステロイド成分(ブデソニド)は、気道に届いて炎症を抑える大切な働きをしますが、一部が口の中や喉に付着してしまうことがあります。

これをそのままにしておくと、声がれ(嗄声:させい)や口の中にカビが生える「口腔カンジダ症」喉の痛みや刺激感といった局所的な副作用を引き起こす原因になります。

うがいは、これらの好ましくない副作用を防ぐための、とても重要なケアです。

もし、うがいを忘れてしまったら?

上記のような副作用、特に声がれカンジダ症が起こりやすくなります。

カンジダ症になると、口の中に白い苔のようなものが付着したり、食べ物がしみたり、痛みを感じたりすることがあります。

正しい(理想的な)うがいの方法

吸入が終わったら、すぐに洗面所などに行き、まず水を口に含んで「ガラガラ」と喉の奥をうがいします。次に、新しい水を口に含んで「クチュクチュ」と口の中全体をよくすすぎます。

これを数回繰り返しましょう。うがい薬を使う必要はありません、水で十分です。

外出先などで、すぐにうがいをするのが難しい状況もあるかもしれません。そんな時は、最低限、水を飲んで口の中を洗い流すだけでも、何もしないよりはずっと良いです。

可能であれば、後でしっかりうがいをするように心がけましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、ブデホル吸入粉末剤をはじめとした安定した喘息の治療なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

ブデホル吸入粉末剤の副作用

主な副作用

  • 嗄声(させい):声がれ、声がかすれる。
  • 口腔咽頭カンジダ症: 口の中や喉の粘膜に、白い苔のようなものが付着する(カビの一種)。ヒリヒリとした痛みを感じることもあります。
  • 咽喉頭(のど)の刺激感、痛み、違和感口内炎

これらの副作用は、吸入ステロイド成分が口や喉に残ることが原因で起こります。吸入後のうがいをしっかり行うことで、これらの副作用の大部分は防ぐことができます。

他にも

  • 手の震え(振戦):LABA(ホルモテロール)の作用によることがあります。
  • 動悸(心臓がドキドキする):LABAの作用によることがあります。
  • 頭痛筋肉のけいれん(こむら返りなど)血糖値の上昇:糖尿病の方は血糖コントロールに注意が必要です。
  • 血清カリウム値の低下:他の薬との併用などで起こりやすくなることがあります。

重篤な副作用としてアナフィラキシーショック(急激なアレルギー反応で、呼吸困難、血圧低下などが起こる)、重篤な血清カリウム値の低下などもあります。これらは、極めてまれですが、万が一体調に急激な異変を感じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

副作用が出たときの対処法

  • 吸入後のうがい徹底:これだけで口腔カンジダの発症はかなり抑えられます。
  • 声のかすれが長引く場合:医師に相談を。吸入方法の再確認や、補助器具の利用を検討しても良いかも。
  • 動悸が出たら無理をせず休憩し、症状が収まらなければ受診しましょう。

ブデホル吸入粉末剤の注意事項(禁忌)

使用に注意が必要な方や飲み合わせが悪い薬

  • 有効な抗菌薬がない感染症、または深在性真菌症(体の深い部分に起こるカビの感染症)にかかっている方:ステロイド成分が免疫を抑えるため、感染症が悪化する可能性があります
  • ほかのステロイド吸入薬や同種のβ2刺激薬:併用が必要な場合は医師の指示を厳守
  • 特定の心疾患や甲状腺疾患をお持ちの方:β2刺激薬の影響で症状が悪化する可能性があるため、医師とよく相談しましょう。
  • CYP3A4阻害薬(一部の抗真菌薬、抗生物質、抗HIV薬など)
  • QT延長を起こす可能性のある薬(一部の不整脈治療薬、抗精神病薬など)
  • 利尿薬、他の気管支拡張薬など

現在使っているお薬(飲み薬、貼り薬、塗り薬、他の吸入薬、市販薬、サプリメントなど全て)は、必ずお医者さんや薬剤師さんに伝えるようにしましょう。

使用上の注意

吸入後のうがいは必須

副作用を減らすためにも、毎回しっかり行いましょう。

定期受診で症状と肺の状態をチェック

勝手に使用を中止・変更せず、医師の指示どおり継続しましょう。

症状が悪化した際に一時的に追加吸入を指示されることもありますが、勝手に回数を増やすのはNG

毎日コツコツ続ける

ブデホル吸入粉末剤は、症状が出ている時だけ使うお薬ではありません(SMART療法を除く)。ぜんそくやCOPDは、症状がないように見えても気道に炎症が続いていることが多いのです。「最近調子がいいから、もうやめてもいいかな?」と自己判断で吸入をやめたり、回数を減らしたりすると、病状が急に悪化したり、大きな発作を起こしたりする可能性があります。お医者さんの指示通りに、毎日忘れずに続けることが、安定した状態を保つために非常に重要です。

発作が起きた時の正しい対応

①維持療法

急に咳がひどくなったり、息苦しくなったりする発作が起きた場合は、ブデホル吸入粉末剤を使っても効果はありません。必ず、お医者さんから別途処方されている発作治療薬(リリーバー)(例:メプチンエアー、サルタノールインヘラーなど)を使ってください。そして、どの薬をいつ、何回使ったかを記録しておくと、次の診察時に役立ちます。

②SMART療法

発作が起きた場合は、お医者さんから指示されたルールに従って、追加でブデホル吸入粉末剤を吸入してください。ただし、決められた回数を使っても症状が改善しない場合や、発作の頻度が増えてきた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。 ご自身がどちらの治療法なのか、そして発作時にはどうすればよいのかを、しっかりとお医者さんに確認しておきましょう。

吸入を忘れたら?

気づいた時点ですぐに1回吸入し、次回は通常時間に吸入すればOK。

ただし、2回分をまとめて吸入するのは避けましょう。過度の吸入は副作用リスクを高めます。

ブデホル吸入粉末剤に市販薬はある?値段は?

市販薬

ブデホル吸入粉末剤は医療用医薬品ですので、医師の処方箋が必要です。ドラッグストアなどで購入することはできません。

ジェネリック名

ブデホル吸入粉末剤自体がシムビコートのジェネリック医薬品です。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」:758.1円
  • ブデホル吸入粉末剤60吸入「JG」:1,223円
  • ブデホル吸入粉末剤60吸入「MYL」:1,364.6円

※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

ブデホル吸入粉末剤30吸入「ニプロ」/ブデホル吸入粉末剤60吸入「ニプロ」

よくある質問(FAQ)

Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
吸入ステロイドは比較的安全とされていますが、妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方は、必ずお医者さんに相談してください。自己判断で使用を開始したり、中止したりすることは絶対に避けてください。

Q. 小児でも使える?
はい、ブデホル吸入粉末剤は小児の気管支喘息の治療にも用いられます。 ただし、使用が認められている年齢(通常5歳以上)や、お子さんに適した用法・用量がありますので、必ずお医者さんの指示に従って正しく使用してください。

Q. 車の運転への影響は?
ブデホル吸入粉末剤の吸入そのものが、通常、運転能力に直接的な影響を与えることは少ないと考えられています。
ただし、副作用としてめまいなどが現れる可能性は否定できません。また、ぜんそくやCOPDの症状が不安定な時は、運転に集中できないこともありますので、ご自身の体調をよく考慮して、無理な運転は避けるようにしましょう。

Q. いつから効果が出ますか?効果が出るまでの期間は?
ブデホル吸入粉末剤に含まれる気管支拡張成分(ホルモテロール)の効果は比較的速く、吸入後数分~数十分で呼吸が少し楽になるのを感じる方もいます。しかし、もう一つの主成分である吸入ステロイド(ブデソニド)による気道の炎症を抑える効果は、すぐには現れません
炎症がしっかり改善し、症状が安定してくるまでには、毎日コツコツと吸入を続けて、数日から数週間かかるのが一般的です。「すぐに効かない」と感じても、指示通りに根気強く続けることが非常に大切です。

Q. お酒と一緒に飲んでも大丈夫?
ブデホル吸入粉末剤とお酒との間に、直接的に危険な相互作用があるという報告は多くありません。しかし、アルコールを飲みすぎると、ぜんそくやCOPDの症状を悪化させることがあります。

Q. うまく吸入できたか分かりません。どうすればいいですか?
ブデホル吸入粉末剤は吸入しても味や粉の感覚がほとんどないため、吸えたかどうかわかりにくいことがあります。
吸入時に「カチッ」という音がしたか、カウンターが1つ減っているか、息を「強く、深く、速く」吸えたかなどを確認しますが、それでも不安な場合は、遠慮なく薬局の薬剤師さんに相談し、吸入方法を再度チェックしてもらうのが一番です。

Q. 吸入すると味や匂いはしますか?
ほとんど味も匂いもありません。そのため、「本当に薬が入っているのかな?」と不安になる方もいらっしゃいますが、正しく操作できていれば大丈夫です。

まとめ

ブデホル吸入粉末剤は、気道の炎症を抑える成分と気道を広げる成分が一緒に働くことで、ぜんそくやCOPDの症状を効果的にコントロールしてくれる頼もしい吸入薬です。

このお薬の効果を最大限に活かし、安全に治療を続けるためには、

  1. 吸入器(タービュヘイラー)の正しい使い方をマスターすること
  2. 吸入後の「うがい」を必ず習慣にすること
  3. 症状がない時でも、毎日指示通りに吸入を続けること

この3点が非常に重要になります。

正しい使い方を覚えて、ブデホル吸入粉末剤のメリットを最大限活かし、快適な呼吸を取り戻していきましょう。

もし疑問が残るときや副作用が気になるときは、遠慮なく主治医や薬剤師に尋ねてみてくださいね。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。