
高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行し、気づかないうちに心臓や脳、腎臓などに大きなダメージを与えることがあります。高血圧治療の基本は生活習慣の改善ですが、それだけでは血圧が下がらない場合、降圧薬による治療が必要になります。
アジルサルタン(商品名:アジルバ)は、2012年に発売された比較的新しい高血圧治療薬で、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれるグループに属しています。
この記事では、アジルサルタンの基本情報から効果、副作用、注意点まで、専門的な情報をできるだけわかりやすく解説します。
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アジルサルタン(アジルバ)とは?効果は?
アジルサルタン(アジルバ)は、「ARB(エーアールビー:アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」というグループに属する高血圧のお薬です。比較的新しいタイプのお薬で、血圧を下げる効果がしっかりしており、副作用が比較的少ないという特徴があります。
アジルサルタン(アジルバ)の成分
アジルサルタン(アジルバ)の有効成分は、その名の通り「アジルサルタン」です。このお薬は、私たちの体内で血圧を上げる重要な役割を持つ「アンジオテンシンII」という物質の働きを邪魔することで、血圧をコントロールします。
アンジオテンシンIIは、血管にある「AT1受容体」という特定の”ドアノブ”のような部分にくっつくことで、「血管を縮めろ!」という指令を出します。血管が縮むと、血液が流れる道が狭くなり、結果として血圧が上がってしまいます。
アジルサルタンは、このアンジオテンシンIIがAT1受容体にくっつくのを、まるで鍵穴に別の鍵を差し込むようにしてブロックします。指令が伝わらなくなるため、血管はギュッと縮むことなくリラックスし、広がりやすくなります。その結果、血液の流れがスムーズになり、血圧が下がるという仕組みです。
アジルサルタンは、数あるARBの中でも、この受容体への結合力が強く、血圧を下げる効果がしっかりとしており、かつその効果が長く(約24時間)続くように設計されているお薬の一つです。
アジルサルタン(アジルバ)の効果
アジルサルタン(アジルバ)の主な効果は、高い血圧を適切なレベルまで下げること(降圧効果)です。
血圧が高い状態が長く続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかり、血管が硬く、もろくなる「動脈硬化」が進みやすくなります。動脈硬化は、心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気、脳梗塞や脳出血といった脳卒中、さらには腎臓病など、命に関わる重大な病気の大きな原因となります。
アジルサルタン(アジルバ)をはじめとする降圧薬で血圧をしっかりと管理することは、単に血圧の数値を下げるだけでなく、これらの将来起こりうる重大な病気のリスクを減らすことにつながる、非常に大切な意味を持っているのです。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
アジルサルタン(アジルバ)は「高血圧症」の治療に用いられます。主に血管に作用して血圧を調整します。
アジルサルタン(アジルバ)の使い方(用法・用量)
通常、成人にはアジルサルタンとして1日1回20mgをお水またはぬるま湯で服用します。
飲み始めの際は、血圧が下がりすぎるのを防ぐために、より少ない量(例:10mg)からスタートすることもあります。患者さんの年齢や血圧の状態、他の病気の有無などによって、お医者さんが判断し、量を増やしたり減らしたりしますが、1日の最大投与量は40mgまでです。
1日1回の服用で、血圧を安定させる効果が約24時間持続するように作られています。そのため、飲み忘れが少なく、生活に取り入れやすいお薬です。
食事による影響は少ないとされていますが、毎日決まった時間に飲む習慣をつけることで、飲み忘れを防ぎ、安定した効果を得やすくなります(例:朝食の後など)。
高血圧のお薬は、ご自身の判断で飲む量を変えたり、飲むのをやめてしまったりすると、血圧が不安定になったり、急に上がってしまったりする危険性があります。「血圧が下がってきたからもういいかな?」と思っても、必ずお医者さんの指示に従い、定期的に診察を受けるようにしましょう。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、症状に応じてアジルサルタン(アジルバ)の処方や生活習慣病の治療も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

アジルサルタン(アジルバ)の注意事項・禁忌
使用に注意が必要な方
以下の方はアジルサルタンを使用できません(禁忌)
- アジルサルタンの成分に対してアレルギーのある方
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性 :お腹の赤ちゃんや新生児に悪影響(奇形、腎不全、死亡など)を及ぼす可能性が高い
- アリスキレンフマル酸塩(商品名:ラジレス)を服用中の糖尿病患者:腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが著しく高まるため、原則として併用不可。(他の降圧薬を最大限使用しても効果が不十分な場合に限り、医師が慎重に判断した上で併用されるケースも極めてまれですがあります)
以下の方はアジルサルタンの使用に注意が必要です
- 両側性腎動脈狭窄のある方、または片腎で腎動脈狭窄のある方
- 高カリウム血症の方
- 脳血管障害のある方
- 厳しい減塩療法中の方
- 血液透析中の方
- 重度の腎機能障害のある方
飲み合わせに注意が必要な薬
- カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトンなど)
- カリウム製剤
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- リチウム製剤
- 利尿降圧剤(特に併用開始時)
使用上の注意
- 降圧作用によるめまいやふらつきに注意し、自動車の運転や危険を伴う機械の操作には気をつける
- アルコールは降圧作用を増強する可能性があるため、適量にとどめる
- 過度な運動や脱水に注意する(血圧が急激に低下する恐れがある)
- 手術前24時間は服用を避けるよう医師に相談する
- 定期的に血圧測定や血液検査を受ける
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
- 子どもの手の届かない場所に置いてください。
飲み忘れたら?
服用を忘れた場合は、気づいたタイミングですぐに1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合(8時間以内など)は、忘れた分は飛ばして通常のスケジュールで次回分を服用しましょう。
決して2回分を一度に服用しないでください。
アジルサルタン(アジルバ)の副作用
主な副作用
アジルサルタン(アジルバ)は、一般的に副作用が少ないタイプの降圧薬と言われていますが、どのような副作用の可能性があるかを知っておくことは、安心して治療を続けるために大切です。
- めまい、ふらつき: 薬を飲み始めた時や、急に立ち上がった時(起立性低血圧)に感じることが
- 頭痛
- 疲労感、だるさ(倦怠感)
- 腎機能への影響(血液検査で定期的にチェックが必要)
- 高カリウム血症(特に腎機能が悪い方や、特定の薬との併用時に注意が必要)
- 肝機能の異常(まれですが、血液検査でチェック)
- 咳(咳の副作用で有名なACE阻害薬というタイプの薬に比べると、ARBであるアジルサルタンで咳が起こる頻度は非常に低い)
他にも稀ではあるが重篤な副作用として、下記のようなものもあります。
- 血管浮腫: 顔、まぶた、唇、舌、のどなどが突然腫れあがる症状。息苦しさを伴うこともあり、初期症状(腫れ、かゆみ、息苦しさなど)に気づいたら、直ちに医療機関の受診を。
- 急性腎不全: 尿量が極端に減る、体がむくむ、だるさが強くなるなどの症状に注意が必要。
- 高カリウム血症: 手足のしびれ、筋力の低下、吐き気、脈の乱れなどを感じることが。
- ショック、失神、意識消失: 血圧が急激に下がりすぎた場合に起こる可能性。
- 肝機能障害、黄疸: 体のだるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状に注意。
- 横紋筋融解症: 筋肉が壊れてしまう状態。原因不明の筋肉痛、脱力感、赤褐色(コーラ色)の尿などが出たら注意。
副作用が出たときの対処法
めまい、ふらつきが出やすいので、立ち上がったり、寝ていた状態から起き上がったりする際は、慌てずにゆっくりと動作するように心がけましょう。症状が頻繁に起こる、または日常生活に支障が出るほどつらい場合は、我慢せずにお医者さんに相談してください。薬の量が合っていない可能性があります。
血管浮腫、ショック、失神、意識消失、急性腎不全や高カリウム血症、横紋筋融解症などが疑われる初期症状に気づいたら、直ちにアジルサルタンの服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。 これらの副作用はまれですが、迅速な対応が必要です。
副作用は誰にでも起こる可能性がありますが、多くは軽度であるか、適切な対処で改善します。過度に心配しすぎず、何か変化があれば早めに相談することが大切です。
アジルサルタン(アジルバ)に市販薬はある?値段は?
市販薬
アジルサルタン(アジルバ)は処方箋が必要な医療用医薬品であり、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入することはできません。高血圧症の治療は医師の指導のもとで行う必要があります。
ジェネリック名
アジルサルタン(アジルバ)には、ジェネリック医薬品(後発医薬品)が存在します。
「アジルサルタン錠10mg『製薬会社名』」といった名称で、複数の製薬会社から発売されています。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品(アジルバ)と同じ有効成分を同じ量含み、効き目や安全性が同等であると国によって認められており、一般的にお薬代の自己負担額を軽減できるというメリットがあります。ジェネリック医薬品への変更を希望される場合は、お医者さんや薬剤師さんに相談してみてください。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- アジルバ錠10mg(先発品):55.1円/錠
- アジルバ錠20mg(先発品):83.3円/錠
- アジルバ錠40mg(先発品):123円/錠
- アジルサルタン錠10mg(後発品):21.4円/錠(各社共通)
- アジルサルタン錠20mg(後発品):27.4円/錠(各社共通)
- アジルサルタン錠40mg(後発品):41.3円/錠(各社共通)
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
アジルバ錠10mg/アジルバ錠20mg/アジルバ錠40mg/アジルバ顆粒1%
アジルサルタンOD錠10mg「DSEP」/アジルサルタンOD錠20mg「DSEP」/アジルサルタンOD錠40mg「DSEP」
よくある質問(FAQ)
Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
妊娠中または妊娠している可能性のある方は、絶対に服用できません(禁忌)。 胎児・新生児に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。妊娠が判明したら直ちに中止し、医師に相談してください。授乳中の方も、服用中は授乳を継続しないことが望ましいとされています。お薬の必要性について、必ず医師とよく相談してください。
Q. 小児でも使える?
いいえ、アジルサルタン(アジルバ)は、小児等に対する安全性や有効性が確立されていないため、通常使用しません。
Q. 運転への影響は?
血圧が下がることにより、めまいやふらつきが現れることがあります。そのため、車の運転、高所での作業、危険な機械の操作などを行う際は、十分注意が必要です。ご自身の体調をよく観察し、無理をしないでください。
Q. 飲み始めてどのくらいで効果が出る?
服用を開始してから、数日で血圧が下がり始め、安定した降圧効果が得られるまでには通常2~4週間程度かかるとされています。効果はゆっくり現れることが多いので、焦らず続けましょう。
Q. お酒と一緒に飲んでも大丈夫?
アルコールによって血圧が一時的に変動したり、降圧薬の効果が強まったりして、血圧が下がりすぎてめまいやふらつきを起こしやすくなる可能性があります。飲酒については、必ず医師に相談し、指示に従ってください。一般的に、過度の飲酒は避けるべきです。
Q. ACE阻害薬という薬との違いは何ですか?
ARB(アジルサルタンなど)とACE阻害薬は、どちらも体内の血圧を上げる物質(アンジオテンシン)の働きを抑える薬ですが、作用するメカニズムが少し異なります。一般的に、ARBはACE阻害薬で比較的多く見られる「空咳(からぜき)」の副作用が少ないという特徴があります。
Q. グレープフルーツジュースの影響はありますか?
アジルサルタン(アジルバ)は、一部のカルシウム拮抗薬などとは異なり、通常グレープフルーツジュースによる影響は受けにくいと考えられています。
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まとめ
アジルサルタン(アジルバ)は、ARBという種類の、1日1回の服用で効果が期待できる高血圧治療薬です。血管を広げて血圧を穏やかに下げることで、将来の心臓病や脳卒中などの深刻な病気のリスクを減らすという、非常に大切な役割を持っています。
副作用は比較的少ないお薬とされていますが、めまい・ふらつきには注意が必要で、まれに重篤な副作用(血管浮腫、腎機能障害、高カリウム血症など)の可能性もゼロではありません。特に、妊娠中の方は絶対に服用できないという重要な注意点があります。
アジルサルタン(アジルバ)による治療を安全かつ効果的に進めるためには、
- 必ず医師の指示通りの用法・用量を守ること
- 自己判断で服用を中止したり、量を変更したりしないこと
- 副作用(特に注意すべき初期症状)や、飲み合わせに注意が必要な薬について理解しておくこと
- 家庭での血圧測定を習慣づけ、ご自身の血圧を把握すること
- 定期的に医師の診察と必要な検査を受けること
これらのポイントをしっかりと守り、治療に積極的に関わっていく姿勢が非常に重要になります。
高血圧の治療は、自覚症状がない場合でも、根気強く続けていくことが大切です。お薬について分からないことや、治療中に気になることがあれば、どんな些細なことでも遠慮なくお医者さんや薬剤師さんに相談してください。
健康的な生活習慣を心がけながら、お薬と上手に付き合い、健やかな未来を目指しましょう。
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