過敏性腸症候群(IBS)の治し方について医師が解説

この記事では『過敏性腸症候群(IBS)の正しい治し方』

  • 過敏性腸症候群とは一体なんなのか
  • 最も有効な治療法とは?
  • お薬って効果あるの?

といった内容でお伝えしていきます。

IBSは体の問題と心の問題が共存している病気ですが、根っこの部分は体を支えているメンタルの部分が大きいんです。

考え方、捉え方次第で少し楽になる部分もあると思うので、しっかりと学んでいきましょう。

ウチカラクリニックではオンライン診療に完全対応し、忙しい方向けに夜間や土日も診療を行っております。

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過敏性腸症やおなかの悩みでお困りの方、通院中の薬をご希望の方はお気軽にオンライン診療でご相談ください。

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過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群は英語での略称をとってIBSと呼びます。ここからはIBSと呼んでいきます。
IBSとは、簡単に言えば様々な検査を行っても何にも異常が見つからないにも関わらず、腸の症状がずっと続いてしまう病気です。

種類としては

  • 下痢が止まらない下痢型
  • 便秘が治らない便秘型
  • 便秘と下痢を繰り返す混合型
  • おならが止まらないガス型

などがあり、IBSは本当につらい病気です。

仕事中大事な場面でおならが止まらなかったり、恋人とデートに行った時にトイレに何回も行って愛想をつかされてしまうなど…そういった経験がトラウマになって外に出られなくなってしまうケースもあります。

腸の話なので体の病気と思われがちですが、実はIBSはストレスなどが原因の大部分を占めていて、メンタルが原因となっている事が多いんですよね。

メンタルが原因なので、緊張している場面や重要な会議などで症状が強くなるので厄介です。

日本人の2万人にIBSに関するアンケートをとった所、IBSの患者はIBSでない人と比べて、統計的に社会的地位や年収が高かったそうです。

これはおそらく役職や年収が高い人の方がストレス負荷が大きい事を暗に示していると思います。

また、アメリカの研究では、質の高い教育を受けている人の方がIBSになりやすいというデータも出ています。

これもきっと、頭の良し悪しではなく、「教育熱心な環境」にいる人の方がストレスが大きいという事でしょう。社会的に良い環境にいると思われている人ほど、ストレスを感じやすい環境にあるという事が推察されます。

そして医者の裏話をすると、IBSは腸の病気なので腸の専門科が診察する事が多いですが、検査しても異常が何もないので、「これは心の問題」「気持ちの問題」などと片づけてしまい、あまり熱心に対応してくれない先生もいます。

IBSは辛い病気なので、絶対に患者さんに寄り添って体の治療と心の治療の両方をしっかり行っていく必要があります。

ウチカラクリニックのオンライン診療では、このIBSの治療も行っているので気になるおなかの症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

過敏性腸症候群(IBS)の治し方について

ここからは過敏性腸症候群ことIBSを治すために、普段の生活でどんなことをしていくべきなのか解説していきましょう。

食事・運動・睡眠など日常生活が大きくIBSに影響してきます。

ここで京都の女子学生700人にとった調査データを紹介します。

IBSの人はそうでない人と比べて、

  • 野菜や魚をとらずにインスタントのご飯を食べがち
  • 運動習慣が全然なかった
  • 睡眠時間が少なかった

ということがわかりました。この事からも生活習慣とIBSの関連性がみえてきます。

IBSの人はまずきちんとした生活習慣をつける事が重要。しっかり運動して睡眠時間をとる事から始めましょう。

食事に関しては、炭水化物や脂肪分が多い食事、アルコールや辛い物、コーヒーなどがIBSを悪化させると言われています。

逆に食べて欲しい食べ物が一つあって、それが『食物繊維』の入った食べ物です。大体一日30gくらい食物繊維をとるとIBSに効果的と言われています。

食物繊維はIBSに非常におススメですが、食物繊維には2種類あり、水に溶けにくい不溶性繊維と、溶けやすい水溶性繊維があります。

豆、芋、とうもろこしは、食物繊維が入ってはいますが、「不溶性繊維」要するに溶けにくい繊維になるので腸に負担がかかるのでおススメしません。

おススメは水に溶けやすい繊維のはいった食べ物で、例えばそばやわかめなんかですね。

このあたりを食べる習慣がつくと効果的です。

過敏性腸症候群(IBS)を治す薬はあるのか

IBSの薬には腸の薬もメンタルの薬も色々あります。

「薬が本当に効くのか?」については、IBSにかなり効いた!というデータがある薬はまだなく、研究中なのでエビデンス的にははっきり効くとはいえないのが正直な所です。

ただ困っている患者さんに、腸やメンタルの薬を試してもらう事がありますが、その中では結構効く事もあるので、症状が辛い時に薬に頼るのは悪い選択ではないと思います。

その中でもおススメの薬が『プロバイオティックス』です。

人間の腸の中には腸内細菌という菌が住み着いています。こいつらは「菌」ではありますが、腸の中の環境を整えてくれています。

そしてIBSの人はこの腸内細菌たちが「炎症のせいであまり活動できていない」とか「数が少ない」という説があるんです。

そこでこのプロバイオティックスは「その良い菌を投与し腸の環境を良くしてあげたり、数を増やしてあげる」というお薬なんです。

まだ研究過程ではありますが、お値段も安いし、副作用はほとんどないので飲んでみる価値がある薬です。

過敏性腸症候群(IBS)を治すための考え方

自分は普通

IBSの人は、おならや下痢が学校や職場で頻回に出る事があるので「周りから白い目で見られてるんじゃないか」「馬鹿にされてるんじゃないか…」と思ってしまう事があります。

そういうトラウマからうつ病になってしまうケースもあります。

しかし、『あなたは何一つおかしな事はない、普通の人間』です。

IBSの人は、今の日本人の全体の10-15%。10人に1人がIBSと言われています。

悩んでいる人が日本全国にたくさんいます。

「10人に1人がIBSなら私の周りにももっといるはずだ!」と思うかもしれませんが、IBSでも自分で告白してない人がたくさんいます。現にあなたは周りに自分がIBSだって言ってますか?

勿論、カミングアウトする必要は全然ありませんが、自分がそんな特殊な人間だなんて思わないでください。「自分は普通」という事をわかって欲しいです。

それでも、症状が続くと「他の人はなってないのに私だけ腸が弱い」「私はストレスに弱い人間だ」と気に病んでしまう人もいますが、全然違います。結論からいうとたまたまです。

医学的な話を少しすると、ストレスを受けた時の人の表現の仕方は人様々です。

汗がでたり、心臓がどきどきしたり、足が震えたり..

あなたがストレスに弱いわけではなく、たまたまあなたがストレスを受けた時の表現の仕方が腸の症状に出やすいというだけの話です。ただの個性なので何も気にする必要はありません。病気だと思う必要もありません。

それでも、「お医者さんはIBSの事わかってるからそうやって言えるけど、実際何回もトイレに行ってるのは事実だし、絶対周りの人には噂されてる…」と思うかもしれません。

でも、何回もトイレに行ってるから何が悪いんですか?「生理現象だからしょうがない」で済む単純な話です。

もしそれで何か嫌な事を言われたり、思われたりしたって、その人になんの迷惑もかけてないんだから、それは悪口を言う方の人格に100%問題があるだけです。

あなたは何も悪い事をしていない、普通の人間なんだから堂々としていればいいです。

もし万が一迷惑をかけるような事があったって、あなたが悪いんじゃなくてIBSなんだからあなたが自分を責める必要なんてないんです。

なんなら、「実はIBSってやつになっちゃってさ」と周りに話すのも良いかもしれません。

何も悪い事はしてないんだから開き直っていいです。「自分は普通なんだ」という事をちゃんと覚えておいてください。

過度に不安にならなくても大丈夫

IBSの人は医学用語で『破局視(はきょくし)』という状態になりやすいと言われています。

破局視は、根拠がないのに先の事を否定的に考える事です。

例えば、IBSの症状で全然便が出なかったり、下痢が止まらなかったりすると、「私はがんなんじゃないか」「私は死んでしまうんじゃないか」と思う状態に陥ってしまう事があるんです。

ストレスで腸の症状がおさまらなくなってる中で、自分は何か悪い病気なんじゃないかと気になってきて、さらなるストレスを感じるという負のスパイラルに陥ります。

でもそんなに不安にならないで下さい。医者として言わせて頂くと、IBSで死ぬ事はほぼ100%ありません。破局視っになってしまうのもIBSのせいで、あなたは1%も悪くありません。

IBSは命に関わる病気ではない事はしっかり覚えておいて下さい。

IBSはめちゃくちゃ辛いです。ただ、辛さ【だけ】の病気です。あなたの未来を奪ってしまうような病気ではないし、治らない病気でもないです。

現に研究で、8週間認知行動療法というカウンセリング治療を行う事で66%の人のIBSが良くなった報告もありますし、若い人なら大人になるにつれて自然と改善していく場合もあります。

だからそんなに気にしすぎず、困ったら病院に来て下さい。カウンセリングを受ける事もできますし、腸を落ち着ける薬や、心を落ち着ける薬も用意してあります。

一人で抱え込んで不安になる事だけは絶対にしないで、困ったら身近な人でも、病院の人でも誰でも良いので相談してください。

まとめ

過敏性腸症候群(IBS)についてのまとめを確認しておきましょう。

  • IBSの治療の基本は食事・睡眠・運動=生活習慣の改善
  • そばやわかめなどの食物繊維をしっかりとり、運動してしっかり寝る
  • 腸を整える薬や、気持ちを整える薬などがある
  • 確定的なデータはないが「プロバイオティックス」が有効かも

メンタル面については、

  • IBSは10人に1人がなる病気
  • 簡単に言えばストレスを受けた時の症状がたまたま腸に出てるだけ
  • 症状は辛いが、IBSを過剰に気にする必要は全くない
  • IBSのせいでネガティブ思考に陥ってしまう事がある
  • IBSは全く命に関わらない病気です

要するに「周囲の目に関する不安」と「未来への不安」。この2つの不安については全然気にしなくて大丈夫ですから、堂々としていてください。

つらいIBSの症状に困ったら、一人で抱え込まず、すぐに相談するようにして下さいね。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。