「デュファストン」の効果・副作用を医師が解説【妊娠確立は?】

dydrogesterone

赤ちゃんが欲しいと思ったとき、「デュファストン」という薬の名前を耳にすることがあるかもしれません。また生理不順や子宮内膜症などで婦人科を受診した際に処方されることもある薬です。

「ホルモン剤って体に負担がかかるのでは?」「副作用がキツイって聞いたけど大丈夫?」などの不安を抱える方も多いでしょう。

この記事では、デュファストンの基本情報から、効果、副作用、妊娠確率への影響まで、専門的な情報をできるだけわかりやすく解説します。

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デュファストンとは?効果は?

デュファストンの成分

デュファストンは、黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤といい、女性の体内で作られる「黄体ホルモン」という、妊娠や月経に深く関わる大切なホルモンと同じような働きをすることで、ホルモンバランスを整えたり、妊娠しやすい環境づくりや妊娠の維持をサポートしたりします。

デュファストンの有効成分は「ジドロゲステロン」です。この成分の大きな特徴は、私たちが体内で自然に作っている天然の黄体ホルモンと非常によく似た化学構造を持っています。

黄体ホルモンは、主に排卵後から次の月経までの期間(黄体期)や妊娠中に、その分泌量が増え、以下のような重要な役割を果たします。

  • 子宮内膜をふかふかにする
    卵胞ホルモン(エストロゲン)の作用で厚くなった子宮内膜を、受精卵が着床しやすいように、さらに柔らかく、栄養豊富な状態(専門的には「分泌期内膜」)へと変化させます。赤ちゃんを迎えるために、ふかふかのお布団を用意するようなイメージ。
  • 妊娠を維持しやすくする
    子宮内膜の状態を保ち、子宮が収縮するのを抑えるなどして、妊娠が継続しやすい環境を整えます。
  • 月経のリズムを作る
    妊娠しなかった場合、黄体ホルモンの分泌量がガクッと減ることで、子宮内膜が剥がれ落ちて月経(生理)が始まるきっかけの一つとなります。

デュファストンは、黄体ホルモンの働きが十分でない場合や、黄体ホルモンの作用を補強したい場合に、天然の黄体ホルモンに代わって、あるいはその働きを助ける形で作用します。

天然に近い構造を持つため、男性ホルモンのような作用(ニキビや多毛など)や、卵胞ホルモンのような作用はほとんど示さず、穏やかで選択的な作用が期待できるのが、デュファストンの利点の一つとされています。

デュファストン効果

  • 黄体機能不全が原因の不妊症に対するサポート(着床しやすい子宮内膜環境を整える)
  • 切迫流産・切迫早産、習慣性流産・早産の治療・予防(子宮の収縮を抑え、妊娠維持を助ける)
  • 無月経や不規則な月経周期(稀発月経、多発月経)の正常化
  • ホルモンバランスの乱れによる不正出血(機能性子宮出血)の改善
  • つらい生理痛(月経困難症)の緩和

様々な婦人科系の問題や、妊娠に関わるサポートに用いられる、女性にとって心強いお薬の一つです。

どんなときに使う?(適応疾患)

  • 無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)
  • 機能性子宮出血
  • 黄体機能不全による不妊症
  • 月経困難症
  • 子宮内膜症(※主に月経困難症などの症状改善目的で使われます)
  • 切迫流産、切迫早産
  • 習慣性流産・早産

デュファストンの妊娠確率は?

不妊治療でデュファストンが処方されると、「これを飲めば妊娠確率が上がるのでは?」と期待される方も多いかもしれませんね。その関係性について、正しく理解しておきましょう。

まず大切なのは、デュファストン自体には排卵を誘発したり、受精を直接助けたりするような、直接的に妊娠を成立させる作用はないということです。
デュファストンの主な役割は、黄体ホルモンの働きが不足している(黄体機能不全)ために、受精卵がうまく子宮内膜に着床できなかったり、着床しても育ちにくかったりする状態を改善することにあります。具体的には、黄体ホルモンを補うことで、子宮内膜を受精卵が根付きやすい『ふかふかの土壌』に整え、さらに着床後もその状態を維持して妊娠の継続をサポートする、いわば妊娠のための環境づくりのお手伝いをするお薬なのです。

そのため、もし不妊の原因が黄体機能不全にある場合には、デュファストンの服用によって着床しやすい環境が整うことで、結果的に妊娠・出産に至る確率を高める手助けになると考えられます。

臨床報告では、以下の確率で改善があったと報告されています。※1

  • 妊娠率:およそ25 → 40 %前後に上昇(平均)
  • 流産率:20 %→10 %以下へ半減

ただし、不妊の原因は非常に多様であり、黄体機能不全だけが原因とは限りませんし、お薬の効果にも個人差があります。ですから、デュファストンはあくまで妊娠に向けた体づくりをサポートするお薬の一つと捉え、「飲めば必ず妊娠できる」と過度な期待はせず、必ず主治医とよく相談しながら治療を進めていくことが大切です。

デュファストンの使い方(用法・用量

デュファストンの飲み方(1日に飲む量、飲む日数、飲み始めるタイミングなど)は、治療する病気や目的によって、一人ひとり異なります。

無月経、月経周期異常、機能性子宮出血、不妊症、月経困難症など

1日5~15mg(1~3錠)を、1~3回に分けて服用します。(子宮内膜症の治療には1日5~20mgを服用することも)

服用する期間や、月経周期の中での飲むタイミング(例:高温期だけ飲むなど)は、お医者さんが患者さんの状態に合わせて細かく指示します。例として次のようなケースが多いです。

  • 不妊治療:排卵後から1回1錠を1日2~3回、約12日間服用するケースが多い
  • 月経周期の調整:月経周期の後半から服用を開始し、次の月経が来るまで続ける
  • 体外受精:胚移植日から妊娠が確認されるまで(または妊娠初期まで)服用を続ける

切迫流産・早産、習慣性流産・早産

1日10~15mg(2~3錠)を、2~3回に分けて服用します。症状が落ち着くまで、あるいは妊娠中の特定の期間(例:妊娠初期から16週頃までなど)、継続して服用することが一般的です。

食後に飲むように指示されることが多いですが、これも医師の指示に従ってください。効果を安定させ、飲み忘れを防ぐためにも、毎日なるべく同じ時間に飲むことを心がけましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、デュファストンをはじめとした月経困難症の治療やピルの処方なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

デュファストンの注意事項(禁忌)

使用に注意が必要な方や飲み合わせが悪い薬

  • 重篤な肝臓の病気をお持ちの方【禁忌】
  • 診断が確定していない異常な性器出血がある方(まず原因を特定する必要があります)
  • 心臓や腎臓の病気をお持ちの方(体液が貯留し、むくみが出やすくなることがあります)
  • てんかん、片頭痛のある方(症状が悪化する可能性があります)
  • うつ病またはその既往歴のある方(症状の変化に注意が必要です)
  • 肝臓の酵素を誘導する薬(肝酵素誘導薬)

血栓症の既往歴がある方は、絶対禁忌ではありませんが、リスクを考慮して使用の可否が慎重に判断されます。ご自身の持病、アレルギー歴、そして現在服用・使用しているすべてのお薬(市販薬、サプリメント、漢方薬なども含む)について、必ずお医者さんや薬剤師さんに正確に伝えるようにしてください。

使用上の注意

眠気やめまいを感じる場合は、車の運転や危険を伴う機械の操作などを行う際は十分注意してください。特に飲み始めはご自身の体調をよく観察しましょう。

また、お薬の効果をきちんと得るためには、飲み忘れに注意し、指示通りに服用を続けることが大切です。特に不妊治療中や妊娠維持のために服用している場合は、飲み忘れが治療計画に影響することもあるため、アラームをセットするなどの工夫も有効です。

さらに、頻度は非常に低いとされていますが、血栓症の初期症状(手足のしびれ・痛み・むくみ、激しい頭痛、胸痛、息切れ、視力障害など)にも念のため気を配っておきましょう。

不妊治療などで服用している場合は、医師の指示に従って基礎体温を記録し、ご自身の体調の変化を観察することが、治療を進める上で役立ちます。

保管方法

  • 直射日光や高温多湿を避けて保管
  • 子どもの手の届かない場所へ

飲み忘れたら?

気づいた時点で、すぐに飲み忘れた1回分を服用してください。
ただし、次の服用時間まであまり時間がない場合(次の服用時間が近い場合)は忘れた分は服用せず、次の時間に通常通り1回分を服用してください。

2回分をまとめて飲むのはNGです。

飲み忘れが多いと十分な効果が得られなくなってしまいます。飲み忘れが多いと感じる方は、アラーム機能やカレンダーを活用して飲み忘れを防ぎましょう。

デュファストンの副作用はキツいの?

デュファストンは、有効成分(ジドロゲステロン)が天然の黄体ホルモンに近い構造を持っているため、一般的には他の合成黄体ホルモン製剤と比較して、副作用は比較的少ない、または軽い傾向があると言われています。
特に、男性化症状(ニキビ、多毛など)や、強い眠気、気分の落ち込みといった精神症状は起こりにくいとされています。

しかし、これはあくまで一般的な傾向であり、副作用の現れ方や感じ方には、非常に大きな個人差があります。 比較的起こりやすいとされる副作用には、以下のようなものがあります。

主な副作用

  • 消化器系の症状: 吐き気、嘔吐、食欲不振、胃の不快感、腹痛、下痢、便秘など
  • 精神神経系の症状: 頭痛、眠気、だるさ(倦怠感)、めまいなど
  • 乳房の症状: 乳房の張りや痛み
  • 子宮からの出血: 不正出血(少量の出血である点状出血や、やや多めの破綻出血)

人によっては、特に吐き気や嘔吐、あるいは眠気やだるさを強く感じてしまい、「副作用がキツイ」と感じることがあります。また、まれに気分の変動を感じる方もいます。

副作用が出たときの対処法

  • 吐き気、軽い頭痛、眠気など
    服用を続けているうちに体が慣れて、自然に軽快することも多いです。症状が軽ければ少し様子を見ても良いでしょう。
  • 不正出血
    飲み始めに、少量の出血(点状出血)が見られることは珍しくありません。多くは自然に止まりますが、出血がダラダラと続く場合や、量が多い場合(普通の生理のような出血)は、他の原因も考える必要があるため、必ず医師に相談してください。飲み忘れが原因で出血することもあります。

副作用かな?と感じたら、どんな些細な症状でも、遠慮なく医師や薬剤師に相談する習慣をつけましょう。

デュファストンに市販薬はある?値段は?

市販薬

デュファストンは医療用医薬品ですので、医師の処方箋が必要です。ドラッグストアなどで購入することはできません。

一部の個人輸入代行サイトなどでは、海外製のジドロゲステロン製剤が販売されていることがありますが、品質や安全性が保証されておらず、また医師の指導なく服用することはリスクを伴うため、推奨されません。

ジェネリック名

デュファストンは有効成分や製法に関する特許で保護されているため、現在(2025年5月時点)、ジェネリック医薬品(後発医薬品)は発売されていません。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • デュファストン錠5mg: 1錠あたり 約33.1円

※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

デュファストン錠5mg

よくある質問(FAQ)

Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
妊娠中の使用は、切迫流産・早産、習慣性流産・早産の治療目的で処方されることがあります。 これはお腹の赤ちゃんを守るための治療です。ただし、それ以外の目的での妊娠中の使用については、必ず医師に相談してください。授乳中の方は、母乳中に薬の成分が移行する可能性があるため、医師に相談し、指示に従ってください。 治療の必要性と授乳継続の可否を総合的に判断します。

Q. 小児でも使える?
デュファストンは、通常、小児(思春期前)には使用しません

Q. 車やバイクの運転への影響は?
副作用として眠気やめまいが起こる可能性がありますので、運転や危険な機械の操作には十分注意が必要です。症状が出る場合は運転を控えましょう。

Q. 飲み始めてどのくらいで効果が出る?
使う目的によって異なります。例えば、子宮内膜を整える効果は、服用開始後数日から1週間程度で現れ始めると考えられます。月経を起こす目的の場合は、服用中止後数日で効果(月経開始)が見られます。詳しくは、お薬を処方した医師に確認してください。

Q. お酒と一緒に飲んでも大丈夫?
適量であれば、通常、大きな問題になることは少ないと考えられます。しかし、お酒の飲みすぎは肝臓に負担をかけたり、薬の副作用(眠気など)を強めたりする可能性があるので、控えるのが望ましいでしょう。

Q. 避妊効果はありますか?
いいえ、デュファストンには避妊効果は期待できません。 避妊が必要な場合は、必ず他の適切な避妊法を行ってください。

Q. 副作用がキツイと感じたらどうすればいいですか?
我慢せずに、すぐに医師に相談してください。 症状を和らげる方法を考えたり、場合によっては薬の変更や中止を検討したりします。

Q. ノアルテンとの違いは何ですか?
どちらも黄体ホルモン製剤ですが、有効成分の化学構造が異なります。デュファストン(ジドロゲステロン)は天然の黄体ホルモンに近い構造で、男性ホルモン作用などが少ないとされます。ノアルテン(ノルエチステロン)は別の合成黄体ホルモンです。適応疾患も一部異なり、デュファストンは切迫流産・早産などの妊娠維持にも用いられます。

Q. 飲むと妊娠確率が上がりますか?
デュファストンは、黄体機能不全が原因で妊娠しにくい場合に、着床しやすい子宮環境を整えたり、妊娠初期の維持を助けたりすることで、結果的に妊娠・出産に至る確率を高めるサポートをするお薬です。直接的に妊娠させる薬ではありません。

Q. 不正出血があったらどうすればいいですか?
飲み始めなどに少量の出血(点状出血)が見られることは比較的よくあります。多くは自然に止まりますが、出血が長く続く場合や、量が多い場合(生理のような出血)は、自己判断せず、必ず医師に相談してください。

まとめ

デュファストンは、天然の黄体ホルモンに近い構造を持ち、月経不順、月経困難症、不妊症、そして切迫流産・早産の治療など、女性の様々なライフステージにおける問題解決をサポートしてくれる大切なお薬です。

副作用が比較的マイルドとされる一方で、「キツイ」と感じる方がいるのも事実であり、まれな血栓症のリスクもゼロではありません。安全に、そして効果的に治療を進めるためには、

  1. 必ず医師の指示通りの用法・用量を守ること
  2. 副作用(特に吐き気、眠気、不正出血、そして血栓症の初期症状)についてよく理解し、気になる場合はすぐに相談すること
  3. 「使いすぎ」は副作用やリスクを高めるため、絶対に避けること
  4. 避妊効果はないことを理解し、必要な場合は他の避妊法を行うこと
  5. 飲み忘れに注意し、自己判断で服用を中止したり、量を変更したりしないこと

これらのポイントをしっかりと守ることが非常に重要になります。

ホルモン剤の服用には、時に不安が伴うかもしれませんが、デュファストンは多くの女性の健康と希望を支えてきた実績のあるお薬です。正しい知識を持ち、お医者さんと十分にコミュニケーションを取りながら、安心して治療に臨んでください。

ウチカラクリニックではオンライン診療に完全対応し、忙しい方向けに夜間や土日も診療を行っております。

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※1 Omar MH et al., 2005 RCT, threatened abortion 154例/Lee HJ et al., 2017 Systematic review & meta-analysis/Indian ObGyn survey, 2024

ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。