プロトピック軟膏の効果や副作用について医師が解説

「顔や首のアトピーが、なかなか良くならない…」 「ステロイドの塗り薬を、ずっと顔に使い続けるのはちょっと心配…」 「繰り返すかゆみと赤みを、なんとかコントロールしたい！」

こうした、アトピー性皮膚炎のつらい症状に悩む方にとって、大切な治療の選択肢の一つが「プロトピック軟膏」です。ステロイドを含まない「非ステロイド性」のお薬で、皮膚の免疫の働きを調整することで炎症を抑えます。

この記事では、アトピー性皮膚炎治療のもう一つの柱であるプロトピック軟膏について、その効果や副作用、正しい使い方を医師が分かりやすく解説していきます。

プロトピック軟膏とは？効果は？

プロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎の治療に使われる、「カルシニューリン阻害薬」というタイプの塗り薬です。

アトピー性皮膚炎の主な原因である、皮膚の中での免疫細胞の過剰な活動をピンポイントで抑えることで、炎症（赤み、腫れ、じゅくじゅくなど）や、それに伴うしつこいかゆみを改善します。

プロトピック軟膏には、有効成分の濃度が異なる2つの種類があります。

• プロトピック軟膏0.1%： 主に16歳以上の成人のアトピー性皮膚炎に使われます。
• プロトピック軟膏0.03%小児用： 主に2歳以上15歳以下の小児のアトピー性皮膚炎に使われます。成人でも、顔など特にデリケートな部分や、刺激を感じやすい方に使われることがあります。

プロトピック軟膏の成分

プロトピック軟膏の主役は、「タクロリムス水和物」という成分です。

この成分は、皮膚の中で炎症を引き起こす免疫細胞（Tリンパ球など）が活発に働くために必要な「カルシニューリン」という酵素の働きをブロックします。

炎症を引き起こす“アクセル”を免疫細胞が踏み込もうとするのを、その手前で邪魔して、過剰な反応を抑えてくれるブレーキ役のようなイメージです。

これにより、免疫細胞からの炎症を起こす物質（サイトカインなど）の放出が抑えられ、アトピー性皮膚炎の症状が和らぎます。これは、ステロイド外用薬とは異なる作用の仕方で炎症を抑えるメカニズムです。

プロトピック軟膏の効果

• 皮膚の炎症（赤み、腫れ、じゅくじゅく、カサカサなど）を改善する
• しつこいかゆみを軽減する
• ステロイド外用薬で起こりやすい皮膚が薄くなるなどの副作用の心配が少ない
• 良い状態を維持する「プロアクティブ療法」にも使われる

免疫反応を調整することで、アトピー性皮膚炎のつらい症状に効果を発揮します。

どんなときに使う？（適応疾患・部位）

• アトピー性皮膚炎

顔、首、まぶたなど、皮膚が薄くデリケートな部分や、ステロイドの長期使用による副作用が気になる部位の治療に特に適しています。もちろん、体や手足など、全身の皮膚症状にも使用できます。

プロトピック軟膏はオンライン診療で出せる？

「アトピー性皮膚炎の治療を続けたいけど、定期的な通院が大変…」「新しい薬について、まずはオンラインで相談してみたい」

そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。

プロトピック軟膏のようなアトピー性皮膚炎の治療薬も、医師が適切と判断すれば、オンライン診療で相談したり、処方を受けたりすることが可能です。

特に慢性的な皮膚疾患で継続的なケアが必要な方にとっては、通院の負担を大きく減らすことができます。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。

プロトピック軟膏の注意事項・禁忌

使ってはいけない方

絶対に使ってはいけない方（禁忌）

• 過去にプロトピック軟膏の成分（タクロリムス水和物）でアレルギー症状を起こしたことがある方
• 妊婦または妊娠している可能性のある方（特に広範囲に塗る場合や、0.1%製剤の場合。医師が治療上の有益性が危険性を上回ると判断した場合を除く）
• 治療部位に明らかな皮膚感染症（細菌、真菌、ウイルスなど）がある場合（感染症の治療を優先します）

使うときに特に注意が必要な方

• 授乳中の方
• 広範囲に重度の皮膚病変がある方
• 腎機能障害、肝機能障害のある方
• 紫外線療法（PUVA療法など）を受けている方

併用に注意が必要な薬

塗り薬なので、飲み薬との間で特に問題となる飲み合わせは報告されていませんが、免疫を抑える飲み薬などを使用している場合は、必ず医師に伝えてください。

使用上の注意

保管方法

• 直射日光・高温を避け、室温で保管してください。
• 子どもの手の届かない場所に置いてください。

使い忘れたら？

気づいた時点で、すぐに1回分を塗ってください。

ただし、次に塗る時間が近い場合は、1回とばして次の時間に1回分を塗るようにしましょう。絶対に2回分を一度に塗ってはいけません。

プロトピック軟膏に市販薬はある？値段は？

市販薬

2025年5月28日現在、プロトピック軟膏と同じ成分の市販薬はありません。 使用するには、医師の診断と処方が絶対に必要です。

ジェネリック名

プロトピック軟膏にはジェネリック医薬品（後発品）があります。

「タクロリムス軟膏」という名称で処方されます。

薬価

• プロトピック軟膏0.1%（5gチューブ）：1本あたり 約459.6円
  （3割負担の場合、自己負担額は1本あたり約138円）
• タクロリムス軟膏0.1%「イワキ」（ジェネリック/5gチューブ）：1本あたり 約205.8円
  （3割負担の場合、自己負担額は1本あたり約62円）
• プロトピック軟膏0.03%小児用（5gチューブ）：1本あたり 約416.0円
  （3割負担の場合、自己負担額は1本あたり約125円）

※2025年5月28日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

プロトピック軟膏 0.1％

よくある質問（FAQ）

Q. 妊娠中や授乳中でも使えますか？
妊婦または妊娠している可能性のある方への使用は、原則として避けるか、治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ、最小限の範囲で使用されます。授乳中の方も、医師とよく相談の上で、慎重に使用を検討します。

Q. 赤ちゃんや子供でも使えますか？
「プロトピック軟膏0.03%小児用」は、2歳以上の小児のアトピー性皮膚炎に使用できます。2歳未満の乳幼児に対する安全性は確立されていません。

Q.ステロイドは入っていますか？
入っていません。 プロトピック軟膏は、ステロイドとは異なる「カルシニューリン阻害薬」という作用の非ステロイド性の塗り薬です。

Q. コレクチム軟膏との違いは何ですか？
どちらもアトピー性皮膚炎に使われる非ステロイド性の塗り薬ですが、作用の仕組みが異なります。プロトピック軟膏は「カルシニューリン阻害薬」、コレクチム軟膏は「JAK阻害薬」です。刺激感の出方や効果の得意分野、適応年齢などに違いがあるため、医師が患者さんの状態に合わせて使い分けます。

Q. 使い始めのヒリヒリ感はいつまで続きますか？
個人差はありますが、多くの場合、治療を続けて1週間程度で、ヒリヒリ感やほてり感は自然に軽快していきます。

Q.塗った後、お化粧はできますか？
プロトピック軟膏が肌にしっかりなじんだ後であれば、お化粧をしても問題ありません。ただし、肌が敏感になっているため、低刺激性の化粧品を選ぶことをおすすめします。また、塗った部分は日光に過敏になることがあるため、日焼け止めは必ず使用しましょう。

まとめ

プロトピック軟膏は、アトピー性皮膚炎のつらい炎症やかゆみを、ステロイドとは異なる「免疫を調整する」という仕組みで抑える、重要な非ステロイド性の塗り薬です。 特に、顔や首など皮膚が薄くデリケートな部分の治療や、ステロイド外用薬の長期使用を避けたい場合の有力な選択肢となります。

使い始めに特有の刺激感が出ることがありますが、多くは一時的なもので、それを乗り越えることで、症状のコントロールが期待できます。医師の指導のもとで正しく使い、根気強く治療を続けることが大切です。

この記事が、プロトピック軟膏への理解を深め、アトピー性皮膚炎と上手に付き合っていくための一助となれば幸いです。