「急な腹痛と下痢でトイレから出られない」「食べたものがすぐに下痢になってしまう」
そんなつらい下痢の症状は、日常生活に大きな支障をきたします。下痢は非常に身近な症状ですが、その原因は様々で、自己判断での対処が症状を悪化させることもあります。
この記事では、下痢のメカニズムや原因、正しい対処法、そして病院を受診する際の検査や治療法まで、医師がわかりやすく解説します!
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下痢とは?よくある症状と原因
多くの人が経験する下痢ですが、なぜ起こるのか、どのような種類があるのかは意外と知られていません。ここでは、下痢の基本的な知識と、考えられる原因について詳しく見ていきましょう。
下痢とは?
下痢とは、便の中に含まれる水分量が異常に増加し、形を留めない「泥状便」や、水のような「水様便」の状態になることを指します。
これは、腸の「蠕動(ぜんどう)運動」が活発になりすぎたり、腸での水分吸収がうまくいかなくなったりすることで起こります。
一般的に、発症してから2〜3週間で治まるものを「急性下痢」、4週間以上続くものを「慢性下痢」と分類します。

下痢でよくある症状
下痢は、便が緩くなるだけでなく、以下のような様々な症状を伴うことがあります。
- 1日に何度もトイレに行く
- 水のような便(水様便)が出る
- 腹痛(しくしく痛む、差し込むように痛むなど)
- 吐き気、嘔吐
- 発熱、悪寒
- お腹がゴロゴロ鳴る、お腹が張る(腹部膨満感)
- 便に血が混じる(血便)
急性下痢は、ウイルスや細菌の感染が原因の場合、数日間激しい症状が続くことがあります。脱水症状を起こしやすいため、注意が必要です。
下痢の原因
下痢の原因は、大きく「感染性」と「非感染性」に分けられます。
感染性下痢
ウイルスや細菌が口から体内に入り、腸で増殖することで起こります。いわゆる「食あたり」や「お腹の風邪」「胃腸炎」です。

- ウイルス性:
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど。冬場に流行することが多いです。 - 細菌性:
カンピロバクター、サルモネラ菌、病原性大腸菌(O-157など)、腸炎ビブリオなど。加熱不十分な食肉や魚介類が原因となることが多いです。
非感染性下痢

- 食べ過ぎ・飲み過ぎ:
アルコールや脂っこい食事、冷たいものの過剰摂取は、腸に大きな負担をかけ、下痢を引き起こします。 - ストレス:
不安や緊張などの精神的なストレスは自律神経を乱し、腸の動きを過敏にさせます。代表的なものが「過敏性腸症候群(IBS)」です。
詳しい解説はこちら!→ 過敏性腸症候群(IBS)

- 病気によるもの:
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、乳糖不耐症(牛乳を飲むと下痢になる)、甲状腺機能亢進症などが原因で、慢性的な下痢が起こることがあります。 - 薬の副作用:
抗生物質(抗菌薬)を服用すると、腸内の善玉菌まで殺してしまい、腸内環境のバランスが崩れて下痢になることがあります。
下痢の検査
長引く下痢や、激しい症状がある場合は、原因を特定するために医療機関での検査が必要です。
診察では、まず詳しい問診(いつからか、食事内容、海外渡航歴、服用中の薬など)が行われ、その後、必要に応じて以下の検査を実施します。
- 便検査: 下痢の原因を調べる上で最も重要な検査です。便の中に食中毒の原因となる細菌やウイルスがいないか、血液が混じっていないかなどを調べます。
- 血液検査: 体の炎症の程度や、下痢による脱水の状態、貧血の有無などを確認します。
- 腹部X線・超音波(エコー)検査: 腸のむくみやガスの状態などを画像で確認します。
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ): 慢性的な下痢や血便がある場合に検討されます。カメラで直接大腸の粘膜を観察し、炎症性腸疾患や大腸がんなどの病気がないかを確認します。

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下痢の治療方法
下痢の治療は、まず体を休ませ、脱水にならないように水分補給を行うことが基本です。その上で、原因に応じた治療が行われますが、自己判断での下痢止めの使用には注意が必要です。
病院では、問診や検査結果に基づいて、適切な治療薬が処方されます。
下痢の処方薬【止痢薬(下痢止め)】
腸の過剰な動きを抑える薬ですが、感染性下痢の場合は、原因となるウイルスや細菌の排出を妨げてしまうため、医師が必要と判断した場合にのみ慎重に処方されます。
ロペミン(ロペラミド塩酸塩)

腸の動き(蠕動運動)を直接抑えることで、便が腸を通過する時間を延ばし、下痢を止めます。
詳しい解説はこちら
→ロペミン(ロペラミド)
下痢の処方薬【整腸剤】
乱れた腸内環境を整え、善玉菌を増やすことで、お腹の調子を正常に戻す手助けをします。
ビオフェルミン錠剤

数種類の乳酸菌を配合しており、乱れた腸内フローラを整える代表的なお薬です。
詳しい解説はこちら
→ビオフェルミン錠剤
ミヤBM錠

熱や酸に強い酪酸菌(宮入菌)が腸まで生きて届き、有害な菌の増殖を抑えます。
詳しい解説はこちら
→ミヤBM錠
下痢の処方薬【抗菌薬(抗生物質)】
便検査で細菌感染が確認された場合に処方されます。ウイルス性の下痢には効果がありません。
ジスロマック(アジスロマイシン)

細菌の増殖を抑えるマクロライド系の抗菌薬で、特にカンピロバクター腸炎などに用いられます。
詳しい解説はこちら
→ジスロマック
クラビット(レボフロキサシン)

様々な種類の細菌に効果を示すニューキノロン系の抗菌薬で、細菌性下痢に幅広く使われます。
詳しい解説はこちら
→クラビット
下痢の処方薬【過敏性腸症候群(IBS)】
ストレスなどが原因で起こるIBSによる下痢には、腸の動きや便の状態をコントロールする専門的な薬が使われます。
イリボー(ラモセトロン塩酸塩)

腸を過敏にする神経伝達物質(セロトニン)の働きをブロックし、急な下痢や腹痛を改善します。
詳しい解説はこちら
→イリボー(ラモセトロン塩酸塩)
ポリフル(コロネル)

腸内で水分を吸収・保持することで、便の水分バランスを整え、下痢と便秘の両方に効果を示します。
詳しい解説はこちら
→ポリフル(コロネル)
下痢の処方薬【その他】
下痢に伴うつらい症状を和らげるために、以下のような薬が処方されることもあります。
ブスコパン(ブチルスコポラミン)

腸の異常なけいれんを和らげることで、差し込むような腹痛を抑えます。
詳しい解説はこちら
→ブスコパン(ブチルスコポラミン)
市販薬で治療する場合の注意点
市販の下痢止め薬を使用する際は、原因をよく考えることが非常に重要です。
特に、発熱や吐き気、血便などを伴う「感染が疑われる下痢」の場合、腸の動きを強力に止めるタイプの下痢止め(ロペラミド塩酸塩を含むもの)を自己判断で使うのは避けるべきです。原因となる菌や毒素の排出を遅らせ、かえって症状を悪化させる危険性があります。
ストレスや冷えによる下痢であれば、市販薬も有効な場合がありますが、数日使用しても改善しない場合や、症状がひどい場合は、必ず医療機関を受診してください。

下痢の治し方
激しい下痢のときは、まず体を休ませることが第一です。無理に動かず、脱水症状を防ぎながら、胃腸に負担をかけない生活を心がけましょう。
水分補給(脱水防止)
下痢の際に最も警戒すべきは脱水症状です。便と共に大量の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が失われるため、意識的な水分補給が不可欠です。
水分と電解質を効率よく吸収できる経口補水液(OS-1など)がオススメです。なければ、湯冷ましや麦茶、スポーツドリンク(糖分が少ないもの)でも構いません。一度にがぶ飲みすると、腸を刺激して下痢を悪化させるので少量ずつ、こまめに飲むのがポイントです。
牛乳などの乳製品、冷たいジュース、コーヒー、アルコールは症状を悪化させる可能性があるため避けましょう。
胃腸にやさしい食事
下痢の症状が少し落ち着いて食欲が出てきたら、消化の良いものから食べ始めましょう。無理に食べる必要はありません。
おかゆ(おもゆ)、すりおろしリンゴ、よく煮込んだうどん、バナナ、豆腐、白身魚などが適しています。
脂っこいもの(揚げ物、ラーメンなど)、食物繊維の多いもの(きのこ、海藻、ごぼうなど)、香辛料などの刺激物、冷たいものは、胃腸に負担をかけるため回復するまで控えましょう。

安静にして体を休ませる
下痢は、体がウイルスや細菌を排出しようとしているサインでもあり、体力を消耗します。無理をせず、暖かくしてゆっくりと体を休ませることが、回復への一番の近道です。
下痢の予防策
つらい下痢を未然に防ぐために、日々の生活でできる予防策をご紹介します。
手洗いの徹底
感染性下痢の予防の基本です。食事の前やトイレの後、帰宅時には、石鹸で丁寧に手を洗いましょう。
食品の十分な加熱

食中毒の原因となる細菌の多くは、熱に弱い性質があります。肉や魚、卵などは中心部までしっかりと加熱しましょう。
暴飲暴食を避ける

脂っこいものやアルコールの摂りすぎは、消化器に大きな負担をかけます。腹八分目を心がけましょう。
体を冷やさない
お腹を冷やすと腸の動きが活発になり、下痢をしやすくなります。服装や飲み物で体を冷やさない工夫をしましょう。

ストレスを上手に管理する
十分な睡眠や、リラックスできる時間を持つことで、自律神経のバランスを整えましょう。
下痢のよくある質問
下痢に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
ご自身の状況と照らし合わせて、解決のヒントを見つけてください。
どんな人が排尿痛になりやすいですか?
乳幼児や高齢者、病気治療中などで免疫力が低下している方は、ウイルスや細菌に感染しやすく、下痢になりやすいです。また、ストレスを感じやすい方、生活習慣が不規則な方、海外へ渡航する方もリスクが高いと言えます。
受診や治療にかかる費用はどのくらいですか?
健康保険(3割負担)を適用した場合、初診で問診のみであれば2,000円~3,000円程度、便検査や血液検査を行うと5,000円~8,000円程度が一般的な目安です。
大腸カメラなどの精密検査を行う場合は、さらに費用がかかります。

下痢は放置しても大丈夫?自然に治ることはありますか?
食べ過ぎなど一時的な原因による軽い下痢は、自然に治ることがほとんどです。しかし、最も注意すべきは「脱水症状」です。
水分も摂れないほどの激しい下痢や嘔吐、ぐったりしている場合は放置してはいけません。また、高熱や血便を伴う下痢、2週間以上続く下痢は、背景に病気が隠れている可能性があるため、必ず医療機関を受診してください。
下痢の薬はネットやドラッグストアで買えますか?
はい、購入できます。ただし、薬の種類を正しく選ぶことが重要です。前述の通り、発熱などを伴う感染性の疑いがある下痢に、腸の動きを強力に止める薬を使うのは危険です。
まずは腸内環境を整える「整腸剤」から試すのが比較的安全ですが、判断に迷う場合は、薬剤師に相談するか、医療機関を受診しましょう。
治療期間はどのくらいですか?
ウイルス性の急性下痢であれば、通常は数日から1週間程度で回復に向かいます。細菌性の場合は、抗菌薬の服用で数日で改善することが多いです。
一方、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患などによる慢性的な下痢は、症状をコントロールするために長期的な治療が必要になります。
下痢がある場合、何科を受診すればよいですか?

まずは内科、あるいは胃腸を専門とする消化器内科を受診するのが一般的です。
お近くに専門クリニックがない場合は、かかりつけの内科で相談すれば、初期対応や必要に応じた専門医への紹介をしてもらえます。お子さんの場合は、小児科を受診しましょう。また、ストレスが強い原因と考えられる場合は、心療内科が選択肢になることもあります。
下痢はオンライン診療でも診察できますか?
はい、オンライン診療でも相談・診察は可能です。医師が問診で症状や食事内容などを詳しく聞き、ストレス性や一過性の下痢などが疑われる場合には、整腸剤などを処方することができます。
ただし、脱水症状がひどい場合や、重篤な感染症、慢性的な病気が疑われる場合には、対面での検査や診察を勧められることがあります。
下痢が気になる場合はウチカラクリニックに相談を
急な下痢は非常につらいものですが、多くは適切な水分補給と休養、そして整腸剤などで改善に向かいます。
しかし、その背景には治療が必要な感染症や、専門的な管理が必要な病気が隠れている可能性もあります。自己判断で強い下痢止めを使い続けたり、症状を我慢しすぎたりしないことが何よりも大切です。
「セルフケアを試しても、なかなか良くならない」 「この下痢、もしかしてただの食あたりじゃないかも…」そのように感じたら、ぜひ専門医にご相談ください。
ウチカラクリニックでは、ご自宅からスマホ一つで相談できるオンライン診療でも、下痢の診察・治療を行っています。お忙しくて通院の時間が取れない方や、対面での診察に少し抵抗がある方でも、気軽に専門的なアドバイスや薬の処方を受けることが可能です。
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この記事の監修者

ウチカラクリニック代表医師
森 勇磨
経歴
東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。