認知症の初期症状とは?予防法とは?医師が解説!
こんにちは。ウチカラクリニック健康メディア「予防医学大辞典」です。
今回は「認知症」の初期症状・原因・予防法などについて医師の視点から解説していきます。
全ての人にとって、年を重ねてから他人事では済まされない病気、親子で考えて欲しい病気が認知症です。
予防医学にとって最後の砦が「脳」の予防、すなわち認知症予防になります。
生活に気を使って肉体的に健康な状態を維持するのも重要ですが、その司令塔である脳の予防は何よりも重要です。
認知症は進行を遅らせる薬こそあれど、まだ根本的な治療をする薬はありません。
体がいくら健康でも、認知症になり、脳の機能が落ちてしまうとその後平均して10年くらいで、むせなどが原因の肺炎で亡くなる事が多いというデータがあります。
そして認知症になる仕組み、正しい予防法は意外に知られていません。
今回はそんな認知症について徹底解剖してきます。
体とともに脳の健康寿命をしっかり延ばし、折り返した後の人生もより楽しいものにしていきましょう。
INDEX
認知症とは?
まず、認知症とは一体どのような状態の事を定義するのか、検査方法はどのようなものがあるのか意外に知らない人も多いと思うのでお話しておきます。
認知症に関してはざっくり言えば「脳の機能が落ちてしまう事」で、様々な症状が出て生活に支障が出てしまう事です。
そして一口に認知症と言っても、いくつかの分類があります。代表的なものをまず紹介します。
最も多いのが、ご存じの方も多いと思いますがアルツハイマー型の認知症です。
こちらは、アミロイドβというたんぱく質が脳細胞に蓄積する事で起こるという説が有力だとされています。
このアミロイドβが細胞の外に沈着した物を「老人班」と呼びます。
これは亡くなったアルツハイマーの方の脳細胞を顕微鏡で見てみると、この老人班がまるで皮膚のシミに見える為こう呼ばれています。
20世紀の初め頃、ドイツの研究者であるアルツハイマー博士が、この老人班を発見した事が研究の始まりとされているんですね
この老人班が細胞に蓄積していくと神経細胞が機能しなくなり、脳の萎縮が起こってしまう、という仕組みなんです。
次に多い原因が脳の血管によるものです。
脳も他の臓器と同様に血液がめぐっているのですが、脳の血管も年をとるとともに経年劣化していきます。
その中で脳梗塞や脳出血といった大病をきっかけに、脳の細胞が死滅してしまうと、認知症のきっかけになってしまう場合があるんですね。
またそういった大きな出来事がなくても、脳血管性の認知症が進行している場合はあります。
例えば高齢者の方に頭のMRIを撮影すると、特に脳梗塞を経験したエピソードはないのに、ぽつぽつ小さな脳梗塞の後が見つかる事は全く珍しくありません。
これは医学用語で「無症候性脳梗塞」、要するに小さすぎて症状は出ないけど、小さな脳梗塞自体は起きている状態なんですね。
この無症候性脳梗塞の影響で認知症に繋がる場合も実はあるんです。
脳血管性の認知症では緩やかにまっすぐなグラフのように症状が進行するというよりは、脳梗塞が起きるたびまるで階段を1段ずつ下るかのように症状ががくん、がくんと進行する場合があったり、
例えば物忘れはひどいけど理解力は全く問題ない、といったように、それぞれの血管が血液を送る担当をしている脳の部位は違うので、障害を受けた部分と受けていない部分の能力の差が激しくなってしまう場合もあります。
これを「まだら認知症」と呼ぶ事もあります。
認知症の検査方法は?治療は?
では、認知症の検査はどのようにして行っていくのでしょうか?
まずは、スクリーニングのテストを行ったり、ご家族の話を聞く事が多いです。
日本でよく行われるスクリーニングのテストは「長谷川式認知症スケール」というものが多いですね。
これは認知症診療の第一人者である長谷川和夫先生という方が考案された方法です。
長谷川先生は残念ながら2021年お亡くなりになってしまったのですが、晩年はご自身も認知症になられた事を告白されていらっしゃいました。
また、採血検査も必須です。
「認知症の事なんて採血検査でわかるの?」と思われる方も多いかもしれませんが、これは非常に大事な工程です。
実は、認知症のような症状は様々な原因で起こり得ます。
例えばなんとビタミンB1が足りていない事や、甲状腺のホルモンの分泌が落ちている、こういう原因で認知症のような症状が出現する場合もあるんです。
これを医学用語でTreatable dementia 、これは認知症のような症状だけど、実はしっかり治療できる可能性がある病気という表現をするんですね。
現にビタミンB1を補充しただけで症状が良くなった、こんなケースも存在するので欠かさない検査なんです。
また脳の画像を撮影する事も多いです。
頭のCTやMRIを撮影して脳の萎縮がないかみたり、
また「SPECT」という特殊な検査を行う事もあります。
こちらは、わずかにですが放射線を出すお薬を投与した状態で頭の写真を撮影することで、脳の血流が落ちている部分が無いかどうか確認する検査なんです。
このように患者さんの症状や画像の所見を総合的に合わせて認知症かどうかを判断していきます。
また治療に関してですが、現在は主にアルツハイマー型の認知症に対して、治療を遅らせる、というお薬は存在しますが、認知症自体を治す薬は存在していないのが現状です。
現在進行形で日本のエーザイらが共同開発しているアデュカヌマブという、
先ほど説明したアルツハイマー型認知症に関連するアミロイドβをなんと脳内から除去する、という世界初のお薬が非常に注目されているのですが、2021年12月に厚生労働省の方で有効性の判断がまだ難しい、という事で承認は見送りになっています。
ただゆくゆくは検証が進み、承認される可能性はありますので、今後の動きに期待したいと思います。
認知症は根治する薬もまだ存在していないからこそ、できるだけ早めに認知症と向き合っておく事が必要なんです。
ではそんな認知症の気になる症状や予防法とは、どういったものがあるのでしょうか?一緒に見ていきましょう。
認知症の初期症状とは?
では認知症の症状について解説していきます。
認知症の症状に関しては、脳の部位、にあてはめながら考えるとわかりやすいので、脳の部位ごとに見ていきましょう。
まず、脳は大きく分けると、このように前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉、この4つに分ける事ができます。
それぞれの部位で役割がかぶっている部分もあるのですがざっとそれぞれ見ていきましょう。
認知症の初期症状①怒りっぽくなる
まず、前頭葉です。ここの機能が落ちると、どんな症状が起きるでしょうか?
実は前頭葉の役割がわかってきたのは1930年代でした。
この頃、精神病の治療法としてなんと前頭葉を切除する手術が世界で行われはじめました。
ロボトミー手術といいます。
これはチンパンジーの前頭葉を切除する実験を行った所たちまちチンパンジーがおとなしくなった事から、激しく混乱した精神病の患者さんにも応用できるのではないかと当時は考えられていました。
確かに手術の後、患者さんたちはおとなしくなりました。
しかし、その後患者さんに様々な変化が起こったのです。
・外部の刺激に対して全く興味を持たなくなる
・TPOをわきまえない、社会性の欠けた言動が多くなったり、自分をコントロールできず急に怒りだす
・今現在の状況を把握するのが非常に難しくなる
こういった症状から研究が進み、前頭葉は人間の意欲、感情、社会性といった部分を司っている事がわかってきたんです。
はい、そしてこの手術後の変化に似た症状が、ピック病(前頭側頭型認知症)というタイプの認知症で出現する事があります。
ピック病は40-50代の比較的若い、働き盛りの方にも起こるタイプの認知症なので、急に怒りっぽくなったり、もともと空気を読める人がやけに空気を読めない、社会性の欠けた言動をとるようになる場合がありますので覚えておいて下さい。
認知症の初期症状②記憶力が落ちる
次に側頭葉です。
側頭葉はなんといっても記憶を司る場所になります。
この側頭葉の内側に存在する海馬という場所が人間の記憶を仕分け、ファイルにまとめ、分類する仕事している非常に重要な場所なんです。
形でまるでタツノオトシゴのような形をしているので、タツノオトシゴの和名をそのまま使って海馬と名づけられました。
認知症の方の頭のMRIを撮影すると、この海馬が萎縮している事があるんですね。
海馬の機能が落ちた場合は、少し前にした事を忘れてしまいやすくなる為、何度も同じ事を聞いたり、最近やった事、それ自体が記憶から抹消されている、なんて症状が出る事もありますね。
普通の物忘れと違って、した事自体を忘れてしまう事もあるので覚えておいて下さい。
認知症の初期症状③道に迷うようになる
次に頭頂葉です。
頭頂葉の機能が落ちると、失算失書と呼ぶのですが、計算ができなくなったり、字が書けなくなったりします。
また服が着られなくなるのも頭頂葉の機能が落ちた時に認められますね。
また頭頂葉は地理の感覚や、物事を3次元でとらえる立体でとらえる機能があるので、つまるところ頭頂葉の機能が落ちると道がわからなくなってしまう事もあるんです。
アルツハイマー型の認知症ではこの側頭葉と頭頂葉が萎縮してしまうので、今紹介したような症状が出る場合が多いです。
認知症の初期症状④幻覚が見えるようになる
最後に後頭葉です。
後頭葉の主な役割は五感の中でいう所の視覚、眼で見た情報を処理する所なんです。
この後頭葉の機能が落ちる認知症としてLewy小体型認知症、というものがあります。
これは先ほどのアミロイドβとも少し似ているのですが、Lewy小体というたんぱく質が脳細胞に蓄積して起こる認知症です。
このLewy小体型の認知症の代表的な症状がまぼろしに見ると書いて幻視というものです。
この幻視ではワンちゃんやネコちゃんなどの小動物、虫、子供などのまぼろしが見えてしまう症状が出る事があり、幽霊を見たと勘違いしてしまう場合もあるんですね。
後頭葉の血流が落ちている事で、この幻視が起きてしまう場合があるんですね。
認知症の予防法とは?
ではこのような様々な症状を呈する認知症ですが、予防法はあるのでしょうか?
はい、予防法はいくつか存在しています。
2020年に医学雑誌Lancetに掲載された発表では、この12個の認知症のリスクをできるだけ多く避ける事で、認知症の予防に繋がり、なんと最大40%の予防効果があると解説されています。
(教育、難聴、高血圧、肥満、喫煙、うつ病、社会的孤立、運動不足、糖尿病、過度の飲酒、頭部外傷、大気汚染)
この中で言えば、高血圧、肥満、喫煙、運動不足、糖尿病、過度の飲酒、この6つが関わっている認知症が、先ほど説明した脳血管性認知症の予防ですよね。
これらの対策をすることで、動脈硬化を予防し脳の血管を守り、脳血管性の認知症の予防に繋げる事ができます。
また、難聴、こちらも注意したいですね。
人間は年をとるとだんだん聴力、耳の聞こえが悪くなっていくものです。
「耳が聞こえなくなる事は老化のせいだから仕方がない」
これは真理ではあるんですが、ただ耳からの情報というのは24時間脳を刺激しておりますので、やはり聴力が落ちてしまうと、脳への刺激が少なくなり良くないようです。
自分や、身の回りの家族が何度も聞き直すようになったりだとか、明らかに耳の聞こえが悪くなった場合は耳鼻咽喉科で一度相談をしましょう。
補聴器を付けるという選択肢をとるべき状況なのかもしれません。
また「社会的孤立」要するに、普段接する人がいなくなり、1日の中でコミュニケーションをとる機会が減ってしまうのは認知症のリスクになります。
できるだけ一人にならない、家族をさせない、何か共通の趣味のコミュニティに属する、といった対策も認知症予防に有効でしょう。
よく「クロスワードパズルとか、脳トレは認知症になるんでしょうか」こういった質問を頂きます。
実は、こういった脳トレ関連はデータとしては認知症予防に繋がるというものはありません。
正常な脳を活性化させるのと、認知症予防は似て非なるものである可能性があるんですね。
勿論脳トレを継続するのは非常に素晴らしい事なので是非続けて頂ければとは思うのですが、ただ前に説明したようなデータとして証明されている運動などをせず、家にこもってひたすらクロスワードパズルをしているのは本末転倒ですね。ちゃんと脳トレと合わせて散歩などの運動を行いましょう。太極拳なんかも良いですね。
認知症の初期症状や予防法 まとめ
では、今回の内容をまとめると、
①運動や食事などの生活習慣を整え、生活習慣病予防を行い、脳血管性の認知症を予防する。
②難聴は認知症のリスクとなりうるので、自分や家族が耳が聞こえ辛さを感じたら一度病院を受診する。
③家族や友人との時間を大切にし、適度なコミュニケーションを心がける
以上の3点になります。
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