「寝たきり」とは?原因は?寝たきり老人にならないためには?医師が徹底解説!
こんにちは。ウチカラクリニック健康メディア「予防医学大辞典」です。
今回は「寝たきり」について、寝たきりのそもそもの意味、原因、予防法などについて医師の視点から簡単に、わかりやすく解説していきます。
近年注目されている「健康寿命」を延ばす為に、最も重要なのが寝たきり予防の為に何をすべきかに関する知識です。
しかし、寝たきり予防について何をするべきか意外に知られていない事、かなり多いです。
寝たきりやその手前の状態になり、体が自分の思い通りに動けなくなる事自体が認知症のリスクにもつながりますし、体を使わないと筋肉がどんどん衰えたり、寝返りが打てない事で体のあちこちに床ずれができてしまう、こんな事弊害もあるんですね。
寝たきりは他人事ではありません。当然自分の体が自由に動く、自立した状態の時から予防に積極的に取り組む必要があります。
今回、寝たきりにならない為の医学的に正しい対策・生活習慣を身に着け、健康寿命を延ばして幸せな老後を過ごしていきましょう。
寝たきりは健康寿命を短くする代表的な原因です。
近年よく話題に上がる健康寿命とは、
「平均寿命から寝たきりや認知症になって介護が必要になった期間を引いた期間」
ですが、
日本では男性の平均寿命は81.41歳なのに対し健康寿命は72.68。女性の平均寿命は87.45歳なのに対し健康寿命は75.38歳という結果になっています。
(※2019年の厚生労働省のデータです)
要するに、この差の期間、男性は8.7年、女性はなんと12年間は寝たきりなどの理由で自分の体を自由に扱えない期間になる訳です。
この期間を少しでも少しでも短くして、できるだけ幸せな老後生活を過ごしていきたいですよね。
今回は
・介護認定を交えた寝たきりの話
・寝たきり予防の為に絶対にしておいて欲しい事
など、中高年に知っておいて欲しい知識をまとめたので是非最後までご覧ください。
それでは早速解説に参りましょう。
INDEX
寝たきりとはそもそもどういう意味?
まず、そもそも寝たきりとはどのような状態の事なのでしょうか?
寝たきりとは文字通り、
「起き上がれなかったり、寝返りが打てなかったりして1日の大半をベットで過ごす状の事」です。
寝たきりの話をする際には、医学の話より「介護認定」の話の方が身近だと思うので、介護の話に沿って説明します。
まず、介護認定には、「要支援」の状態と「要介護」の2つの段階があります。
特に介護が必要なければ「自立」となりますが、少しでも介護が必要だとこの認定に当てはまる場合があります。
要支援は1/2の2段階、要介護は1-5の5段階の計2+5=7段階に分かれていて、数字が大きいほどより必要な介護が増える状態となっていくため、介護給付支援の限度額が増えていきます。
具体的には、例えば
要支援2→移動や立ち上がるのに支えが必要な状態
要介護3→立ち上がったり、歩いたりする事が一人ではできず、常に支援が必要な状態
このような定義づけがされています。
また特別養護老人ホームには要介護3以上でないと入居ができなかったりという制度になっていたりするため、この介護認定の話はよく中高年の日常でも話題に上がるでしょう。
そして、この中で最終段階である要介護5の事が全ての事に介助を要する状態、いわゆる「寝たきり」の事なんですね。
では、寝たきりになると体にどのような影響が出るのでしょうか?
寝たきりになるとどうなるのか?
筋肉・骨への影響
まず、寝たきりになると筋肉が落ちますし、骨がもろくなります。
手足の骨折などの影響で、使用していない部分の筋肉が1-2か月であっという間に細くなってしまった経験のある方はわかるかと思いますが、使用していないと筋肉はあっという間に落ちてしまいます。
寝たきりになると2か月以内に筋肉量が半分になるというデータももあるくらいなんですね。
骨も刺激を受けないとだんだんもろくなっていきます。
この現象は、実は宇宙飛行士とよく似ているんです。
皆さんはテレビなどで宇宙から帰還したばかりの宇宙飛行士が、周りの人に体を支えているシーンを見た事はないでしょうか。
地球では一定の重力がかかっているので、立ったり座ったりする動作を行うだけで重力に逆らう、つまりは負荷がかかる動きをしているのですが、宇宙の無重力空間では重力の抵抗がないため、筋肉はだんだん衰え、骨はもろくなっていきます。
この無重力空間と同じような現象が、重力に逆らわず寝たきりでいる人に起こっている訳なんですね。
関節への影響
また関節にも影響が出ます。寝た状態で長期間関節を曲げ伸ばししていないと、関節が硬くなって動かせる範囲がだんだん狭くなってしまいます。これを拘縮と呼びます。
皮膚への影響
そして寝たきりで寝返りを打てない人は、皮膚のある部分に体重がのった状態がずっと続くので、血流が圧迫され、皮膚が壊死し、ただれたりしていまう事があります。
これを「褥瘡(じょくそう)」と言います。いわゆる床ずれの事ですね。
他にも、当たり前ですが1か所のベットでずっと横になっている生活は脳への刺激も極端に少なくなってしまい、うつ尿や認知症のリスクもあがりますし、
ずっと寝ているといざ起き上がった時に立ち眩みの症状が出たり、むせやすくなってむせが原因の肺炎である「誤嚥性肺炎」になりやすくなったりと、本当に様々なデメリットがあります。
こういった、体の自由がきかなくなる事で様々な弊害が生じる事をまとめて医学用語で「廃用症候群」と呼びます。一つの病気として考えてもらって良いでしょう。
要するに、骨や関節の異常や脳卒中の後遺症などの「結果」としてなってしまった寝たきりの状態自体が、さらに状況の悪化に拍車をかけるという負のスパイラルが起こってしまっているのです。
やはり人間はしっかりと体を動かしていないと、動かしていない事自体が健康面でのリスクになるという事なのです。
だからこそ、寝たきりの状態になる前に、未然に予防に取り組む意識を多くの人に持って欲しいんですよね。
勿論一番良いのは自立している段階でこの介護が必要な状態にならない寝たきり予防に取り組む事です。
そしてこの介護認定に該当する場合は、例えば要支援なら介護予防サービスとしてリハビリに通ったり、在宅のリハビリのサービスを利用できる場合があるので、しっかりサービスを利用してできるだけ状態の維持につとめると良いですね。
では、具体的には高齢者の寝たきり予防はどのような方法をとっていったら良いのでしょうか?寝たきりの中で頻度の多い原因と合わせて解説していきます。
寝たきりになる原因とは?
では寝たきりの原因と、その予防について解説していきます。
寝たきりの原因①骨粗しょう症
先程、理想はまず介護認定の話でいう「要支援」の状態にならない事を目指していくべきだと話ましたが、高齢による衰弱を除いた、この要支援の原因のトップは何かご存じでしょうか?
それが骨や関節の病気や、骨折です。
この原因には「骨粗しょう症」という、骨密度が低下してしまう、端的に言えば骨がスカスカになっていってしまう病気が大いに関係しています。
例えばこの骨粗しょう症で骨がもろくなった状態で、家の階段で転倒し骨折し手術となってしまった、60代の女性。そして病院での入院生活で筋肉が落ちてしまい、自宅でも寝たきりになり自由に動けなくなってしまう。
このようにたった1回の転倒でその後の健康寿命を失ってしまうケースは、病院では珍しい光景ではありません。
だからこそ高齢者にとっては急な階段や段差のある家をリフォームして、バリアフリーにしておく事が、寝たきり予防ともいえるでしょう。
とはいえ、転倒のリスクは完全に0にはできませんから、しっかりと骨粗しょう症対策をしてできるだけ強い骨をキープしておく必要があります。
特に女性はホルモンの影響で男性と比較して圧倒的に骨粗しょう症になりやすいので、骨を守る対策は必ず意識してください。
では、具体的にはどのような対策があるのでしょうか?
寝たきりの原因となる骨粗しょう症の予防法は?
まず、一般的な話として牛乳や乳製品などからしっかりカルシウムを摂取するのも重要ですし、先ほど宇宙飛行士の話で説明したように、ウォーキングやダンスなど適度に骨に刺激を与える運動をしておくのが重要です。
ここでの注意点としては、運動の中でも水泳では骨があまり刺激されません。
勿論水泳や水中歩行自体は運動として素晴らしいものではあるのですが、こと骨粗しょう症対策としては他の運動を選択した方が良いでしょう。
そして最も知っておいて欲しいのが、日光浴なんです。なぜ日光浴が骨と関係があるのでしょうか?
日光を浴びると、紫外線と皮膚で反応が起こり、皮膚でビタミンDが作られます。
実はこのビタミンDが腸から骨の成分となるカルシウムをどんどん吸収させる役割を担っているんです。
紫外線は浴びすぎも良くないので、目安としては少なくとも1日15分、散歩なども兼ねて日光浴ができると骨粗しょう症対策になるでしょう。
どうしても日光浴ができない場合に関しては、ビタミンDのサプリメントに頼る手もあっても良いかとは思います。
また一つ注意点として、紫外線はガラスを通過しないので、ガラス越しの日光は効果的ではない事も覚えておいて下さい。
食事面で言えばビタミンDは魚やキノコ、たまごに豊富に含まれていて、多くの方が摂取していると思うので気にしすぎる必要はないと思いますが、例外としてベジタリアンの方などは、野菜には意外にもビタミンDが含まれていないので、他の手段で補うようにしましょう。
寝たきりの原因②筋力低下
また、筋肉も重要です。
あなたは「サルコペニア」という言葉を聞いた事がありますか?
サルコペニアとは年をとる事で全身の筋力が低下する事で、将来介護になるリスクが上昇すると問題視されています。
年をとってからムキムキになる必要はないものの、しっかりと筋トレ、特に足の筋トレをしておくことが重要です。
おススメなのは「ランジ」といって、立った状態から片足を前に踏み出し戻る、次に逆の足を踏み出し、戻る、、という動作を繰り返すものです。
準備体操のしんきゃくの動きを大きくしたものですね。
非常にシンプルな筋トレですが、家で簡単にできますし、バランス感覚も養われて転倒予防にも役立つおススメの方法です。
寝たきりの原因③脳卒中・認知症
また要介護になる原因として多いのは脳卒中と認知症です。
特に要介護レベル4、レベル5の原因の1位は脳卒中で、これは要するに脳梗塞や脳出血などの「大病」が起こる事で、後遺症として麻痺などが残る事で順序をすっとぱして一気に寝たきりの状態になってしまう事がある訳です。
脳卒中予防には高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病予防が第一ですので、しっかりと普段の生活習慣に気を配っていきましょう。
こういった寝たきりの原因となりやすい病気は密接に関わっています。
例えば、転倒した高齢者に最もよく起こる大腿骨頸部骨折、という股関節の骨の骨折があります。
この手術の後股関節が思うように動かなくなり、元々は歩けていたのに車いす生活になってしまい、その影響でもともとは外にでるのが大好きだったのになかなか出かけなくなり、認知症が進行してしまう…
また脳梗塞や脳出血になってしまう事で、体の手足に麻痺の後遺症が残り、筋力や骨密度が落ちてしまう…
このように、脳と筋肉や骨といった体は連動していますから、どちらかの不調に引っ張られてだんだん状態が悪くなってしまう事があるんですね。
こういった負のループを防ぐ為にも、今回紹介した対策を万遍なく行って、脳、骨、筋肉を良い状態でキープしてあげる事が重要です。
寝たきり予防・原因まとめ
最後に、今回紹介した寝たきりの原因と予防についてまとめておきます。
①骨を守るために、カルシウムをしっかり摂取し運動をする。1日15分は日光浴をする。
②加齢による筋肉の減少から身を守るために適度な筋トレをする。おススメはランジ。
②脳を守るために生活習慣病がある人は改善につとめ、動脈硬化をできるだけ起こらないようにする。
この3ポイントが寝たきり予防に役立ちます。
もしかしたら明日のあなたを助ける予防医学として役立ってくれるかもしれませんので、是非覚えて帰って下さい。
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