糖尿病の薬の副作用とは?危険性と対処法は?メトグルコは大丈夫?医師が徹底解説。

糖尿病のお薬には、実はあなたの知らない様々な副作用があります。中には、寿命を縮めうる怖い副作用や、日常生活で非常にストレスになる症状も。
医者の世界には「クスリはリスク」こういう言葉があります。特に糖尿病に関しては「ある特徴」から薬を使うことで逆効果になってしまう場合もあるんです。
今回紹介する内容は自分やご家族が糖尿病の方は必ず知っておくべきです。要注意な副作用の被害を極力避けていきましょう。

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糖尿病の薬の副作用とは?

日本の糖尿病の人の数は予備軍も含めると、なんと2000万人以上存在します。そのため当然糖尿病のお薬を自分も、または家族も飲んでいる人も多いでしょう。
医師が外来ではあまり細かく説明しない、糖尿病の薬が体に対してどういう仕組みで血糖値を下げるのか。どういう薬、使い方にどんな副作用があるのか解説していきます。
糖尿病の薬の副作用①低血糖
一番に知っておきたい糖尿病の薬の副作用は「低血糖」です。大前提として糖尿病の薬を内服する一番の目的は、「血糖値」を下げることです。
血糖値が高い状態が続くと、糖分が血管の中でチクチク血管の壁を傷つけ動脈硬化が進行。心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がったり、神経にダメージを負ってしびれたり足の裏の感覚がなくなったりしてしまいます。
この体のダメージをできるだけ防ぐために、血糖値を下げる、血液の中の糖分を少なくするために、医学の世界ではあの手この手を使って糖尿病の薬が開発されてきたんですね。
一番最初に開発された糖尿病の薬は、名前をご存じの人も多いでしょう「インスリン」。
1921年にカナダの研究者チームによって、本来人間の膵臓で作られている血糖値を下げるホルモン、インスリンを注射として使えるようになったのが糖尿病の治療のはじまりなんです。
そして、この糖尿病の血糖値を下げる薬を使うのに一番気を付けたいのが「下げ過ぎ」なんです。
皆さんがご存じのように、糖分というのは人間が体を動かすためのエネルギーとなっている存在。お薬が効きすぎて血糖値が下がり、血液の中の糖分が少なくなってしまうと、本来体で必要なガソリンのような存在が臓器に届けられないので、色んな症状がでます。
この状態を医学用語で「低血糖」とよぶんですね。
具体的には、70mg/dlを切ってしまうと、体のホルモンが緊急で血糖値を上げようと頑張り、その頑張りに伴って
・汗がとまらない
・動悸がする
・手が震える
こういった症状が出ますし、50mg/dlを切ってしまうと、脳が活動するためのガソリンとなる糖分が支給できないことで、
・けいれん
・錯乱状態
・昏睡状態
になってしまう非常に要注意な状態になります。
特にインスリンの注射を行っている人や、すい臓からインスリンの分泌を増やす薬「SU剤」を使っている人は、低血糖が起こりやすいです。
SU剤とは
・アマリール
・グリメピリド
・グリクラジド
といった薬。

インスリンというホルモンは注射したり、増やしたりしてあげると非常によく血糖値は下がるのですが、その分勢いがついてしまうので下がりやすくもなってしまうので、低血糖のリスクもあるんです。
そのため、こういった薬を飲んでいる人は、いつ低血糖になっても対策ができるよう、糖分としてブドウ糖を必ず持ち歩くことが多いです。使っている人にとっては当たり前の話かもしれませんが、糖尿病の薬の種類によっては意外に知られていないこともあります。
血糖値は下げ過ぎると「低血糖」という状態になってしまうということを知っておいて下さい。
糖尿病の薬の副作用②寿命が縮む
次に紹介するのは「寿命」に関する危険な副作用。
まず、「血糖値の厳格なコントロールは逆効果」この事実を知ってください。
「え、血糖値やHbA1cの数値は、基準値に近づければ近づけるほどいいんじゃないの?」
血糖値や1-2か月の血糖値の平均を表すHbA1cは下げれば下げるほどいい、あなたはこのように考えていないでしょうか?
そのように考えるのも無理はありません。
何を隠そう、医学の世界でも、10数年程前は、血糖値はどんどん下げて、基準値に近づけるべきだとあなたと同じ考えだったわけですから。
しかし、この概念がひっくり返されたのが、2008年のACCORD試験と呼ばれる糖尿病に関しての大規模な研究です。
この研究では、血糖値の平均の数値であるHbA1cの数値を、お薬で6%以下に調整するグループと、7%台で調整したグループ、つまり厳格に数値を調整したグループと、比較的ゆるめに調整したグループでどんな違いが出るのか調査しました。
この研究の結果としては、なんと下げ過ぎた方が死亡率が上がってしまった、つまり簡単に言えば寿命が短くなってしまったんです。

この研究は当時の多くの医師の予想を裏切るもので、糖尿病の治療を大きく変える画期的なものとなったんですね。
しかしなぜ、本来であれば目指すべき数値である基準値に近づけることが仇となったのでしょうか?
これは冒頭に紹介した、糖尿病の特徴が関係していました。それが「低血糖」。
糖尿病がない人であれば、基準値くらいの数値の人は、大きな振れ幅はなくある程度安定しています。このため、この状態が一番理想的ではあるんですが…
一方、これを糖尿病の人の高い数値を、薬で基準値に近づけようとすると、どうしてもシーソーゲームのように、反動で下がり過ぎてしまう場面があり、薬を使うことでなかなか避けられない低血糖の状態が体に悪影響を及ぼしていたのではないかと考えられているんですね。
・昔の医学が想定していた以上に、低血糖というのは体に良くなかった
・基準値をめざして低血糖になる回数が増えるくらいなら、少し高めで低血糖なしでコントロールした方が体に良かった
ざっくりと言うならばこのような結論になるでしょう。
そしてこの結果を見て、時に医師の方含め拡大解釈をしてしまう人がいます。
「ほらみろ、薬は良くないんだ。糖尿病なんて治療しなくていいからみんな薬なんてやめろ!」
こんな意見をネットで見る事がありますが、これは大間違い。
この研究では、下げ過ぎが良くない、ということは示されたんですが、薬を飲まなくていい、ということは一言もいっていません。
むしろ薬を飲まないでHbA1cが9とか10になってしまうと、血管がどんどん痛んでいきますし、血糖値が上がり過ぎて、血液がいわゆるドロドロ状態になり、これを薄めるためにのどがカラカラになった所で糖分の多い清涼飲料水をがぶがぶのんで血糖値がさらに上がり、昏睡状態になり病院に運ばれる「ペットボトル症候群」になりかねません。

結局は、何事もそうだと思いますが程度問題なんです。
下げ過ぎも上がり過ぎもよくないので、
・必要であれば薬は活用するが、目標を変えましょう
・低血糖にならないよう、下げすぎないように少しゆるめにしていきましょう
これが今基本となっている糖尿病の治療なんですね。
下げ過ぎたら寿命が縮まった=薬はいらない!害だ!というのは極論にすぎないと皆さんもおわかりいただけると思います。
そしてこのアコード試験の結果を受けて、各国でも治療方針が変わりまして、日本でも2013年に糖尿病学会で出された「くまもと宣言」でも、HbA1cの数値は6%以下ではなくて7%未満を目指しましょう。このように宣言されました。

個人差はあるんですが、基本は今7%未満を目指していく、というのがすすめられています。
糖尿病を治療している方だと、できるだけ基準値に近づけなくてはいけないんだ、数値を下げなければいけないんだと勘違いをして、苦しい思いをしている人も結構いるので、この知識は必ず知っておくと自分の病気のことがよくわかると思いますし、非常に納得できるのではないでしょうか。
このように、あまりきつい目標をたて、治療をすると糖尿病という病気は薬を使うことが逆効果になる、寿命が縮む場合もあるということは是非覚えておいてくださいね。
糖尿病の薬の副作用③膀胱炎
さて、次に気を付けたいのが「おしっこ」の症状。
糖尿病という病気だけあって、おしっこに副作用が出ることもあります。
特に、とある糖尿病の薬を使った時に起こりやすいんです。
先ほどインスリンが100年ほど前に初めて作られた糖尿病のお薬という話をしましたが、そこから本当に様々な糖尿病の薬が作られまして、その中でも比較的新顔、最近作られていて、非常に良い薬と言われているのが「SGLT2阻害薬」。
・フォシーガ
・スーグラ
・ジャディアンス
といった薬です。
この薬はどうやって血糖値を下げてくれるのかというと、血液の中の糖分をおしっこの方に流してあげて、おしっこから糖分が出てくることで血糖値が下がる仕組みなんです。
だいたい1日に400kcalくらいの糖分をおしっこから体の外に出してくれるので、人によっては嬉しい副作用としては、だんだん体重が減ってくることもあるんですよね。
糖尿病の合併症である腎不全を防ぐ効果や、心臓を守る効果もデータとして出てきていて、非常に注目されている薬で処方されている人も多いと思います。
ただ一点、少し嫌な副作用が起きることがあるんです。
それは、おしっこにばい菌が入りやすくなること。
今おしっこから糖分を出して血糖値を下げると説明しましたが、糖分というのはばい菌のエサになるものなので、糖分が増えると尿の通り道でばい菌に感染しやすくなります。
女性だと膀胱炎や、さらにその上の腎臓にばいきんが入ってしまう腎盂腎炎という状態になってしまうことも。

なりやすい人はお薬を変えることもあるんですが、知らないと糖尿病の薬の影響とわからないので、かかりつけの先生に相談するようにして下さいね。
糖尿病の薬の副作用④おなら
次に紹介する副作用は「おなら」。
糖尿病の薬を飲んでいて、なんか最近おならが多いなあ、お腹にガスが溜まりやすいなあ、、
こういう人は糖尿病のお薬の副作用かもしれません。
このおならの副作用が出やすいのは専門用語で「α-グルコシダーゼ阻害薬」と呼ばれるもの。
お薬の名前はグルコバイ、セイブル、ベイスンなどです。

この薬はどのように血糖値を下げるかといいますと、なんと「腸」に働きかけるんですね。
食事から摂取した糖分は、小腸でブドウ糖の形で吸収されます。
そして、吸収された後で血液に入り、この量が多いと血糖値が上がってしまうんですね。
しかし、この薬の働きは、なんと小腸に入った糖分の手をとり、腸の中で引き留めてくれて、できるだけ長く留まらせてくれるので、
小腸での糖の吸収がゆっくりになることで、血糖値が下がりやすくなるという薬なんです。
一口に糖尿病の薬と言っても、本当に様々な作用があるんですよね。
そしてなぜおならが出やすくなるのかといいますと、腸の中に糖分が長くとどまることで、糖分が腸内細菌のエサになりやすくなってしまい、その結果ガスが増えてお腹がふくれたり、おならが出やすくなるんですね。
糖分を腸にひきとめて、吸収をゆっくりにすることにもデメリットがあったんです。
起こる頻度が高いわけではありませんし、命に関わるような副作用ではないものの、生活に大きな支障をきたすこともありますから、糖尿病の薬を飲んでいてお腹のはりやおならの症状がある人は主治医に相談しましょう。
糖尿病の薬の副作用⑤下痢
次に紹介するのは「下痢」。そしてこの症状、大酒飲みの人に要注意なんです。
下痢の症状が出やすいのは「メトホルミン」や「メトグルコ」というお薬。

よく出される薬なので、使っているよ、という人もいるのではないでしょうか。
このお薬は「インスリン」にかかわるお薬。
前半で紹介したインスリンの注射やSU剤という飲み薬は、インスリンの「量」を増やすお薬でしたが、このメトホルミンはインスリンを「効きやすくする」お薬なんです。
例えば肥満の人などはインスリンが分泌されていても、血糖値を下げにくい体質になっていたりするので、そんな人によく出される薬ですね。
そして、このメトホルミンも本当にいい薬なんですが、知っておきたい副作用があります。
それが「乳酸アシドーシス」。
言葉を聞いてもイメージがあまりわかないと思いますが、血液の中に乳酸が溜まって体が酸性化してしまい、結果命に関わる危険な状態です。
そしてこの際に下痢や吐き気といった症状が出やすいんですよね、
この乳酸アシドーシスはめったなことではならないので、恐れすぎる必要なないものの、気を付けてほしいのが「大酒飲みの人」。
アルコールというのは、体を酸性化させることがあり、この乳酸アシドーシスに拍車をかけてしまう場合があります。
なので、程よいお酒とのお付き合いは良いのですが、
メトホルミンを飲みながら、毎日のようにお酒をたらふく飲んでいる人は、この「乳酸アシドーシス」になるおそれがなるので、要注意なんです。
意外に知らずに、メトホルミンを飲んでるけどすごくお酒を飲んでいる人もいるので、一度主治医の先生ともよく相談してくださいね。
まとめ
今回紹介した医学知識は、意外に知らなかった人も多いのではないでしょうか。
・糖尿病というのは放っておくと色んな症状を引き起こし、血管を傷つける怖い病気ですが、薬での治療は低血糖のリスクを考えなければいけないこと。
・現代の医学では血糖値は下げ過ぎない状態でコントロールした方がよしとされていること。
・おしっこの感染や、お腹の症状があること。大酒飲みの人が糖尿病の薬を飲んでいると命に関わる場合があること。
どれも非常に糖尿病の薬と正しく付き合うために大切な知識です。

是非今回紹介した知識はしっかり覚えておいて、自分や大事な家族を守り、正しく糖尿病と付き合っていくために活用してくださいね。

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