アンテベートは何に効く？強さや副作用、正しい使い方を優しく解説！【軟膏/クリーム/ローション】

「なかなか治らない湿疹で、かゆくて夜も眠れない…」「皮膚が赤く腫れて、見た目も気になる…」そんなつらい皮膚の症状にお悩みの方に、皮膚科で「アンテベート」という塗り薬が処方されることがあります。

「アンテベートって、どんなお薬なんだろう？」「ステロイドって聞くけど、どのくらい強いの？」「副作用が心配…」など、いろいろな疑問や不安を感じるかもしれませんね。

この記事では、皮膚の炎症を強力に抑えるお薬「アンテベート」について、その正体から効果、ステロイドの強さ、副作用、そして何よりも大切な正しい使い方や注意点を、医師がとことん優しく、そして分かりやすく解説します！

アンテベートとは？効果は？

アンテベートは、皮膚の炎症や赤み、かゆみ、腫れなどを抑える効果があるステロイドの塗り薬です。

アンテベートは、ステロイドの強さのランクでいうと、5段階中上から2番目のII群「ベリーストロング（とても強い）」に分類される、非常に強力なステロイド外用薬です。

「とても強い」と聞くと、不安になるかもしれませんが、医師が患者さんの症状や状態をしっかり見極めた上で、「この強さが必要だ」と判断した場合に処方されます。

ステロイド外用薬の強さについてはこちらの記事も参考にしてくださいね。

【強さ一覧】ステロイド軟膏のランク早見表｜弱い・中等度・強いの使い分けと副作用を徹底解説

アンテベートの成分

アンテベートの主役は、「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」というステロイド成分です。

①炎症を強力に鎮める消防隊長
皮膚で炎症がひどくなると、様々な化学物質が大量に放出され、激しい赤み、腫れ、かゆみといった、とてもつらい症状を引き起こします。ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルは、これらの炎症を引き起こす物質が作られるのを非常に強力に抑えたり、炎症に関わる細胞の働きを強力に鎮めたりする作用があります。

②血管をキュッと引き締め、赤みや腫れを速やかに引かせる
炎症が起きると、その部分の血管が拡張して真っ赤になったり、血液の成分が漏れ出してパンパンに腫れたりします。ステロイドには、この拡張した血管を収縮させる作用があり、特にアンテベートのような強力なステロイドは、その効果も速やかです。

このように、アンテベートは、皮膚の炎症反応を非常に強力にブロックすることで、つらい症状をすみやかに改善してくれるのです。

アンテベートの効果

• ひどい皮膚の赤み、腫れ、かゆみを強力に抑える
• 頑固な湿疹や皮膚炎の症状を改善する
• 乾癬などの角化症の症状を和らげる

ただし、アンテベートは症状を抑えるお薬であり、原因そのものを治すわけではありません。例えば、細菌や真菌（カビ）による感染症が原因の場合は、そちらの治療も併せて行う必要があります。

どんなときに使う？（適応疾患・部位）

• アトピー性皮膚炎（特に症状がひどく、苔癬化（皮膚が厚く硬くなる）した部分など）
• 接触皮膚炎（ひどいかぶれ）
• 脂漏性皮膚炎（重症な場合）
• 尋常性乾癬（じんじょうせいかんせん） 、掌蹠膿疱症（しょうせきのうほうしょう）
• 痒疹群（ようしんぐん：非常に強いかゆみを伴う皮膚のもりあがりなど）
• 円形脱毛症（重症な場合）
• ケロイド、瘢痕（傷跡）の治療補助

体幹や手足など、比較的皮膚の厚い部分に使われることが多いです。顔や首、陰部などの皮膚の薄いデリケートな部分への使用は、ステロイドの吸収率が高く副作用が出やすいため、医師が特に必要と判断した場合にごく短期間に限って使用されることがあります。自己判断での使用は絶対に避けましょう。

アンテベートの種類

アンテベートには、「軟膏」「クリーム」「ローション」があります。これらは同じ有効成分「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」を含んでいますが、基剤（お薬のベースとなる部分）が異なるため、使用感や適した患部などに違いがあります。

アンテベート軟膏0.05%

【特徴】
油性の基剤で、しっとりとした使用感です。皮膚を保護する効果が高く、刺激が少ないのがメリット。水に流れにくく、効果の持続も期待できます。

【向いている部位】
乾燥してカサカサ、ゴワゴワした患部、じゅくじゅくしていない患部、皮膚が特に敏感な部分。

アンテベートクリーム0.05%

【特徴】
水と油を混ぜ合わせた乳剤性の基剤で、軟膏よりも伸びが良く、ややさっぱりとした使用感です。

【向いている部位】
少しじゅくじゅくした患部、やや広範囲の患部、毛の多い部分、夏場などさっぱりとした使用感が好まれる場合。

アンテベートローション0.05%

【特徴】
液状の基剤で、サラサラとした使用感です。広範囲に塗りやすく、特に頭皮など毛の多い部分に適しています。アルコールを含むため、傷やただれがひどいとしみることがあります。

【向いている部位】
頭皮、毛の多い部分、広範囲の患部。

アンテベートの使い方（用法・用量）

基本的に1日1～数回、患部に薄くのばす使い方が一般的ですが、塗る回数や期間は、症状の程度によって異なります。

「適量」の目安としてよく言われるのが、「フィンガーティップユニット（FTU）」です。これは、大人の人差し指の第一関節までの長さにチューブから出した量（約0.5g）で、大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗るのにちょうど良い量とされています。ローションの場合は、1円玉大の量が手のひら2枚分くらいの目安です。

症状がよくなってきたら、回数を減らすなど調整するケースが多いです。

“塗れば塗るほど早く治る”わけではないので、症状に合わせた量や回数を守りましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、ステロイドの処方や皮膚症状の治療も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

アンテベートの注意事項（禁忌）

使ってはいけない場合（禁忌）

• 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
• 真菌（カビ）・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症、および動物性皮膚疾患（疥癬、けじらみ等）が主病巣の場合： これらの感染症には効果がなく、むしろ悪化させる可能性があります。
• 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎で、穿孔部位への使用
• 潰瘍（ベーチェット病は除く）、第2度深在性以上の熱傷・凍傷

使用上の注意

• 自己判断で中止・再開しない: 症状が良くなったと思っても、医師の指示なしに急にやめるとリバウンド（症状が悪化すること）が起こることがあります。逆に、漫然と長期間使い続けるのも副作用のリスクを高めます。
• 目に入らないように細心の注意を: 万が一目に入ってしまったら、すぐに大量の水で洗い流し、異常を感じたら眼科医の診察を受けてください。
• おむつの下や密封法（ODT）は原則として避ける: おむつの下や、ラップなどで覆って塗る方法（密封療法）は、薬剤の吸収を高めて効果を強めますが、副作用のリスクも格段に高まります。

保管方法

• 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
• 子どもの手の届かない場所に置いてください。
• 容器の先端を清潔に保ち、雑菌がつかないようにしましょう。

塗り忘れたら？

思い出した時点で塗ってOKです。次の塗る時間が近ければ、飛ばして次回分から再開しても大丈夫です。
焦って一気に多めに塗るのは避けてください。

アンテベートに市販薬はある？値段は？

市販薬

医療用の「アンテベート」と全く同じ有効成分「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」を含む市販薬は、現在のところありません。

薬局やドラッグストアで販売されているステロイド外用薬は、アンテベートよりも作用が穏やかなものがほとんどです。ひどい湿疹や皮膚炎の場合は、自己判断で市販薬を使わずに、必ず皮膚科を受診して、適切な診断と治療を受けることが大切です。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

• アンテベート軟膏0.05%: 5gチューブ1本あたり 約50～65円程度
• アンテベートクリーム0.05%: 5gチューブ1本あたり 約50～65円程度
• アンテベートローション0.05%: 10g（または10mL）1本あたり 約100～120円程度

※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

ジェネリック名

アンテベートの有効成分「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」を含むジェネリック医薬品（後発医薬品）も、軟膏・クリーム・ローションの各剤形で存在します。

「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏「〇〇」」（〇〇には製薬会社名が入ります）といった名称で販売されており、一般的にアンテベートよりも薬価が安価なことが多いです。

添付文書

アンテベート軟膏0.05%／アンテベートクリーム0.05%／アンテベートローション0.05%

よくある質問（FAQ）

Q. 妊娠中や授乳中でも使える？
A. 妊婦さんや授乳中の方は、なるべく薬の使用を控えたい時期です。ただし、どうしても治療が必要な場合は医師が判断して処方することがあります。心配なことは遠慮なく相談しましょう。

Q. 子どもにも使えるの？
A. アンテベートは作用が非常に強いため、赤ちゃんや小さなお子さんへの使用は、原則として行われません。 もし医師が他の治療法がなく、やむを得ないと判断した場合でも、ごく短期間、極めて限定的な範囲での使用となり、非常に慎重な経過観察が必要です。

Q. どのくらいで効き目を感じる？
A. 効果が現れるまでの時間には個人差や症状の程度によりますが、アンテベートは作用が非常に強いため、多くの場合、使用開始から比較的すぐに（数日程度で）赤みやかゆみが和らいでくるのを実感できるでしょう。

Q. アンテベートはどのくらいでやめられますか？
A. やめるタイミングは非常に重要で、自己判断は絶対に禁物です。症状が劇的に良くなっても、医師の指示なしに急にやめると、症状がリバウンド（急激に悪化）することがあります。医師が皮膚の状態を見て、徐々に塗る回数を減らしたり、より作用の弱いステロイドに段階的に変更したりしながら、慎重に中止のタイミングを判断します。

Q. 長く使っても大丈夫ですか？
A. 作用が強いため、皮膚が薄くなる、感染症にかかりやすくなるなどの局所的な副作用だけでなく、大量・広範囲に使用すると全身的な副作用のリスクも高まります。医師から指示された必要最小限の期間だけ使用し、症状が改善したら速やかに弱いステロイドへの変更や中止を目指します。

Q. アンテベートは顔や陰部にも使っていいですか？
A. 原則として、顔や首、陰部などの皮膚が薄くデリケートな部分には使用しません。 これらの部位にベリーストロングクラスのステロイドを使用すると、皮膚が薄くなる、血管が浮き出る、ニキビのようなものができるといった副作用が非常に出やすくなります。

Q. アンテベートのステロイドの強さはどのくらいですか？
A. アンテベートに含まれるステロイド「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」は、5段階中、上から2番目に強いII群「ベリーストロング（とても強い）」に分類されます。

Q. アンテベートはニキビにも効きますか？
A. ニキビは、毛穴の詰まりや皮脂の過剰な分泌、アクネ菌の増殖などが複雑に関わってできるものです。 アンテベートは非常に強力な抗炎症作用を持っていますが、ニキビのこれらの根本的な原因に直接働きかけるわけではありません。むしろ、ステロイドの副作用として「ステロイドざ瘡（ざそう）」といって、ニキビに似た赤いブツブツができてしまうことがあります。また、もともとあるニキビに塗ることで、かえって症状を悪化させてしまう可能性も考えられます。

まとめ

今回は、非常に強力なステロイド外用薬である「アンテベート（軟膏・クリーム・ローション）」について、詳しく見てきました。

アンテベートは、「ベリーストロング」クラスに位置付けられる、とても作用の強いお薬です。そのため、他の治療ではなかなか良くならなかった頑固な湿疹や皮膚炎に対して、優れた効果を発揮してくれます。

しかし、その効果が高い分、使い方には細心の注意が必要です。一番大切なのは、「とても強い薬」であることをしっかり認識し、医師や薬剤師の指示を絶対に守り、ごく短期間で集中的に治療し、症状が改善したら速やかに弱い薬に切り替えるか中止すること。そして、自己判断で顔やデリケートな部分に使ったり、長期間ダラダラと使い続けたりしないことです。

この記事が、アンテベートに対する皆さんの疑問や不安を少しでも軽くして、医師とよく相談しながら、安心して適切な治療に取り組むためのお手伝いができれば、とても嬉しいです。つらい皮膚の症状が一日も早く良くなって、健やかな毎日が戻ってきますように。どうぞお大事にしてくださいね。