デルモベートってどんな薬?強さや副作用、正しい使い方を優しく医師が解説!【軟膏/クリーム/ローション】

Dermovate

「何を塗っても治らない、本当にガンコな湿疹…」「皮膚がゴワゴワに厚くなって、かゆみもひどい…」そんな、非常につらい皮膚の症状にお悩みの方に、皮膚科で「デルモベート」という塗り薬が処方されることがあります。

「デルモベートって、名前からして強そう…」「一番強いステロイドって聞いたけど、大丈夫なの?」「副作用がすごく心配…」など、大きな不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、皮膚の炎症を非常に強力に抑えるお薬「デルモベート」について、その正体から効果、ステロイドの驚きの強さ、副作用、そして何よりも大切な正しい使い方や注意点を、医師がとことん優しく、そして分かりやすく解説します!

デルモベートは適切に使えば非常に頼りになるお薬です。一緒に正しい知識を身につけて、つらい皮膚の悩みに立ち向かいましょう。

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デルモベートとは?効果は?

デルモベートは、皮膚の炎症や赤み、かゆみ、腫れなどを抑える効果があるステロイドの塗り薬です。

デルモベートは、ステロイドの強さのランクでいうと、最も作用が強い「ストロンゲスト」クラス(I群)に分類される、いわばステロイドの切り札のような存在です。

「最も強い」と聞くと、不安になるかもしれませんが、医師が患者さんの症状や状態をしっかり見極めた上で、「この強さが必要だ」と判断した場合に処方されます。

ステロイド外用薬の強さについてはこちらの記事も参考にしてくださいね。

デルモベートの成分

デルモベートの主役は、クロベタゾールプロピオン酸エステルというステロイド成分です。

炎症を根こそぎシャットアウトする最終兵器
皮膚でひどい炎症が長引くと、炎症を引き起こす様々な物質が大量に放出され続け、激しい赤み、腫れ、そして耐え難いかゆみといった、非常につらい症状が続きます。クロベタゾールプロピオン酸エステルは、これらの炎症を引き起こす物質が作られるのを、他のステロイドよりもはるかに強力に抑え込みます。また、炎症に関わる細胞の働きも、非常にパワフルに鎮静化します。

細胞の異常な増殖を強力に抑える
乾癬(かんせん)などで見られる、皮膚の細胞が異常に速いスピードで増えてしまう状態(角化異常)を、強力に抑える働きもあります。

このように、デルモベートは、皮膚の炎症反応や異常な細胞増殖を、他のどのステロイドよりも強力に抑え込むことで、難治性の皮膚症状を改善へと導きます。

デルモベートの効果

  • 極めてひどい皮膚の赤み、腫れ、かゆみを強力に抑える
  • 他の治療で効果がなかった、治りにくい湿疹や皮膚炎の症状を改善する
  • 乾癬や掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などの難治性皮膚疾患の症状を和らげる

その効果は非常に高いため、短期間で劇的な改善が見られることも少なくありません。

どんなときに使う?(適応疾患・部位)

  • アトピー性皮膚炎(特に重症で苔癬化(皮膚がゴワゴワに厚くなる)した部分など、ごく限られた範囲・期間で使用)
  • 接触皮膚炎(非常に重症なもの)
  • 脂漏性皮膚炎(他の治療で全く効果がない場合など、極めて限定的)
  • 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん) 、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
  • 痒疹群(結節性痒疹など、極めて強いかゆみと硬い盛り上がりがあるもの)
  • 円形脱毛症(重症で難治な場合)
  • ケロイド、瘢痕(傷跡)の治療補助

体幹や手足など、比較的皮膚の厚い部分に使われることが多いです。顔や首、陰部などの皮膚の薄いデリケートな部分への使用は、ステロイドの吸収率が高く副作用が出やすいため、医師が特に必要と判断した場合にごく短期間に限って使用されることがあります。自己判断での使用は絶対に避けましょう。

デルモベートの種類

デルモベートには、「軟膏」「クリーム」「ローション」があります。これらは同じ有効成分「クロベタゾールプロピオン酸エステル」を含んでいますが、基剤(お薬のベースとなる部分)が異なるため、使用感や適した患部などに違いがあります。

デルモベート軟膏0.05%

【特徴】
油性の基剤で、しっとりとした使用感。皮膚を保護する効果が高く、刺激が最も少ないタイプです。水に流れにくく、効果の持続も期待できます。

【向いている部位】
乾燥してカサカサ、ゴワゴワした患部、じゅくじゅくしていない患部、皮膚が特に敏感な部分。

デルモベートクリーム0.05%

【特徴】
水と油を混ぜ合わせた乳剤性の基剤で、軟膏よりも伸びが良く、ややさっぱりとした使用感です。

【向いている部位】
少しじゅくじゅくした患部、やや広範囲の患部、毛の多い部分。

デルモベートスカルプローション0.05%

【特徴】
液状の基剤で、サラサラとした使用感。特に頭皮など毛髪があっても地肌に直接塗布しやすいように作られています。アルコールを含むため、傷やただれがひどいとしみることがあります。

【向いている部位】
頭皮の頑固な湿疹や乾癬など。

デルモベートの使い方(用法・用量

基本的に1日1~数回、ごく少量を患部に薄くのばす使い方が一般的ですが、塗る回数や期間は、症状の程度によって異なります。

通常、2週間以内とされることが多く、症状が改善したら速やかに、より作用の弱いステロイドに切り替えるか、使用を中止します。漫然と長期間使い続けることは推奨されません。

「適量」の目安としてよく言われるのが、フィンガーティップユニット(FTU)です。これは、大人の人差し指の第一関節までの長さにチューブから出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗るのにちょうど良い量とされています。ローションの場合は、1円玉大の量が手のひら2枚分くらいの目安です。

症状がよくなってきたら、回数を減らすなど調整するケースが多いです。

“塗れば塗るほど早く治る”わけではないので、症状に合わせた量や回数を守りましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、ステロイドの処方や皮膚症状の治療も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

デルモベートの副作用

主な副作用

局所的な副作用(塗った場所に起こるもの)

  • 皮膚の真菌(カビ)感染症の誘発・悪化: カンジダ症や水虫などが起こりやすくなることがあります(ゲンタマイシンは真菌には効きません)。
  • 皮膚の萎縮、ステロイド皮膚: 長期間連用した場合に、皮膚が薄くなる、皮膚の萎縮線(妊娠線のような線)、毛細血管拡張(皮膚の表面に赤い血管が浮き出て見える)などが現れることがあります。
  • ステロイドざ瘡(ニキビ様のぶつぶつ)、酒さ様皮膚炎(顔が赤くなる): 特に顔への長期連用で起こりやすいです。
  • 多毛(塗った部分の毛が濃くなる)
  • 接触皮膚炎(かぶれ)、刺激感

全身性の副作用

大量または広範囲に長期間使用した場合(特に密封法(ODT)などを行った場合)に、ステロイド成分が体内に吸収され、副腎機能の抑制などの全身的な影響が出ることが理論上はありますが、通常の塗り薬としての使用では頻度は高くありません。

どんなお薬にも副作用の可能性はありますが、デルモベートは作用が非常に強いため、特に使い方を間違えたり、長期間漫然と使用したりすると、副作用のリスクが高まります。医師の指示通りに正しく使うことが何よりも大切です。

副作用が出たときの対処法

  • すぐに使用を中止する
  • ヒリヒリ・赤みなどの症状を医師または薬剤師に伝える
  • 必要に応じて他の治療に切り替えてもらう

副作用の予防のためにも、塗る頻度や期間、量は必ず指示どおりに守ることが大切です。

デルモベートの注意事項(禁忌)

使ってはいけない場合(禁忌)

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 真菌(カビ)・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症、および動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)が主病巣の場合: これらの感染症には効果がなく、むしろ悪化させる可能性があります。
  • 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎で、穿孔部位への使用
  • 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷

使用上の注意

  • 自己判断で中止・再開しない: 症状が良くなったと思っても、医師の指示なしに急にやめるとリバウンド(症状が悪化すること)が起こることがあります。逆に、漫然と長期間使い続けるのも副作用のリスクを高めます。
  • 目に入らないように細心の注意を: 万が一目に入ってしまったら、すぐに大量の水で洗い流し、異常を感じたら眼科医の診察を受けてください。
  • おむつの下や密封法(ODT)は原則として避ける: おむつの下や、ラップなどで覆って塗る方法(密封療法)は、薬剤の吸収を高めて効果を強めますが、副作用のリスクも格段に高まります。

保管方法

  • 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
  • 子どもの手の届かない場所に置いてください。
  • 容器の先端を清潔に保ち、雑菌がつかないようにしましょう。

塗り忘れたら?

思い出した時点で塗ってOKです。次の塗る時間が近ければ、飛ばして次回分から再開しても大丈夫です。
焦って一気に多めに塗るのは避けてください。

デルモベートに市販薬はある?値段は?

市販薬

医療用の「デルモベート」と全く同じ有効成分「クロベタゾールプロピオン酸エステル」を含む市販薬は、現在のところありません。

薬局やドラッグストアで販売されているステロイド外用薬は、デルモベートよりも作用が穏やかなものがほとんどです。ひどい湿疹や皮膚炎の場合は、自己判断で市販薬を使わずに、必ず皮膚科を受診して、適切な診断と治療を受けることが大切です。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • デルモベート軟膏0.05%: 5gチューブ1本あたり 約70~90円程度
  • デルモベートクリーム0.05%: 5gチューブ1本あたり 約70~90円程度
  • デルモベートスカルプローション0.05%: 10g(または10mL)1本あたり 約130~160円程度

※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

ジェネリック名

メサデルム軟膏の有効成分「クロベタゾールプロピオン酸エステル」を含むジェネリック医薬品(後発医薬品)も存在します。

「クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏「〇〇」」(〇〇には製薬会社名が入ります)といった名称で販売されており、一般的にデルモベートよりも薬価が安価なことが多いです。

添付文書

デルモベート軟膏0.05%/デルモベートクリーム0.05%

デルモベートスカルプローション0.05%

よくある質問(FAQ)

Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
A. 大量または長期間にわたる広範囲の使用は絶対に避けるべきです。動物実験で胎児への影響が報告されています。授乳中は広範囲でなければ影響は少ないとも言われますが、デルモベートの強さを考えると、より安全な他の薬剤が優先されるべきです。胸部に塗る場合は赤ちゃんが舐めてしまうリスクがあり、絶対に避けるべきです。

Q. 子どもにも使えるの?
A. 大人に比べて皮膚が薄く、体重あたりの体表面積が大きいため、全身的な副作用(成長障害など)のリスクが非常に高くなります。原則として使用しません。小児への使用は、専門医が他の全ての治療法を試しても効果がなく、生命に関わるような極めて特殊な状況でのみ、入院管理のもとで検討されるレベルです。

Q. どのくらいで効き目を感じる?
A. 効果が現れるまでの時間には個人差や症状の程度によりますが、デルモベートは最も作用が強いため、多くの場合、使用開始からごく短期間(1~2日程度)で劇的な改善が見られることがあります。

Q. 長く使っても大丈夫ですか?
A. デルモベートを長期間漫然と使用することは、皮膚の萎縮、感染症の悪化、さらには全身性の副作用のリスクを著しく高めるため、極めて危険です。医師から指示された必要最小限の期間(通常は数日~2週間以内)を超えて使用することは絶対にありません。

Q. デルモベートは顔や陰部にも使っていいですか?
A. 皮膚が非常に薄く、薬剤の吸収率が極めて高いため、デルモベートのような最強クラスのステロイドを使用すると、皮膚が萎縮したり、毛細血管が拡張したりといった重篤な副作用が短期間で現れるリスクが非常に高いです。原則として使用しません。

Q. デルモベートはステロイドの中で一番強いと聞きましたが、本当ですか?
A. デルモベートの有効成分「クロベタゾールプロピオン酸エステル」は、ステロイド外用薬の強さのランクで5段階中、最も強力なI群「ストロンゲスト(最強)」に分類されます。そのため、他のステロイドでは効果が得られないような、非常に重症で難治性の皮膚疾患にのみ、医師の厳格な管理のもとで使用されます。

Q. デルモベートを塗ってはいけない場所や症状はありますか?
A. たくさんあります。下記は原則禁忌か、極めて慎重な使用が求められる(ほぼ使われない)部位・症状です。
感染症(細菌、真菌(カビ)、ウイルス): とびひ、水虫、カンジダ症、ヘルペス、帯状疱疹などには絶対に使ってはいけません。感染を急激に悪化させます。
顔、まぶた、首、陰部、脇の下などの皮膚の薄い部分
傷口、ただれのひどい部分、潰瘍、やけど
ニキビ

まとめ

今回は、ステロイド外用薬の中で最も作用が強力な「デルモベート(軟膏・クリーム・スカルプローション)」について、詳しく見てきました。

デルモベートは、「ストロンゲスト(最強)」クラスに位置付けられる、いわばステロイド治療の“切り札”です。そのため、他の治療ではなかなか良くならなかった、非常に頑固で重症な湿疹や皮膚炎に対して、短期間で劇的な効果を発揮してくれることがあります。

しかし、その効果が絶大であるということは、副作用のリスクも他のステロイドに比べて格段に高いということを意味します。だからこそ、デルモベートを使う上で最も大切なのは、「最強の薬」であることを常に意識し、皮膚科専門医の厳格な診断と指示のもとで、ごく短期間、必要最小限の量と範囲に限定して使用すること。そして、自己判断での使用、安易な継続、顔やデリケートな部位への使用は絶対に絶対にしないことです。

この記事が、デルモベートに対する皆さんの正しい理解を助け、医師としっかりとコミュニケーションを取りながら、安心して適切な治療に取り組むための一助となれば、心から嬉しいです。つらい皮膚の症状が一日も早く軽快し、穏やかな日々が戻ってきますように。どうぞお大事になさってください。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。