
「塗り薬を頑張って塗っているのに、アトピーのかゆみが治まらない」 「喘息の発作で、夜もぐっすり眠れない」 「鼻づまりや匂いがわからない症状(副鼻腔炎)で悩んでいる」
そんな、従来の治療ではなかなか良くならなかったアレルギー性の病気に対して、画期的な効果が期待できる新しいお薬が「デュピクセント」です。
今回は、このデュピクセントがどのようなお薬なのか、効果の仕組みや副作用、そして気になる「値段」や「やめたらどうなるか」についてを医師がやさしく解説していきます。
目次
デュピクセントとは?効果は?
デュピクセントは、「生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)」というグループに分類される注射タイプのお薬です。
アレルギー炎症の“元栓”を締めて、症状を根元から抑え込むので、ステロイドのように広く全身の免疫を抑える薬とは異なり、アレルギー反応の鍵となるIL-4・IL-13のシグナルだけをピンポイントでブロックする薬です。
デュピクセントは、ご自身で注射ができるように工夫された2つのタイプがあります。
- デュピクセントペン 200mg/300mg: ペン型で、肌に押し当てるだけで注射できます。針が見えないので恐怖感が少ないのが特徴です。
- デュピクセントシリンジ 200mg/300mg: 従来の注射器タイプです。
デュピルマブの成分
有効成分は「デュピルマブ(遺伝子組換え)」というヒトIgG4モノクローナル抗体です。
アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患では、体の中で「IL-4(インターロイキン4)」と「IL-13(インターロイキン13)」という物質が過剰に働き、強い炎症を引き起こしています。 デュピクセントは、このIL-4とIL-13の働きだけをピンポイントでブロックします。
炎症の指令を出す物質を止めることで、かゆみ、赤み、皮膚のバリア機能低下、気道の炎症などを根本から抑え込むことができます。
デュピクセントの効果
- 皮膚の炎症やかゆみを強力に抑え、きれいな肌を取り戻す効果(アトピー性皮膚炎)
- 気道の炎症を抑え、喘息発作を減らし呼吸機能を改善する効果(気管支喘息)
- 鼻茸(鼻ポリープ)を小さくし、鼻づまりや嗅覚障害を改善する効果(慢性副鼻腔炎)
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
デュピクセントは、「2型炎症」に対して高い効果が期待できる一方で、感染症などがまったく起きないわけではないため、標準的な治療(塗り薬や吸入薬など)を十分に行っても効果が不十分な場合に検討される、いわゆる「セカンドライン以降」の治療薬です。
- アトピー性皮膚炎
- 気管支喘息(既存治療でコントロール不良な重症・難治例)
- 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
- 結節性痒疹(けっせつせいようしん)
- 特発性慢性蕁麻疹(とくはつせいまんせいじんましん)
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
デュピクセントはオンライン診療で出せる?
「継続して病院に通うのは忙しくて難しい」「すぐに病院で相談したい」
そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。
デュピクセントは、導入(治療開始)は対面診療が必要ですが、病状が安定し、自己注射が可能になれば、オンライン診療での継続処方が可能な場合があります。
ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。
ウチカラクリニックでも、
デュピクセントに関するご相談や処方をオンライン診療にて承っております。
特に、「体調が悪く外出がつらいとき」や「待つのが苦手なお子様の受診」などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。
※重要な注意点※
デュピクセントは厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」の対象薬であり、原則として専門医の管理下で、定期的な対面診察も行いながら使うお薬です。 冷蔵保存が必要な注射薬であることや、副作用のチェックが必要なことから、オンライン診療だけで完結させるのではなく、対面でのフォローと組み合わせて安全に継続していくことが大切です。
デュピクセントの使い方(用法・用量)
通常、成人には初回に2本(600mg)を注射し、その後は2週間に1回、1本(300mg)を注射します。
「慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、初回2本投与を行わない」「小児、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などは症状が落ち着いたあとに4週間に1回へ間隔をあける」など、それぞれの疾患や体重にあわせ細かい投与方法を主治医が決定します。
自己注射のポイント
医師の指導を受けて練習すれば、ご自宅で自分で注射(自己注射)が可能です。失敗せず、痛みを少なく打つための重要なポイントは以下の通りです。

①必ず「室温に戻して」から打つ
冷蔵庫から取り出してすぐの冷たい薬液を注射すると、強い痛みを感じることがあります。 注射する45分前(シリンジタイプは30分前)に冷蔵庫から出し、平らな場所に置いて常温に戻してから打つようにしましょう。 ※直射日光には当てず、ドライヤーや手で温めたりしないでください。
②打つ場所は「お腹」か「太もも」
自分で打つ場合に推奨される場所は以下の通りです。
- お腹: おへそから5cm以上離れた場所。
- 太もも: 前面の広い部分。
※二の腕の外側も打てますが、自分では難しいため、ご家族などに打ってもらう場合に選びます。
③打つ場所を毎回少しずらす
毎回まったく同じ場所に打つと、皮膚が硬くなったり凹んだりすることがあります。前回右太ももなら今回は左太もも、といったように、ローテーションして打つ場所を変えるのがコツです。

デュピクセントの副作用
主な副作用
最も多い副作用は、注射した部分の反応(赤み、腫れ、痛み、かゆみ)です。また、アトピー性皮膚炎の治療中の方では、結膜炎(目のかゆみ、充血、目やに)が比較的多く見られます。
そのほか、口唇ヘルペスなどのヘルペス感染・好酸球という白血球の増多の副作用が報告されています。
副作用が出たときの対処法
- 注射部位の反応: 数日で自然に治まることがほとんどです。冷やすと楽になることがあります。
- 結膜炎: 目のかゆみや充血が出た場合は、我慢せずに眼科を受診するか、主治医に相談してください。抗アレルギー点眼薬などで治療します。
- 重大な副作用: ごくまれに重いアレルギー反応(アナフィラキシー)や、血管の炎症などが報告されています。息苦しさ、全身のじんましん、強いむくみ、手足のしびれなど、「明らかにいつもと違う症状」が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
デュピクセントはやめたらどうなる?

「肌がきれいになったから、もうやめたい」と思うこともあるかもしれません。しかし、自己判断での中止は注意が必要です。
デュピクセントは、あくまで「炎症を抑えている」お薬であり、体質そのものを完全に書き換えるわけではありません。そのため、急にやめると、抑え込まれていた炎症が再び燃え上がり、症状がぶり返す(再燃する)可能性があります。
症状が良くなってきたら、医師と相談しながら、「注射の間隔を空ける」 「塗り薬などの併用療法で維持する」といった形で、慎重に減らしていくことが大切です。決して自己判断で中断しないでください。
デュピクセントの値段は?年間費用は?
デュピクセントの値段
デュピクセントは、非常に高価なお薬です。
薬価(参考:2025年時点の目安)
- デュピクセント注300mgペン: 1本あたり 約5.4万円
自己負担額(目安)
- 3割負担の方: 1本あたり 約1.6万円
2週間に1回(1か月あたり2本)投与する場合、
- 月額費用: 薬剤費だけで 3万円台前半
- 年間費用: 40万円前後 となります(このほかに診察料・検査料などがかかります)。
※薬価は国の制度変更で定期的に見直されます。実際の自己負担額は、必ず受診先の医療機関や薬局で最新の金額を確認してください。
高額療養費制度の活用
医療費が高額になるため、年収に応じた「高額療養費制度」が利用できるケースがほとんどです。また、加入している健康保険組合によっては「付加給付」がある場合もあります。
制度を利用することで、月々の負担額を一定額以下に抑えることができます。治療開始前に必ず医療機関や加入している保険組合に確認しましょう。

デュピクセントの注意事項(禁忌)
使用に注意が必要な方
服用してはいけない方(禁忌)
- 過去にデュピクセントでアレルギーを起こしたことがある方(禁忌)
特に注意して使う方(慎重投与)
- 寄生虫感染のある方(感染に対する免疫反応を弱める可能性があります)
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性
- 生ワクチンを接種する予定のある方
併用に注意が必要な薬
飲み合わせが禁止されているお薬は特にありませんが、他の生物学的製剤や免疫を抑える飲み薬を使っている方は、自己判断で併用せず、必ず主治医に相談してください。
また、デュピクセントを始めたからといって、今まで使っていたステロイドの塗り薬や飲み薬を急にやめないでください。急な減量は症状の悪化を招くため、医師の指示に従って徐々に減らしていきます。
使用上の注意
| 注射前の準備 | 冷蔵庫から取り出して、45分以上置いて室温に戻してから注射します。冷たいまま打つと痛みが強いことがあります。 |
| 生ワクチンの接種は避ける | デュピクセントの使用中は、免疫の反応に影響を与える可能性があるため、「生ワクチン」の接種は避ける必要があります。(例:麻疹(はしか)、風疹、おたふくかぜ、水ぼうそう、BCG など) |
| 廃棄方法 | 使用済みのペンやシリンジは家庭ごみとして捨てず、医療機関から指示された方法(専用の廃棄ボックスなど)で処理すること。 |
保管方法
- 必ず冷蔵庫(2℃~8℃)で保管してください。凍結させないように注意しましょう。
- 子どもの手の届かない場所へ。
打ち忘れたら?
打ち忘れに気づいたら、できるだけ早く1回分を注射し、その後は本来のスケジュール通りに注射してください。次の注射日が近い場合は、医師や薬剤師に相談してください。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、デュピクセントをはじめとしたお薬の処方も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

※心療内科ではシステム手数料をいただいております
デュピクセントに市販薬はある?値段は?
市販薬
2025年11月現在、デュピクセントと同じ成分の市販薬はありません。専門医による処方が必要です。
ジェネリック
新しいお薬(バイオ医薬品)であり、2025年11月現在、日本国内でデュピクセントのジェネリック医薬品(バイオシミラー)は販売されていません。
添付文書
デュピクセント皮下注300mgペン/デュピクセント皮下注300mgシリンジ/デュピクセント皮下注200mgペン/デュピクセント皮下注200mgシリンジ
よくある質問(FAQ)
Q.妊婦・授乳中でも投与できますか?
治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ使用されます。自己判断で開始・中断せず、必ず医師に相談してください。
Q.子どもでも投与できますか?
はい、生後6ヶ月以上のアトピー性皮膚炎や、小児気管支喘息のお子さんにも適応があります。体重に合わせて投与量が調整されます。
Q.使うと眠くなりますか?運転はできますか?
眠くなる成分は含まれていないため、運転や機械の操作に影響はありません。
Q.いつから効き始めますか?
個人差はありますが、アトピー性皮膚炎の場合、投与開始から2週間~1ヶ月程度でかゆみの軽減を実感される方が多いです。皮膚がきれいになるまでには数ヶ月かかることもあります。
Q.お酒(アルコール)を飲んでもいいですか?
薬との直接的な悪影響はありませんが、アルコールは体温を上げてかゆみを悪化させる原因になります。アトピーや喘息の症状が不安定なときは、飲酒を控えるか、適量にとどめるのが無難です。
まとめ
デュピクセントは、これまでの治療で良くならなかったアトピーや喘息の症状を、劇的に改善する可能性を秘めたお薬です。費用は高額ですが、高額療養費制度などを活用することで負担を抑えることができます。
「長年のかゆみから解放されたい」 「費用や自己注射について、もっと詳しく知りたい」
そんなときは、ウチカラクリニックのオンライン診療が便利です。
- スマホやPCがあれば、全国どこからでも受診可能
- 対面診療と料金は変わらず、安心してご利用いただけます
- お忙しい方でも安心の年中無休で診療
- 処方された薬は郵送、またはお近くの薬局で受け取り可能
皮膚の悩みやアレルギー治療について、専門医に相談したい方は、ぜひお気軽にウチカラクリニックにご相談ください。
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