
「心不全と診断されたけれど、どんなお薬で治療するの?」
「心臓の負担を減らす新しいお薬について知りたい」
心不全の治療において、心臓を保護し、入院のリスクを減らすための「標準治療」の選択肢として欠かせない存在になっているのが「エンレスト」です。
比較的新しいタイプのお薬ですが、その高い効果から多くの患者さんに処方されています。
この記事では、エンレストがどのように心臓を守るのか、副作用や注意点について医師がわかりやすく解説します。
目次
エンレストとは?効果は?
エンレストは、「サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物」を有効成分とする、ARNI(アーニ)と呼ばれる種類の新しい治療薬です。
これまでの心不全のお薬は、心臓に悪い影響を与える物質を「ブロックする」だけのものでした。
しかし、エンレストは「悪い物質をブロックする」だけでなく、「心臓を保護する良い物質を増やす」という2つの働きを1錠で行う、画期的なお薬です。

エンレストの種類(剤型)
エンレストには、大人用の一般的な「錠剤」に加え、小さなお子様でも飲みやすく、体重に合わせて細かく量を調整できる「小児用」の剤型があり、計5つの規格が存在します。
【大人用(錠剤)】 ピンク色や淡い黄色の錠剤で、症状や血圧に合わせて量を調整します。
- エンレスト錠50mg
- エンレスト錠100mg
- エンレスト錠200mg
【小児用(粒状錠)】 1歳以上のお子様の「慢性心不全」の治療に使用されます。カプセルを開けて、中の粒(顆粒)を少量の柔らかい食べ物などに混ぜて飲むタイプの特殊なお薬です。
- エンレスト粒状錠小児用12.5mg
- エンレスト粒状錠小児用31.25mg
エンレストの成分
有効成分は「サクビトリル」と「バルサルタン」の2つです。
これらが体の中で組み合わさって働くことで、血管を広げ、体内の余分な塩分や水を出しやすくし、心臓への負担を減らします。
エンレストの効果
- 心不全の悪化防止: 心臓への負担を減らし、心臓を保護することで、慢性心不全の悪化を防ぎます。これにより、入院や死亡のリスクを大きく減らす効果が期待できます。
- 強力な降圧効果: 血管を広げ、体内の余分な水分や塩分を排泄しやすくするため、血圧を強力に下げる働きもあります。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
- 慢性心不全: 心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみが出る状態の治療に使われます。
※すでに標準的な心不全治療を受けている患者さんが対象 - 高血圧症: 降圧効果が強いため、血圧が高い状態の治療に使われることがあります。
過度な血圧低下のおそれなどから、原則として高血圧治療の「第一選択薬(最初に使う薬)」としては使用しません。
また、高血圧の治療には100mg錠・200mg錠のみが使われます。
エンレストはオンライン診療で出せる?
「心臓の持病があるから、なるべく外出しすぎるのを避けたい」
「定期的なお薬の処方のために、病院で長時間待つのがつらい」
そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。
エンレストのようなお薬も、医師が適切と判断すれば、オンライン診療で相談したり、処方を受けたりすることが可能です。
ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。
ウチカラクリニックでも、
エンレストに関するご相談や処方をオンライン診療にて承っております。
特に心不全の治療は、お薬を途切れさせないことが非常に大切です。
「体調が悪く外出がつらいとき」や「待つのが苦手なお子様の受診」などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。
エンレストの使い方(用法・用量)
【慢性心不全の場合】
通常、成人には1回50mgを開始用量として、1日2回(朝・夕)服用します。 お薬への忍容性(体が耐えられるか・血圧が下がりすぎないか等)を確認しながら、2〜4週間の間隔で段階的に「1回200mg(1日2回)」まで増量していくのが一般的です。
食事の影響は受けませんので、食前・食後どちらでも服用可能です。
エンレストの副作用
主な副作用
- 低血圧:血圧の下がりすぎで「ふらつき」「めまい」が起こることがあります。
- 高カリウム血症:血液中のカリウム値が高くなることがあります。
- 腎機能障害:腎臓の数値(クレアチニン)が上がることがあります(特に利尿薬との併用例)。
副作用が出たときの対処法
重大な副作用として血管浮腫(顔や喉の腫れ)、ショック、失神、意識消失などが報告されています。
服用を始めてから「呼吸が苦しい」「喉が詰まる感じがする」「急に意識が遠のく」などの症状が出た場合は、緊急性が高いため、速やかに救急医療機関を受診してください。
「立ちくらみがひどい」「体がむくむ」「だるい」といった症状を感じた場合は、無理をせず医師に相談してください。血圧や腎機能の状態を確認しながら、薬の量を調整することで解決できる場合がほとんどです。
エンレストの注意事項(禁忌)
使用に注意が必要な方
服用してはいけない方(禁忌)
- 血管浮腫(顔や唇の腫れ)を起こしたことがある方(禁忌)
- 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある方(禁忌)
- 妊婦または妊娠している可能性がある方(禁忌)
※胎児への重大な悪影響が報告されています。 - 「ACE(エース)阻害薬」を飲んでいる方(禁忌)
※併用すると血管浮腫のリスクが高まるので、ACE阻害薬から切り替える場合は、必ず36時間以上の間隔をあける必要があります。 - アリスキレンを服用中の糖尿病患者の方(禁忌)
特に注意して使う方(慎重投与)
- 腎機能が低下している方
- 中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)などがある方
- 高齢者の方
服用に注意が必要な薬
- ACE阻害薬(エナラプリルなど): 絶対に一緒に飲んではいけません(併用禁忌)。
- ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬): エンレストには既にARB成分(バルサルタン)が含まれているため、他のARBと併用すべきではありません。
- カリウム保持性利尿薬、カリウム製剤: カリウム値が高くなりすぎる恐れがあります。
- NSAIDs(ロキソニンなどの痛み止め): エンレストの降圧効果が弱まったり、腎機能が悪化したりすることがあります。
- PDE5阻害薬(シルデナフィルなど): 血圧低下が強く出すぎる報告があります。
使用上の注意
| 定期的な検査 | 腎機能やカリウム値を確認するため、定期的な血液検査が必須です。 |
| 急な立ち上がり | 血圧が下がっていることがあるので、立ちくらみを防ぐためゆっくりと動くようにしましょう。 |
| 減塩の継続 | お薬に頼るだけでなく、食事の減塩も併せて行いましょう。 |
保管方法
湿気に弱いため、PTPシート(アルミの包装)から出さずに、直射日光を避けて保管してください。
飲み忘れたら?
- 気がついたときに1回分を飲んでください。
- ただし、次の服用時間が近い場合は1回とばして、次の時間に飲んでください。
- 2回分を一度に飲んではいけません。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、エンレストをはじめとしたお薬の処方も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

※心療内科ではシステム手数料をいただいております。
エンレストに市販薬はある?値段は?
市販薬
現在、エンレストと同じ成分の市販薬はありません。医師の専門的な判断が必要なお薬です。
ジェネリック
エンレストは比較的新しいお薬であるため、2026年2月現時点ではジェネリック医薬品(後発品)は発売されていません。
薬価
時期や薬局によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
| 薬剤名 | 区分 | 薬価(1錠/1個) | 3割負担の目安 |
|---|---|---|---|
| エンレスト錠50mg | 先発 | 60.9円 | 約18.27円 |
| エンレスト錠100mg | 先発 | 106.9円 | 約32.07円 |
| エンレスト錠200mg | 先発 | 188.2円 | 約56.46円 |
| エンレスト小児用錠12.5mg | 先発 | 21.4円 | 約6.42円 |
| エンレスト粒状錠小児用31.25mg | 先発 | 43.2円 | 約12.96円 |
※2026年2月現在。薬価は改定などで変わる可能性があります。
※これに診察料や調剤料などが加算されます。
添付文書
エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg/エンレスト粒状錠小児用12.5mg/エンレスト粒状錠小児用31.25mg
よくある質問(FAQ)
Q.妊婦・授乳中でも使えますか?
妊婦さんは服用できません。胎児に悪影響を及ぼす恐れがあるためです。服用中に妊娠が判明した場合は、すぐに医師に相談してください。
Q.子どもでも使えますか?
はい、使えます。 以前は大人用のみでしたが、現在は「小児の慢性心不全」への適応が認められており、1歳以上の小さなお子様から使用可能です。体重に合わせた適切な量を医師が処方します。
Q.飲むと眠くなりますか?運転はできますか?
めまいやふらつきが起こることがあるため、お薬に慣れるまでは車の運転や高い所での作業には十分注意してください。
Q.いつから効き始めますか?
服用から数時間で血圧を下げる効果は現れますが、心不全の治療効果(心臓の保護)を実感するには、数週間から数ヶ月の継続が必要です。
Q.お酒(アルコール)を飲んでもいいですか?
お酒は血管を広げるため、エンレストと合わせると血圧が下がりすぎてしまうことがあります。また、心臓への負担を考えるとお酒は控えめにするのが望ましいです。
まとめ
エンレストは、心臓の負担を減らすだけでなく、心臓を守る力を引き出してくれる「心不全治療の要」となるお薬です。少しずつ量を調整しながら、あなたの心臓に最適なバランスを見つけていくことが大切です。
「心不全の治療を続けたいけれど、通院が大変」
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そんなときは、ウチカラクリニックのオンライン診療が便利です。
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