
健康診断で「中性脂肪が高いですね」「悪玉コレステロールもちょっと…」なんて言われて、ドキッとした経験はありませんか?放っておくと動脈硬化の原因にもなる脂質異常症。
そんなとき、お医者さんから「フェノフィブラート(リピディル、トライコアなど)」というお薬が処方されることがあります。「どんなお薬なんだろう?」「副作用は大丈夫?」「飲むと痩せるの?」など、気になることも多いですよね。
この記事では、主に血液中の中性脂肪を下げ、コレステロールも改善するお薬「フェノフィブラート」について、その働きから副作用、正しい飲み方まで、薬剤師が優しく解説します。
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フェノフィブラートとは?
フェノフィブラートは、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)を主に下げる効果があり、同時に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を少し減らし、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす効果も期待できる、医療用医薬品の飲み薬です。
「フェノフィブラート」は有効成分の一般名(成分名)で、「リピディル」や「トライコア」などの商品名でも知られています。
このお薬は、「フィブラート系薬剤」と呼ばれるグループに属しています。主に肝臓に働きかけて、脂質の代謝を活発にすることで、血液中の脂質のバランスを整えてくれます。
食事療法や運動療法だけでは十分に中性脂肪やコレステロールの値が下がらない場合に、医師の判断で処方されます。動脈硬化の進行を抑え、心筋梗塞や脳梗塞といった病気のリスクを減らすことが治療の大きな目的です。
フェノフィブラートの成分
フェノフィブラートの主役は、その名の通り「フェノフィブラート」という成分です。
では、このフェノフィブラートは、私たちの体の中でどんな風に働いて、中性脂肪やコレステロールを下げてくれるのでしょうか?
①脂質代謝のスイッチをオン
私たちの体の細胞の中には、「PPARα(ピーピーエーアールアルファ)」という、脂質の代謝(作ったり分解したりすること)をコントロールする大切な“スイッチ”のようなものがあります。フェノフィブラートは、このPPARαスイッチを活性化します。
②中性脂肪の分解をスピードアップ!善玉コレステロールを増やす!
PPARαスイッチがオンになると、肝臓などで中性脂肪を分解する酵素がたくさん作られたり、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を作るタンパク質が増えたりします。その結果、血液中の中性脂肪が減り、善玉コレステロールが増えるのです。
③悪玉コレステロールも少し減らすお手伝い
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)に対しても、少しですが下げる効果が期待できます。
このように、フェノフィブラートは、脂質代謝の司令塔とも言えるPPARαを活性化することで、血液中の脂質のバランスを良い方向に導いてくれます。
フェノフィブラートの効果
- 血液中の中性脂肪(トリグリセリド)値を下げる(特にこの効果が高いです)
- 血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を下げる
- 血液中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)値を上げる
- これらの作用により、動脈硬化の進行を抑え、心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクを低減する
食事療法や運動療法と合わせて行うことで、より効果的な脂質管理が期待できます。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
- 高脂血症(脂質異常症)
- 特に、高中性脂肪血症(トリグリセリドが高いタイプ)
- 高コレステロール血症(LDLコレステロールが高いタイプ)
- 混合型高脂血症(中性脂肪とLDLコレステロールの両方が高いタイプ)
これらの病気は、自覚症状がほとんどないまま進行し、動脈硬化を進めてしまうことがあります。フェノフィブラートは、そうしたサイレントキラーから体を守るためのお薬なのです。
フェノフィブラートの種類
ユフェノフィブラートのお薬には、吸収を良くするために工夫された製剤(マイクロ化製剤など)があり、主に錠剤やカプセル剤として供給されています。 有効成分「フェノフィブラート」の含まれる量が異なる、いくつかの規格があります。
- フェノフィブラート錠・カプセル 53.3mg、67mg、80mg、100mg、106.6mgなど
(先発医薬品の「リピディル®」や「トライコア®」とそのジェネリック医薬品で、様々な規格があります。)
医師が患者さんの脂質の値や体の状態、腎臓や肝臓の機能などを総合的に判断して、適切な規格と量を調整して処方します。通常は標準的な量から開始することが多いです。
フェノフィブラートの使い方(用法・用量)
通常、1日1回、食後に服用します。服用する量は、製剤の種類、年齢や症状によりによって異なりますが、例えばフェノフィブラートとして1日100mg~150mg程度(マイクロ化製剤の場合)となることが多いです。
フェノフィブラートは、食事と一緒に摂ることで吸収が良くなり、効果が高まるとされています。飲み忘れを防ぐためにも、毎日決まった食後に飲む習慣をつけましょう。
コレステロール値は目に見えないため、自己判断は禁物です。急にやめるとコレステロール値が元に戻ってしまうことがあります。また、治療の経過を正確に判断するためにも定期的な血液検査を受けましょう。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、フェノフィブラートの処方や高脂血症などの生活習慣病の治療も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

フェノフィブラートの副作用
どんなお薬にも副作用の可能性はありますが、フェノフィブラートも例外ではありません。比較的副作用が少ないお薬とされていますが、特に注意すべきものもあります。
主な副作用
比較的よくみられる副作用
- 肝機能障害(AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇など): 血液検査で分かるもので、自覚症状がないことも多いです。これが比較的注意が必要な副作用の一つです。
- 消化器症状(胃の不快感、吐き気、腹痛、便秘、下痢など)
- 筋肉に関連する症状(筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇など): まれですが、注意が必要です。
- 皮膚症状(発疹、かゆみなど)
- 胆石ができやすくなる可能性: 長期服用で報告があります。
まれだけど注意が必要な重篤な副作用
- 横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう): 筋肉の細胞が急激に壊れてしまう重い副作用です。突然の激しい筋肉痛、手足の力が入らない、手足のしびれ、赤褐色尿(コーラのような色の尿)などが現れた場合は、直ちに服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。 特に腎臓の悪い方や、スタチン系薬剤と併用している場合に注意が必要です。
- 重篤な肝機能障害、黄疸: 全身倦怠感、食欲不振、吐き気、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 膵炎(すいえん): 激しい腹痛、背中の痛み、吐き気などが現れます。
- 間質性肺炎: 空咳、息切れ、呼吸困難、発熱などが現れます。
- 血栓塞栓症(肺塞栓症、深部静脈血栓症など): 足の痛みや腫れ、突然の息切れ、胸の痛みなどが現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
副作用が出たときの対処法
原因不明の筋肉痛、脱力感、赤褐色尿などが現れたら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。 横紋筋融解症の初期サインかもしれません。
肝機能障害の早期発見のために定期的な血液検査が重要です。 自覚症状がなくても、指示された検査は必ず受けましょう。
皮膚症状、消化器症状などが気になる場合は、医師や薬剤師に相談してください。その他の重篤な副作用のサインに気づいたら、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
フェノフィブラートの注意事項・禁忌
使ってはいけない方
絶対に使ってはいけない方(禁忌)
- 本剤の成分(フェノフィブラート)に対し過敏症(アレルギー)の既往歴のある方
- 肝臓の重い病気のある方
- 腎臓の重い病気のある方(特に透析を受けている方など)
- 胆のうの病気のある方(胆石のある方など): 胆石を悪化させる可能性があります。
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の方
使うときに特に注意が必要な方
- 肝臓や腎臓の機能が少し低下している方(上記禁忌に該当しない場合)
- 横紋筋融解症の危険因子(甲状腺機能低下症、遺伝性の筋疾患、薬剤性の筋障害の既往歴、アルコール多飲など)を持つ方
- 高齢者の方: 腎機能が低下していることが多く、筋肉系の副作用が出やすいため、慎重な投与が必要です。
- お子さん(小児)
併用に注意が必要な薬
- HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤:ロスバスタチン、アトルバスタチンなど): 横紋筋融解症のリスクが高まるため、併用する場合は特に慎重な経過観察が必要です。
- 抗凝固薬(ワーファリンなど): ワーファリンの作用を強め、出血のリスクを高めることがあります。併用する場合は、血液凝固能検査(PT-INRなど)を頻繁に行い、ワーファリンの量を調整する必要があります。
- シクロスポリン(免疫抑制剤): 腎機能障害のリスクを高めることがあります。
- 陰イオン交換樹脂(コレスチラミンなど、他の脂質異常症治療薬): フェノフィブラートの吸収を妨げる可能性があるため、服用時間をずらす(通常、陰イオン交換樹脂の服用前1時間または服用後4~6時間以上あける)必要があります。
上記以外にも注意が必要な場合があります。他に飲んでいるお薬やサプリメントがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えましょう。
使用上の注意
ポイント | 具体的な内容 |
---|---|
定期的な血液検査 | 脂質・肝機能・腎機能・CK値(筋肉の酵素)などを忘れずチェック。 |
筋肉症状に注意 | 筋肉痛・脱力感・赤褐色尿などが出たら直ちに医師へ。 |
食事&運動療法 | 薬は治療の柱の一つ。バランス食と適度な運動を続けましょう。 |
アルコール控えめ | 中性脂肪を上げやすく、肝臓への負担も。飲み過ぎに注意。 |
自己判断で中止しない | 急にやめると脂質値が元に戻りやすいので、変更は必ず医師と相談。 |
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
- 子どもの手の届かない場所に置いてください。
飲み忘れたら?
飲み忘れたことに気づいたら、できるだけ早く1回分を飲んでください。
ただし、次に飲む時間が近い場合は(例えば、1日1回服用の場合で、次の服用まで8時間以内など)、忘れた分は飲まずに、次の時間に1回分だけ飲みましょう。絶対に2回分をいっぺんに飲んではいけませんよ。
フェノフィブラートに市販薬はある?値段は?
市販薬
医療用の「フェノフィブラート」と全く同じ有効成分「フェノフィブラート」を含む市販薬は、現在のところありません。
コレステロール値が高いと指摘された場合は、自己判断で市販薬やサプリメントに頼るのではなく、必ず医療機関を受診して、専門医に相談するようにしてください。
ジェネリック名
先発医薬品の名前は「リピディル」です。
その後発品が「トライコア」で、いまはさらにそのジェネリック(後発品)として、「フェノフィブラート錠「〇〇」」(〇〇には製薬会社名が入ります)が販売されています。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- リピディル錠50mg(先発医薬品): 1錠あたり 約15~20円程度
- トライコア錠53.3mg(先発医薬品): 1錠あたり 約20~25円程度
- フェノフィブラート錠50mg「〇〇」(ジェネリック医薬品): 1錠あたり 約8~15円程度
- フェノフィブラート錠80mg「〇〇」(ジェネリック医薬品): 1錠あたり 約10~20円程度
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
フェノフィブラート錠53.3mg「武田テバ」/フェノフィブラート錠80mg「武田テバ」
フェノフィブラートカプセル67mg「KTB」/フェノフィブラートカプセル100mg「KTB」
よくある質問(FAQ)
Q. フェノフィブラートは、どんな脂質異常症に特に効果がありますか?
フェノフィブラートは、特に血液中の中性脂肪(トリグリセリド)が高いタイプの脂質異常症(高中性脂肪血症)に優れた効果を発揮します。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を下げる効果や善玉コレステロール(HDLコレステロール)を上げる効果も併せ持っています。
Q. 妊娠中や授乳中でも飲めますか?赤ちゃんへの影響は?
絶対にダメです。フェノフィブラートは、妊娠中または妊娠している可能性のある女性、そして授乳中の方は服用できません(禁忌です)。 動物実験で胎児への悪影響が報告されており、また母乳中に移行する可能性も否定できません。
Q. 子供でも飲めますか?
フェノフィブラートは、小児等(通常15歳未満)に対する有効性および安全性は確立されていません。 そのため、お子さんの脂質異常症に対しては、原則として処方されません。
Q. フェノフィブラートを飲んだら運転しても大丈夫?
フェノフィブラートの副作用として、まれにめまいや眠気、しびれ感などが現れることがあります。もし、これらの症状が出た場合は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作、高所での作業などは避けるようにしてください。 服用を開始して間もない時期や、体調に変化を感じたときは特に注意が必要です。
Q. フェノフィブラートは飲んでからどのくらいで効き始めますか?
フェノフィブラートは、飲んですぐに脂質の数値が劇的に下がるわけではありません。毎日コツコツと飲み続けることで、徐々に血液中の中性脂肪やコレステロールの値が改善していきます。効果を実感できる(脂質の数値が目標値まで下がる)までには個人差がありますが、一般的には飲み始めてから数週間~2ヶ月程度で効果が現れ始めることが多いと言われています。定期的な血液検査で効果を確認しながら、医師が服用量を調整していきます。
Q. フェノフィブラートを飲んでいるときにお酒を飲んでも大丈夫?
フェノフィブラートとお酒(アルコール)の間に、直接的な相互作用はあまり報告されていません。しかし、アルコールの飲みすぎは中性脂肪を上げる原因になったり、肝臓に負担をかけたりするため、コレステロールや中性脂肪が高い方は、お薬を飲んでいるかどうかにかかわらず、アルコールの摂取は控えるか、適量を守ることが大切です。特に肝機能に注意が必要なフェノフィブラートですので、飲みすぎは禁物です。
Q.「フェノフィブラートを飲むと痩せる」って聞いたけど本当ですか?
フェノフィブラートに直接的な痩身効果(体重を減らす効果)は期待できません。 このお薬は、あくまで血液中の脂質のバランスを整えるものです。副作用として、まれに食欲不振や胃腸障害が起こり、結果的に体重が少し減るという可能性は否定できませんが、それは健康的な痩せ方ではありません。
Q. フェノフィブラートをスタチン系のお薬と一緒に飲んでも大丈夫?
フェノフィブラートとスタチン系薬剤(コレステロールを下げる別タイプのお薬)を一緒に使うと、どちらも筋肉への副作用(横紋筋融解症など)のリスクがあるため、そのリスクがさらに高まる可能性があります。そのため、医師は患者さんの状態を慎重に判断し、本当に併用が必要な場合に限り、定期的な検査(CK値など)を行いながら慎重に投与します。自己判断での併用は絶対に避け、必ず医師の指示に従ってください。
Q. フェノフィブラートを飲むのをやめたいときはどうすればいいですか?
脂質の数値が改善したからといって、自己判断でフェノフィブラートの服用を中止するのはやめましょう。 中止すると、脂質の数値が再び上昇してしまう可能性があります。お薬の量を減らしたり、中止したりする場合は、必ず医師と相談し、定期的な検査を受けながら慎重に行う必要があります。
まとめ
今回は、主に血液中の中性脂肪を下げ、コレステロールも改善するお薬「フェノフィブラート(リピディル、トライコアなど)」について、詳しく見てきました。
フェノフィブラートは、「フィブラート系薬剤」というグループの頼れるお薬で、肝臓での脂質代謝を活発にすることで、血液の脂質バランスを整えてくれます。動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞といった怖い病気から私たちを守るために、とても大切な役割を果たしてくれるお薬です。
でも、効果が高いお薬だからこそ、副作用や飲み合わせ、生活上の注意点など、知っておくべきこともあります。特に、筋肉の症状(横紋筋融解症のサインかも?)、肝機能のチェック、そして妊娠中・授乳中の服用は絶対に避けることは、しっかり覚えておいてくださいね。
一番大切なのは、医師や薬剤師の指示通りに正しく服用し、定期的な検査を受け、そしてお薬だけに頼らず、食事や運動といった生活習慣の改善も一緒に行うこと。 これが、フェノフィブラートと上手に付き合い、脂質の値を良好にコントロールするための秘訣です。
この記事が、フェノフィブラートというお薬に対するあなたの「?」を、少しでも「!」に変えるお手伝いができたなら、こんなに嬉しいことはありません。あなたの未来が、サラサラ血液で、もっともっと輝きますように。どうぞお大事にしてくださいね。
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