
「ズキン!またあのイヤな片頭痛が来た…」「吐き気がひどくて、もう立っていられない…」そんな、片頭痛の激しい発作は、経験した人にしか分からない、本当につらいものですよね。
そんなとき、お医者さんから「イミグラン」というお薬が処方されることがあります。「イミグランって、どんなお薬なの?」「本当に効くの?」「副作用が心配…」など、たくさんの疑問や不安を感じるかもしれません。
この記事では、片頭痛発作の治療に使われる代表的なお薬「イミグラン」について、その正体から効果、副作用、そして何よりも大切な正しい使い方や注意点を、医師がとことん優しく、そして分かりやすく解説します!イミグランと上手に付き合って、つらい片頭痛の発作を乗り切りましょう。
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イミグランとは?効果は?
イミグランは、つらい片頭痛発作が起きたときに、その症状を和らげるために使われる薬です。
主成分は「スマトリプタンコハク酸塩」といい、これは「トリプタン系薬剤」と呼ばれるグループの、いわば「元祖」とも言えるお薬の一つです。
「トリプタン系薬剤」は、片頭痛の特効薬として知られ、痛みが始まってしまってからでも効果が期待できるのが大きな特徴です。ただし、とても大切なことですが、イミグランは片頭痛を予防するお薬ではありません。 あくまで、発作が起きてしまったときの「救援投手」のようなお薬だと覚えておいてくださいね。
イミグランの成分
イミグランの主役は、「スマトリプタンコハク酸塩」という成分です。
では、このスマトリプタンは、私たちの体の中でどんな風に働いて、あのガンコな片頭痛発作を鎮めてくれるのでしょうか?少し専門的になりますが、できるだけ分かりやすく説明しますね。
①広がりすぎた血管を、元のサイズに戻すお手伝い!
片頭痛が起きているとき、頭の中の一部の血管が普段よりも大きく広がって(拡張して)しまい、それがズキンズキンという脈打つような痛みの大きな原因になると考えられています。スマトリプタンは、この拡張してしまった血管にある特定の「キャッチする部分」(セロトニン1B/1D受容体といいます)にくっついて、血管をキュッと収縮させ、正常な太さに戻すように働きかけます。
②「痛みの信号」を出すのをストップ!
血管が広がると、その周りの神経(三叉神経といいます)から、さらに炎症や痛みを引き起こす物質(神経ペプチドなど)が放出されてしまいます。スマトリプタンは、この神経からの「痛みの信号」の放出も抑えてくれる働きがあります。
つまり、イミグランは、片頭痛発作のときに頭の中で起きている「血管の異常な広がり」と「痛みの原因物質の放出」という2つの困った状況にアプローチして、つらい症状を和らげてくれるのです。
イミグランの効果
- 片頭痛によるズキンズキンとした拍動性の頭痛を和らげる
- 片頭痛に伴う吐き気、嘔吐、光過敏(光がまぶしく感じる)、音過敏(音がうるさく感じる)などの症状を軽くする
片頭痛発作の初期(「痛い!」と感じ始めてからできるだけ早い段階)に飲むことで、より高い効果が期待できます。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
イミグランは、片頭痛の発作時にのみ使用されます。
「頭痛なら何でも効くの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
緊張型頭痛など、他のタイプの頭痛には効果がありませんし、むしろ症状を悪化させてしまう可能性も否定できません。必ず、医師から「あなたの頭痛は片頭痛です」と診断された上で処方してもらうお薬です。
イミグランの種類
イミグランには、患者さんの状態や好みに合わせて選べるように、いくつかのタイプ(剤形)があります。有効成分は同じ「スマトリプタンコハク酸塩」ですが、使い方や効果の現れ方が少しずつ異なります。
イミグラン錠50mg(飲み薬)
一般的な錠剤タイプです。水やぬるま湯で服用します。トリプタン系薬剤の基本的な剤形です。
イミグラン点鼻液20(鼻スプレー)
鼻の中にシュッとスプレーして使うタイプです。飲み薬が飲みにくい方(吐き気が強いときなど)や、より速やかな効果を期待したい場合に選ばれることがあります。薬の成分が鼻の粘膜から吸収されます。独特の苦味を感じることがあります。
イミグラン皮下注3mgキット/イミグラン皮下注3mg(注射剤)
患者さん自身が、太ももやお腹などに自分で注射するタイプのお薬です(自己注射)。最も速く効果が現れるのが特徴で、急激でひどい片頭痛発作や、飲み薬や点鼻薬では効果が不十分な場合に用いられます。
イミグランの使い方(用法・用量)
イミグランを飲む量やタイミングは、片頭痛発作を効果的に抑えるために非常に重要です。必ず医師や薬剤師の指示に従って服用してくださいね。
イミグラン錠50mg
片頭痛の発作が起こったら、できるだけ早く1回1錠(スマトリプタンとして50mg)を服用します。
片頭痛の予兆(きらきらした光が見えるなど)の段階で飲んでも、十分な効果が得られないことがあります。「痛くなりそう…」ではなく、「痛い!」と感じ始めてから服用するのが基本です。
効果が不十分な場合は、最初の服用から2時間以上の間隔をあけて、追加で1錠服用することができます。ただし、1日に服用できる最大量は4錠(スマトリプタンとして200mg)です。これを超えて飲んではいけません。
イミグラン点鼻液20
片頭痛の発作が起こったら、できるだけ早く1回1容器(スマトリプタンとして20mg)を片方の鼻腔に噴霧します。
使用前に鼻をかんでおくと、薬の吸収が良くなることがあります。片方の鼻腔にしっかり噴霧し、噴霧後は鼻からゆっくり息を吸い込み、数秒間鼻呼吸をすると良いでしょう。
効果が不十分な場合は、最初の投与から2時間以上の間隔をあけて、追加で1容器投与することができます。ただし、1日に投与できる最大量は2容器(スマトリプタンとして40mg)までです。
イミグラン皮下注3mgキット/イミグラン皮下注3mg
片頭痛の発作が起こったら、できるだけ早く1回1キットまたはシリンジ(スマトリプタンとして3mg)を皮下注射します。
効果が不十分な場合は、最初の投与から1時間以上の間隔をあけて、追加で1キットまたはシリンジ投与することができます。ただし、1日に投与できる最大量は2キットまたは2シリンジ(スマトリプタンとして6mg)までです。
必ず医師や看護師から正しい自己注射の手技について十分な指導を受け、理解してから使用してください。注射部位は毎回少しずらすようにしましょう。
どの剤形も、片頭痛の予防のために、発作がないときに使うお薬ではありません。 あくまで発作が起きたときの頓服薬(とんぷくやく)です。
イミグランの副作用
主な副作用
比較的よくみられる副作用
- 感覚の異常(チクチク感、ピリピリ感、温感、冷感など)
- 倦怠感、眠気、めまい、ふらつき感
- 吐き気、嘔吐、口の渇き
- 圧迫感や締め付けられる感じ、重苦しさ(胸部、のど、首、頭部など): これは「トリプタンフィーリング」とも呼ばれ、トリプタン系薬剤に特有の副作用の一つです。多くは一時的で心配ないことが多いですが、症状が強い場合や続く場合は医師に相談しましょう。
- 点鼻液の場合: 鼻の不快感、刺激感、鼻血、味覚異常(苦味など)
- 注射剤の場合: 注射部位の痛み、赤み、腫れ、熱感など
ごくまれだけど注意が必要な重篤な副作用
- アナフィラキシーショック、アナフィラキシー: 息苦しさ、じんましん、顔面蒼白、血圧低下など
- 不整脈、狭心症、心筋梗塞などの心血管系の障害: もともと心臓に病気がある方やリスクの高い方は特に注意が必要です。
- てんかん様発作
- 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛): イミグランを月に10日以上など、頻繁に使いすぎると、かえって頭痛がひどくなったり、毎日続くようになったりすることがあります。
副作用が出たときの対処法
- 眠気やめまい: イミグランを飲んだ後は、自動車の運転や危険な機械の操作は避けましょう。
- 圧迫感や締め付けられる感じ: 症状が軽い場合は様子を見ることが多いですが、つらい場合や初めて経験する場合は医師に相談してください。
いつもと違う体調の変化を感じたり、副作用が長引いたりする場合や重篤な副作用のサインに気づいたら、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
イミグランの注意事項・禁忌
使ってはいけない方
絶対に使ってはいけない方(禁忌)
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 心筋梗塞の既往歴のある患者、虚血性心疾患またはその症状・兆候のある患者、異型狭心症(冠動脈攣縮)のある患者
- 脳血管障害や一過性脳虚血発作の既往のある患者
- 末梢血管障害を有する患者
- コントロールされていない高血圧症の患者
- 重度の肝機能障害または腎機能障害のある患者
- エルゴタミン製剤(カフェルゴットなど)、他のトリプタン系薬剤(マクサルト、ゾーミッグ、レルパックス、アマージなど)を服用中の方: 血管収縮作用が強まりすぎるため、併用は絶対にできません。
- MAO阻害剤(モノアミン酸化酵素阻害剤:一部の抗うつ薬やパーキンソン病治療薬)を服用中の方、または中止して2週間以内の方
使うときに特に注意が必要な方
- 虚血性心疾患の危険因子(高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、肥満、喫煙、閉経後の女性、40歳以上の男性、家族歴など)を持つ方: 初めて服用する際は、医師の慎重な判断が必要です。
- てんかんのある方、またはけいれんを起こしやすい方
- 肝臓や腎臓の機能が軽度~中等度に低下している方
- 高齢者、妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方、小児等
併用に注意が必要な薬
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:一部の抗うつ薬など)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:一部の抗うつ薬など): まれにセロトニン症候群という副作用が起こる可能性があります。
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品: イミグランの作用が強まる可能性があります。
他の薬を飲んでいる場合は、必ず医師や薬剤師に伝えて確認してもらいましょう。
使用上の注意
自己判断で「これは片頭痛だ」と思い込んでイミグランを希望するのは危険です。 医師の診断を受け、用法容量を守って使用しましょう。効果がないからと増やしてはいけません。
副作用として眠気やめまいが出る場合があるので、服用後は自動車の運転や危険な作業は避けましょう。
効果が不十分、月に何度も使用している場合は薬物乱用頭痛を起こす可能性があるので、他の治療法を検討する必要があります。
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
- 子どもの手の届かない場所に置いてください。
飲み忘れたら?
イミグランは、片頭痛発作が起きたときに飲むお薬なので、「飲み忘れる」という概念は基本的にありません。
もし、飲みそびれてしまってから時間が経ってしまった場合でも、頭痛が続いていれば服用できます(ただし、1日の上限量や服用間隔は守ってください)。
イミグランに市販薬はある?値段は?
市販薬
「イミグラン」と同じ有効成分「スマトリプタンコハク酸塩」を含む市販薬は、現在のところありません。
薬局やドラッグストアで販売されている頭痛薬は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどを主成分とするものが一般的で、リザトリプタンとは作用の仕方が異なります。
片頭痛の症状がひどい場合は、自己判断で市販薬を使い続けずに、まずは医療機関を受診して相談しましょう。
ジェネリック名
イミグランの有効成分「スマトリプタンコハク酸塩」を含むジェネリック医薬品(後発医薬品)も、錠剤、点鼻液、注射剤の各剤形で販売されています。
「スマトリプタン錠「〇〇」」や「スマトリプタン点鼻液「〇〇」」、「スマトリプタン皮下注「〇〇」オートインジェクター」(〇〇には製薬会社名が入ります)といった名称で、一般的にイミグランよりも薬価が安価なことが多いです。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- イミグラン錠50mg: 1錠あたり 約280~330円程度
- イミグラン点鼻液20: 1容器(1回分)あたり 約700~800円程度
- イミグラン皮下注3mgキット: 1キット(1回分)あたり 約2,800~3,000円程度
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
よくある質問(FAQ)
Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ使用されます。自己判断での使用は絶対に避け、必ず医師に相談してください。授乳中もイミグランの成分が母乳中に移行することが報告されています。服用する場合は授乳を避けるか、医師に相談して指示に従ってください。
Q. 小児でも使える?
イミグランは、現在のところ小児等(15歳未満)に対する有効性および安全性は確立されていません。 そのため、お子さんの片頭痛に対しては、原則として処方されません。
Q. イミグランを飲んだら運転しても大丈夫?
イミグランを服用すると、副作用として眠気やめまい、ふらつきなどが現れることがあります。そのため、イミグランを飲んだ後は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるようにしてください。
Q. イミグランは使ってからどのくらいで効き始めますか?剤形によって違いますか?
効果が現れるまでの時間には個人差がありますが、一般的に以下のように言われています。
①皮下注射: 最も速く、約10~15分程度で効果が現れ始めます。
②点鼻液: 約15~30分程度で効果が現れ始めます。
③錠剤: 約30分~1時間程度で効果を感じ始めることが多いです。
片頭痛発作の初期に使うことで、よりスムーズな効果が期待できます。
Q. イミグランを飲んでいるときにお酒を飲んでも大丈夫?
イミグランとお酒(アルコール)の間に、特に重大な相互作用(悪い影響)は報告されていません。しかし、アルコール自体が片頭痛の誘因となることがありますし、イミグランの副作用である眠気やめまいを強めてしまう可能性も考えられます。
Q. イミグランが効かない場合はどうすればいいですか?
イミグランを1回使っても効果がない場合、用法用量の範囲内であれば追加で使うことができます。それでも効果がない、あるいは効果が不十分な場合は、自己判断でさらに追加したりせず、医師に相談しましょう。他のトリプタン系薬剤への変更や、別の系統の治療薬の追加などを検討してくれます。
Q. イミグランは毎日使ってもいいですか?予防にもなりますか?
いいえ、イミグランは片頭痛発作が起きたときにだけ使うお薬で、毎日使うお薬ではありません。また、片頭痛を予防する効果もありません。 頻繁に(例えば月に10日以上)イミグランのような急性期治療薬を使いすぎると、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」といって、かえって頭痛が悪化したり、ほぼ毎日頭痛が続くようになったりすることがあります。片頭痛の頻度が多い場合は、予防療法(毎日お薬を飲むことで発作を起こりにくくする治療)を検討する必要があるので、必ず医師に相談してください。
Q. 点鼻液の使い方のコツはありますか?苦いのが苦手です…
点鼻液は、片方の鼻の穴に容器の先を少し入れ、頭を少し傾けて息を止め、シュッと1回噴霧します。噴霧後は、鼻からゆっくり息を吸い込み、数秒間鼻呼吸をすると薬液が鼻の奥に広がりやすくなります。苦味を感じることがありますが、これは薬液が喉に流れるためです。しばらくすると治まることが多いですが、気になる場合は少量の水でうがいをしても良いでしょう。
Q. イミグランはどんなタイプの頭痛にも効くの?
いいえ、イミグランは片頭痛の発作に特化したお薬です。緊張型頭痛など、他のタイプの頭痛には効果がありません。必ず医師の診断を受けてから使用してください。
まとめ
今回は、片頭痛発作のつらい症状を和らげてくれる代表的なお薬「イミグラン(錠・点鼻液・皮下注射)」について、詳しく見てきました。
イミグランは、「トリプタン系薬剤」というグループのお薬で、片頭痛発作が起きたときに、拡張した頭の血管を収縮させたり、痛みの原因物質を抑えたりすることで、ズキンズキンとした頭痛や吐き気などの不快な症状を改善してくれます。錠剤だけでなく、速効性が期待できる点鼻液や皮下注射といった剤形があるのも大きな特徴ですね。
でも、効果的なお薬だからこそ、使い方にはいくつかの大切なポイントがあります。一番大切なのは、医師の診断のもとで処方してもらい、指示された用法用量や剤形ごとの使い方をきちんと守ること。そして、片頭痛発作が起きたときにだけ使い、予防のためには使わないこと。使いすぎにも注意が必要です。
この記事が、イミグランに対する皆さんの疑問や不安を少しでも軽くして、医師とよく相談しながら、安心して適切な治療に取り組むためのお手伝いができれば、心から嬉しいです。つらい片頭痛発作の回数が少しでも減り、穏やかな日々が戻ってきますように。どうぞお大事になさってくださいね。
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