
「人前で話すとき、心臓がバクバクして声が震えちゃう…」「血圧が高めだって言われたけど、どんなお薬があるの?」「片頭痛の回数を減らしたいな…」
そんな、さまざまなお悩みに対して、お医者さんから「インデラル」というお薬が処方されることがあります。「インデラルって、どんなお薬なんだろう?」「あがり症にも効くって本当?」「副作用は大丈夫?」など、たくさんの疑問や不安を感じるかもしれませんね。
この記事では、心臓の働きを穏やかにしたり、血管を広げたりする作用のあるお薬「インデラル」について、その正体から幅広い効果、副作用、そして何よりも大切な正しい飲み方や注意点を、医師がとことん優しく、そして分かりやすく解説します!インデラルと上手に付き合って、つらい症状をコントロールし、穏やかな毎日を目指しましょう。
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インデラルとは?効果は?
インデラルは、心臓の拍動をゆっくりさせたり、血圧を下げたり、血管の過度な収縮を抑えたりする効果がある、飲み薬です。主成分は「プロプラノロール塩酸塩」といい、これは「β(ベータ)遮断薬」と呼ばれるグループに属する、古くから使われている実績のあるお薬です。
「β遮断薬」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、これは私たちの体の中にある「交感神経」という、興奮や緊張に関わる神経の働きを、適度にブロック(遮断)してくれるお薬のことです。
インデラルの成分
インデラルの主役は、「プロプラノロール塩酸塩」という成分です。
では、このプロプラノロールは、私たちの体の中でどんな風に働いて、ドキドキや高血圧、片頭痛などを和らげてくれるのでしょうか? そのカギは「β(ベータ)受容体」という、体の中の“スイッチ”のようなものにあります。
①心臓のドキドキをスローダウン
私たちの心臓には、「β1受容体」というスイッチがたくさんあります。交感神経が興奮すると、このスイッチがオンになり、心臓はドキドキと速く強く拍動します。プロプラノロールは、このβ1受容体をブロックして、スイッチがオンになりにくくします。その結果、心臓の拍動がゆっくりになり、1回の拍動で送り出す血液の量も少し減るので、血圧が下がったり、心臓の負担が軽くなったりします。
②血管の緊張をゆるめるお手伝い
血管にもβ受容体(主にβ2受容体)があり、これが刺激されると血管が広がります。プロプラノロールはβ1だけでなくβ2受容体もブロックするため、理論的には血管が収縮しやすくなるのでは?と思われがちですが、実際には他のメカニズムも関わって、長期的には血管の抵抗を下げ、血圧を下げる効果に繋がると考えられています。
③片頭痛予防
片頭痛の予防効果については、脳の血管にあるβ受容体をブロックすることで血管の過度な拡張を抑えたり、セロトニンという神経伝達物質の働きに関わったりすることで、発作が起きにくくなると考えられていますが、まだ完全には解明されていません。
④あがり症のドキドキに
人前で緊張すると交感神経が活発になり、心臓がドキドキしたり、手が震えたりしますよね。プロプラノロールは、この交感神経の過剰な働きを心臓などでブロックすることで、身体的な緊張症状を和らげてくれます。
このように、インデラル(プロプラノロール)は、主に心臓にあるβ1受容体をブロックすることで、その多彩な効果を発揮するのです。
インデラルの効果
- 血圧を下げる(高血圧症)
- 狭心症の発作を予防する、症状を和らげる
- 頻脈性の不整脈(脈が速くなるタイプの不整脈)を整える
- 片頭痛発作の回数を減らす、症状を軽くする(予防効果)
- あがり症(社交不安障害)に伴う動悸、手の震え、声の震えなどの身体症状を和らげる
- 甲状腺機能亢進症に伴う頻脈
片頭痛に関しては、発作が起きてしまったときの痛みをすぐに取るお薬ではなく、あくまで「発作を起こりにくくするためのお薬(予防薬)」であるという点は大切なので覚えておいてくださいね。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
- 本態性高血圧症(軽症~中等症)、腎性高血圧症
- 狭心症
- 頻脈性不整脈(洞性頻脈、期外収縮など)
- 片頭痛発作の発症抑制
- 褐色細胞腫の手術時
- (適応外使用として)あがり症(社交不安障害)に伴う身体症状の緩和
特に、片頭痛の予防やあがり症の症状緩和については、本来の適応症とは異なる使い方(適応外使用)として、医師の判断のもとで使われることがあります。
インデラルの使い方(用法・用量)
インデラルを飲む量や回数は、治療する病気の種類、年齢、症状の重さなどによって、一人ひとり細かく調整されます。必ず医師や薬剤師の指示に従って服用してくださいね。
- 高血圧症: 通常、1日30~60mgを2~3回に分けて服用開始し、効果を見ながら徐々に増減します。維持量は1日60~120mgとされることが多いです。
- 狭心症・不整脈: 通常、1日30mgを3回に分けて服用開始し、効果を見ながら徐々に増減します。
- 片頭痛発作の予防: 通常、1日20~30mgを2~3回に分けて服用開始し、効果を見ながら1日60mgまで増量されることがあります。
- あがり症(適応外使用): プレゼンテーションやスピーチなどの約1時間前に、1回5mg~10mg程度を頓服的に服用することが多いですが、これは医師の指示によります。
急にやめると、症状が悪化したり、リバウンド現象(血圧の急上昇や狭心症発作など)が起こったりする危険性があります。毎日、指示された通りにコツコツと飲み続けることが大切です(特に高血圧や片頭痛予防の場合)。
不整脈・狭心症の治療剤として注射タイプの薬も存在しています。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、インデラルの処方や片頭痛、あがり症、高血圧などの治療も行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

インデラルの副作用
主な副作用
比較的よくみられる副作用
- 徐脈(脈がゆっくりになりすぎる)、めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 倦怠感、脱力感、眠気
- 手足の冷感
- 消化器症状(吐き気、食欲不振、下痢、便秘など)
- 気管支収縮(息苦しさ): 特に喘息のある方は注意が必要です。
ごくまれだけど注意が必要な副作用
- 心不全、完全房室ブロック、高度な徐脈: 心臓の働きが著しく悪くなる状態です。息切れ、むくみ、極端に脈が遅くなるなどの症状に注意。
- 低血糖: 特に糖尿病治療中の方や食事量が少ない方に起こりやすいです。冷や汗、手の震え、動悸などがサイン。
- 無顆粒球症、血小板減少症: 血液の成分に異常が起こる病気です。発熱、のどの痛み、青あざができやすいなどの症状に注意。
- 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(TEN): 高熱、目の充血、口や陰部のただれ、全身の赤い発疹や水ぶくれなどが現れる非常に重い皮膚障害です。
副作用が出たときの対処法
- めまいやふらつき、眠気: インデラルを飲んでいる間は、自動車の運転や危険な機械の操作、高所での作業などは避けるようにしましょう。
- 手足の冷感: 気になる場合は、保温を心がけたり、医師に相談したりしましょう。
- 息苦しさ: もし息苦しさを感じたら、すぐに医師に相談してください。特に喘息のある方は注意が必要です。
いつもと違う体調の変化を感じたり、副作用が長引いたりする場合や重篤な副作用のサインに気づいたら、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
インデラルの注意事項・禁忌
使ってはいけない方
絶対に使ってはいけない方(禁忌)
- 本剤の成分に対し過敏症(アレルギー)の既往歴のある方
- 気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者: 喘息発作を誘発する可能性があります。
- 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者
- 高度の徐脈(著しく脈が遅い)、房室ブロック(II、III度)、洞房ブロック、洞不全症候群のある患者: 心臓の働きをさらに悪化させる可能性があります。
- 心原性ショックの患者
- 肺高血圧による右心不全のある患者
- うっ血性心不全のある患者低血圧症の患者
- 重い末梢循環障害(壊疽など)のある患者
- 未治療の褐色細胞腫の患者
- 異型狭心症の患者(適応外使用のあがり症などでは、医師の極めて慎重な判断が必要です)
使うときに特に注意が必要な方
- コントロールが不十分な糖尿病の方: 低血糖症状を隠してしまうことがあります。
- 肝臓や腎臓の機能が低下している方高齢者の方乾癬のある方: 症状が悪化することがあります。
- 手術を予定している方: 麻酔薬との相互作用があるため、必ず事前に医師に伝えてください。
- 妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
- お子さん(小児)
併用に注意が必要な薬
- 他の降圧剤や心臓のお薬(カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤、他のβ遮断薬など): 作用が強まりすぎることがあります。
- 血糖降下薬(インスリン製剤、経口血糖降下薬): 低血糖症状を隠したり、血糖コントロールに影響したりすることがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソニン、イブプロフェンなど): インデラルの降圧効果を弱めることがあります。
- 一部の精神神経用剤
- 麻酔薬
上記以外にも多数のお薬と相互作用を起こす可能性があります。他に飲んでいるお薬やサプリメントがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えましょう。
使用上の注意
急にやめると、症状の悪化やリバウンド現象(血圧の急上昇など)が起こる危険性があります。自己判断で量を増やしたり減らしたり、急にやめたりしないようにしましょう。特に予防目的で使う場合は、効果を実感できるまでに時間がかかることがあります。
必要に応じて、血圧、脈拍、心電図、血液検査などを行い、効果や副作用をチェックします。
手術や歯科治療を受ける際は、インデラルを服用していることを必ず伝えましょう。喘息やその既往がある方も、必ず医師に伝えましょう。
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
- 子どもの手の届かない場所に置いてください。
飲み忘れたら?
飲み忘れたことに気づいたら、できるだけ早く1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は(例えば、1日2回服用の場合で、次の服用まで4時間以内など。1日3回の場合はもっと短くなります)、忘れた分は飲まずに、次の時間に1回分だけ飲みましょう。
絶対に2回分をいっぺんに飲んではいけません。
インデラルに市販薬はある?値段は?
市販薬
「インデラル」と同じ有効成分「プロプラノロール塩酸塩」を含む市販薬は、現在のところありません。
インデラルは、心臓や血圧に作用するお薬で、医師の診断と処方、そして定期的な経過観察が必要な薬です。あがり症などの症状でお困りの場合でも、自己判断で市販薬を探すのではなく、まずは医療機関を受診して、専門医に相談するようにしてください。
ジェネリック名
インデラルの有効成分「プロプラノロール塩酸塩」を含むジェネリック医薬品(後発医薬品)も多数販売されています。
「プロプラノロール塩酸塩錠「〇〇」」(〇〇には製薬会社名が入ります)といった名称で、一般的にインデラルよりも薬価が安価なことが多いです。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- インデラル錠10mg(先発医薬品): 1錠あたり 約10.4円程度
- プロプラノロール塩酸塩錠10mg(後発医薬品): 1錠あたり 約6.6円程度
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
よくある質問(FAQ)
Q. インデラルはどんな症状に使われるの?
インデラルは、高血圧症、狭心症、不整脈(頻脈性)の治療に使われるほか、片頭痛発作の予防や、あがり症(社交不安障害)に伴う動悸や手の震えなどの身体症状の緩和にも使われることがあります。心臓の働きを穏やかにしたり、血管の過度な収縮を抑えたりする作用があります。
Q. 妊娠中でも使える?
妊娠後期に服用すると、新生児に徐脈や低血糖、呼吸抑制などが起こる可能性があるとされています。自己判断での服用は絶対に避け、必ず医師に相談してください。
Q. 授乳中でも使える?
インデラルの成分が母乳中に移行することが報告されています。授乳中に服用する場合は医師に相談し、指示に従ってください。
Q. 小児でも使える?
インデラルは、小児等に対する有効性および安全性は確立されていません。 そのため、お子さんの高血圧や不整脈、片頭痛予防などに対しては、原則として処方されません。
Q. インデラルを飲んだら運転しても大丈夫?
インデラルを服用すると、副作用としてめまい、ふらつき、眠気などが現れることがあります。そのため、インデラルを飲んでいる間は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作、高所での作業などは避けるようにしてください。
Q. インデラルは飲んでからどのくらいで効き始めますか?
効果が現れるまでの時間や実感の仕方は、治療する病気の種類や患者さんによって異なります。
①高血圧症: 数日~数週間かけて、徐々に血圧が安定してくることが多いです。
②狭心症や不整脈: 症状の改善は、服用開始後比較的早めに感じられることもありますが、安定した効果を得るには継続的な服用が必要です。
③片頭痛の予防: 数週間~1ヶ月程度、あるいはそれ以上かかることがあります。
④あがり症(頓服): 30分~1時間程度でドキドキや震えを抑える効果が現れ、数時間持続することが多いです。
Q. インデラルを飲んでいるときにお酒を飲んでも大丈夫?
インデラルを服用中にお酒(アルコール)を飲むと、血圧が下がりすぎたり、めまいやふらつきなどの副作用が強く現れたりする可能性があります。
Q. あがり症でインデラルを使う場合、どんなことに気をつければいいですか?
あがり症でインデラルを使うのは、医師の判断による適応外使用となることが多いです。使用する場合は、必ず医師の指示通りに、決められた量とタイミング(通常、緊張する場面の1時間くらい前)を守って服用しましょう。 初めて飲むときは、事前に少量で試してみて、自分にどのくらいの効果や副作用が出るかを確認しておくと安心です。また、インデラルは身体的な緊張症状(動悸や震え)を抑えるもので、精神的な不安そのものを取り除くわけではないことを理解しておくことも大切です。
Q. インデラルを急にやめるとどうなりますか?
インデラルを自己判断で急にやめるのは非常に危険です。 特に長期間服用していた場合、急に中断すると、反跳現象(リバウンド)といって、血圧が急上昇したり、狭心症発作が悪化したり、頻脈が起こったりすることがあります。服用を中止する場合は、必ず医師の指示に従い、数週間かけて徐々に量を減らしていくなど、安全な方法で行う必要があります。
まとめ
今回は、高血圧や狭心症、不整脈の治療から、片頭痛の予防、さらにはあがり症の症状緩和まで、幅広いお悩みに使われるお薬「インデラル」について、詳しく見てきました。
インデラルは、「β遮断薬」というグループのお薬で、心臓の働きを穏やかにしたり、交感神経の過度な興奮を抑えたりすることで、様々な効果を発揮してくれます。特に、あがり症で悩む方にとっては、ここぞという場面での心強い味方になるかもしれませんね。
しかし、効果が多岐にわたる分、注意すべき点もいくつかあります。一番大切なのは、医師の診断のもとで処方してもらい、指示された用法用量をきちんと守ること。そして、自己判断で量を調整したり、急にやめたりしないことです。定期的な診察も忘れずに受けましょう。
この記事が、インデラルに対する皆さんの疑問や不安を少しでも軽くして、安心して適切な治療に取り組むためのお手伝いができれば、心から嬉しいです。つらい症状が少しでも和らぎ、より穏やかで快適な毎日が送れるようになりますように。どうぞお大事になさってくださいね。
ウチカラクリニックではオンライン診療に完全対応し、忙しい方向けに夜間や土日も診療を行っております。
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