
「また片頭痛が起きるんじゃないか…って、いつも不安…」「月に何度も頭痛薬を飲むのは、もうイヤ…」そんなふうに、繰り返す片頭痛の発作にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、お医者さんから「ミグシス」というお薬が処方されることがあります。「ミグシスって、どんなお薬なの?」「頭痛が起きたときに飲むのとは違うの?」「副作用は大丈夫?」など、たくさんの疑問や不安を感じるかもしれませんね。
この記事では、片頭痛の発作を“予防”するためのお薬「ミグシス」について、その正体から効果、副作用、そして何よりも大切な正しい飲み方や注意点を、医師がとことん優しく、そして分かりやすく解説します!ミグシスと上手に付き合って、つらい片頭痛の頻度を減らし、穏やかな毎日を目指しましょう。
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ミグシスとは?効果は?
ミグシスは、片頭痛発作が起こるのを抑える(予防する)ために使われる飲み薬です。
トリプタン系薬剤(例:イミグラン、マクサルト、ゾーミッグ、アマージなど)が「発作が起きてしまったときに症状を和らげるお薬」なのに対し、ミグシスは「そもそも発作を起こりにくくするためのお薬」という点が大きな違いです。
主成分は「ロメリジン塩酸塩」といい、これは「カルシウム拮抗薬」と呼ばれるグループに属するお薬の一つです。もともとは脳の血流を改善するお薬として開発されましたが、片頭痛の予防にも効果があることが分かり、使われるようになりました。
ミグシスは、毎日コツコツと飲み続けることで、片頭痛発作の回数を減らしたり、発作が起きても症状を軽くしたりする効果が期待できます。すぐに効果が出るわけではなく、じっくりと体質を改善していくようなイメージのお薬です。
ミグシスの成分
ミグシスの主役は、「ロメリジン塩酸塩」という成分です。
では、このロメリジンは、私たちの体の中でどんな風に働いて、片頭痛発作を予防してくれるのでしょうか?少し専門的になりますが、できるだけ簡単に説明しますね。
①脳の血管が異常に広がるのを防ぐガードマン
片頭痛の原因の一つに、脳の血管が何らかのきっかけで異常に拡張(広がりすぎること)し、その周りの神経を刺激することが挙げられています。ロメリジンは、「カルシウム拮抗薬」という名前の通り、血管の細胞にカルシウムイオンが流れ込むのをブロックする働きがあります。カルシウムイオンは血管を収縮させるのに必要な物質の一つですが、これを適度に調整することで、血管が過剰に収縮したり、逆に異常に拡張したりするのを防ぎ、安定した状態に保つのを助けます。
②セロトニンの放出を抑えるお手伝い
片頭痛に関わる神経伝達物質「セロトニン」が急激に放出されることも、発作の引き金になると考えられています。ロメリジンは、このセロトニンの放出を穏やかにする作用も持つ可能性が示唆されています。
③脳の神経細胞が興奮しすぎるのを抑える可能性も
片頭痛の患者さんでは、脳の神経細胞が過敏になっていることがあると言われています。ロメリジンは、この神経細胞の過剰な興奮を少し抑えることで、発作を起こりにくくするのではないかとも考えられています。
このように、ミグシス(ロメリジン)は、いくつかの角度から脳の血管や神経に働きかけて、片頭痛が起きにくい状態を作ってくれるのです。
ミグシスの効果
- 片頭痛発作の回数を減らす
- 片頭痛発作が起きても、症状(頭痛の強さ、持続時間、吐き気など)を軽くする
- 片頭痛発作時に飲むお薬(トリプタン系薬剤など)の量を減らせる可能性がある
あくまで「予防」が目的なので、今まさに起きている片頭痛の痛みをすぐに取り除く効果はありません。 その点はしっかり覚えておきましょう。
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
ミグシスは、片頭痛の予防を目的として処方されます。
「頭痛持ちだから飲んでみたい」と思っても、自己判断で使えるお薬ではありません。
医師が、片頭痛の頻度(例えば月に2回以上、あるいは生活に支障が出るほど頻繁な場合など)や重症度、他の治療法との兼ね合いなどを総合的に判断して、ミグシスによる予防治療が適切かどうかを決定します。
ミグシスの使い方(用法・用量)
1回1錠(ロメリジン塩酸塩として5mg)を、1日2回(朝夕食後など)服用します。
症状や年齢によって、1日10mgの範囲で適宜増減されることがあります。
ミグシスは発作を抑える薬ではなく、発作が起きにくい状態を作るためのお薬です。「今日は頭痛がないから飲まなくていいや」と自己判断で中断してしまうと、十分な予防効果が得られません。毎日、指示された通りにコツコツと飲み続けることが大切です。
ミグシスの副作用
主な副作用
比較的よくみられる副作用
- 眠気、ふらつき、めまい、頭が重い感じ
- 消化器症状(吐き気、胃の不快感、便秘、下痢、食欲不振など)
- 顔のほてり、動悸
- むくみ
- 肝機能検査値の異常(血液検査で分かるもの)
ごくまれだけど注意が必要な副作用
- 抑うつ(気分が落ち込む、やる気が出ないなど)
- 錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう): 手足の震え、体のこわばり、動きにくさ、そわそわ感など。特に高齢者で長期間服用した場合に注意が必要です。
- 体重増加
- 過敏症(発疹、かゆみなど)
副作用が出たときの対処法
- 眠気やめまい: ミグシスを飲んだ後は、自動車の運転や危険な機械の操作は避けましょう。
- 消化器症状: 症状が軽い場合は様子を見ることが多いですが、つらい場合や長引く場合は医師に相談しましょう。食後に飲むことで和らぐこともあります。
- 抑うつや錐体外路症状の兆候: もし、気分の落ち込みが続く、手足が震えるなどの症状に気づいたら、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。
いつもと違う体調の変化を感じたり、副作用が長引いたりする場合や重篤な副作用のサインに気づいたら、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
ミグシスの注意事項・禁忌
ミグシスは比較的安全性の高いお薬とされていますが、安全に使うためにはいくつか注意点があり、使ってはいけない方もいます。
使ってはいけない方
絶対に使ってはいけない方(禁忌)
- 本剤の成分(ロメリジン塩酸塩)に対し過敏症(アレルギー)の既往歴のある方
- 頭蓋内出血またはその疑いのある患者(脳出血直後など): 症状を悪化させる可能性があります。
- 脳梗塞急性期の患者: 脳の血流を不安定にする可能性があります。
使うときに特に注意が必要な方
- パーキンソン病の方: 症状が悪化する可能性があります。
- うつ病またはうつ状態の方、あるいはその既往歴のある方: 症状が悪化または再燃する可能性があります。
- 肝臓や腎臓の機能が低下している方
- 高齢者: 副作用(特に錐体外路症状など)が出やすいため、少量から開始するなど慎重な投与が必要。
- 妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方、小児等
併用に注意が必要な薬
- 降圧剤(血圧を下げるお薬): 血圧が下がりすぎてしまう可能性があります。
- その他の中枢神経に作用するお薬(眠気を誘うお薬など): 眠気などの副作用が強まることがあります。
他の薬を飲んでいる場合は、必ず医師や薬剤師に伝えて確認してもらいましょう。
使用上の注意
ミグシスの効果はすぐには現れません。医師の指示通り、根気よく飲み続けることが大切です。また、急にやめると、頭痛がひどくなることがあります。中止する場合も医師の指示に従いましょう。
副作用として眠気やめまいが出る場合があるので、服用後は自動車の運転や危険な作業は避けましょう。
ミグシスは発作治療薬ではありません。発作が起きたら、ミグシスではなく医師から指示されている発作治療薬(トリプタン系薬剤など)を使いましょう。
睡眠不足、ストレス、特定の食べ物などが片頭痛の誘因になることがあります。お薬だけに頼らず、生活習慣を見直すことも予防には重要です。
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けて保管しましょう。
- 子どもの手の届かない場所に置いてください。
飲み忘れたら?
飲み忘れたことに気づいたら、できるだけ早く1回分を飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は(例えば、1日2回服用の場合で、次の服用まで4時間以内など)、忘れた分は飲まずに、次の時間に1回分だけ飲みましょう。
絶対に2回分をいっぺんに飲んではいけません。
ミグシスに市販薬はある?値段は?
市販薬
「ミグシス」と同じ有効成分「ロメリジン塩酸塩」を含む市販薬は、現在のところありません。
ミグシスは片頭痛の「予防」を目的としたお薬であり、医師の診断と処方が必要な医療用医薬品です。片頭痛の予防に関しては、自己判断で市販薬やサプリメントに頼るのではなく、まずは医療機関を受診して、専門医に相談することが大切です。
ジェネリック名
ミグシス(ロメリジン塩酸塩)のジェネリック医薬品(後発医薬品)は、日本には販売されていません。
ミグシスは、先発医薬品(先発品)のみとなっています。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- ミグシス錠5mg(先発医薬品): 1錠あたり 約30~40円程度
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
よくある質問(FAQ)
Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
妊婦さんや授乳中の方は、なるべく薬の使用を控えたい時期です。ただし、どうしても治療が必要な場合は医師が判断して処方することがあります。心配なことは遠慮なく相談しましょう。
Q. 小児でも使える?
ミグシスは、現在のところ小児等(15歳未満)に対する有効性および安全性は確立されていません。 そのため、お子さんの片頭痛に対しては、原則として処方されません。
Q. ミグシスを飲んだら運転しても大丈夫?
ミグシスを服用すると、副作用として眠気やめまい、ふらつきなどが現れることがあります。そのため、ミグシスを飲んだ後は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるようにしてください。
Q. ミグシスは使ってからどのくらいで効き始めますか?
ミグシスは、飲んですぐに効果が出るタイプのお薬ではありません。毎日コツコツと飲み続けることで、徐々に片頭痛が起きにくい状態を作っていきます。効果を実感できるまでには個人差がありますが、一般的には飲み始めてから1~2ヶ月程度かかることが多いと言われています。
Q. ミグシスを飲んでいるときにお酒を飲んでも大丈夫?
ミグシスとお酒(アルコール)の間に、特に重大な相互作用(悪い影響)は報告されていません。しかし、アルコール自体が片頭痛の誘因となることがありますし、ミグシスの副作用である眠気やめまいを強めてしまう可能性も考えられます。
Q. 「ミグシスを飲むとうつになる」って聞いたけど本当ですか?
ミグシスの副作用として、まれに「抑うつ」(気分が落ち込む、やる気が出ないなど)が報告されています。。もともとうつ病の治療をしている方や、うつ状態になりやすい方は、特に注意が必要です。
Q. アマージは毎日使ってもいいですか?予防にもなりますか?
いいえ、アマージは片頭痛発作が起きたときにだけ使うお薬で、毎日使うお薬ではありません。また、片頭痛を予防する効果もありません。 頻繁に(例えば月に10日以上)アマージのような急性期治療薬を使いすぎると、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」といって、かえって頭痛が悪化したり、ほぼ毎日頭痛が続くようになったりすることがあります。片頭痛の頻度が多い場合は、予防療法(毎日お薬を飲むことで発作を起こりにくくする治療)を検討する必要があるので、必ず医師に相談してください。
Q. 「ミグシスを飲むと痩せる」または「太る」って本当ですか?
ミグシスの副作用として、「痩せる(体重減少)」や「太る(体重増加)」が明確に報告されているわけではありません。ただし、食欲不振や胃の不快感などの消化器系の副作用が起これば、結果的に体重が減る可能性はあります。逆に、まれにむくみが起こることがあり、それが体重増加につながるように感じる方もいるかもしれません。
Q. ミグシスを飲んでいても片頭痛発作が起きたらどうすればいいですか?
ミグシスはあくまで予防薬なので、飲んでいても片頭痛発作が起きてしまうことはあります。その場合は、あらかじめ医師から指示されている片頭痛発作治療薬(トリプタン系薬剤や鎮痛薬など)を服用してください。 ミグシスを追加で飲んでも、今起きている発作には効果がありません。
Q. ミグシスはどんなタイプの頭痛にも効くの?
いいえ、ミグシスは片頭痛の発作を予防するためのお薬です。緊張型頭痛など、他のタイプの頭痛の予防効果は認められていません。また、今まさに起きている片頭痛の痛みをすぐに取るお薬でもありません。
まとめ
今回は、片頭痛発作を“予防”するためのお薬「ミグシス」について、詳しく見てきました。
ミグシスは、毎日コツコツと飲み続けることで、脳の血管や神経の状態を安定させ、片頭痛が起きにくい体質へと導いてくれるお薬です。
「今ある痛みをすぐに取る」のではなく、「そもそも痛みが起きる回数を減らす」ことを目指す、という点が大きな特徴ですね。
効果を実感できるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、医師の指示通りに根気よく続けることが大切です。そして、もし副作用かな?と思うような症状が出たり、なかなか効果が感じられなかったりした場合は、一人で悩まずに、気軽に医師や薬剤師に相談してください。
この記事が、ミグシスに対する皆さんの疑問や不安を少しでも軽くして、安心して適切な治療に取り組むためのお手伝いができれば、心から嬉しいです。つらい片頭痛の頻度が減り、より穏やかで快適な毎日が送れるようになりますように。どうぞお大事になさってくださいね。
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