痰切り薬「ムコソルバン」の効果と副作用を徹底解説【医師監修】

Mucosolvan

「咳が続いて痰が絡む…」「痰がなかなか切れなくて苦しい…」そんなとき、病院で「ムコソルバン」というお薬が処方されることがあります。

「ムコソルバンって、どんなお薬なんだろう?」「副作用はあるの?」「ムコダインとは違うの?」など、色々な疑問が頭に浮かびますよね。

この記事では、痰を出しやすくするお薬「ムコソルバン」について、その成分や効果、副作用、正しい使い方、そして皆さんが気になる疑問点まで、薬剤師が優しく丁寧に解説します。ムコソルバンについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください!

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ムコソルバンとは?効果は?

ムコソルバンは、医療用医薬品として処方されるお薬で、主に気道にこびりついた痰を排出しやすくしたり、気道の潤いを保ったりする効果があります。一般名はアンブロキソール塩酸塩といい、ムコソルバンはこの成分の先発医薬品の名称です。

ムコソルバンには、錠剤(ムコソルバン錠15mg)、ゆっくり効くLカプセル(ムコソルバンLカプセル45mg)、シロップ(ムコソルバンシロップ小児用0.3%)、液体の内用液(ムコソルバン内用液0.75%)など、いくつかの種類があり、年齢や症状、ライフスタイルに合わせて使い分けられています。

ムコソルバンの成分

ムコソルバンの有効成分はアンブロキソール塩酸塩です。
このアンブロキソール塩酸塩は、私たちの体の中でこんな働きをして、しつこい痰の悩みを和らげてくれます。

  • 気道潤滑油の分泌を促進
    気道の表面には「肺サーファクタント」という、潤滑油のような物質があります。アンブロキソールは、この肺サーファクタントの分泌を促し、気道を滑りやすくして痰を動きやすくします。
  • 線毛運動を活発に
    気道の内側には「線毛」という細かい毛がたくさんあり、これがパタパタと動くことで痰などの異物を体の外に運び出しています。アンブロキソールは、この線毛の動きを活発にするのを助けると言われています。
  • 気道粘液の調整
    痰のネバネバを少しサラサラにして、出しやすくする効果も期待できます。

このように、ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)は、気道の「お掃除機能」を高めたり、痰そのものを出しやすくしたりすることで、症状を改善するお薬です。

ムコソルバン効果

  • 痰の切れを良くする(去痰効果)
  • 痰が絡む咳を和らげる
  • 急性気管支炎や慢性気管支炎の症状を改善する
  • 肺結核や塵肺症といった病気で痰が出にくい場合に、その排出を助ける
  • 手術後の痰が出にくい状態を改善する

風邪や気管支炎などで痰がひどい場合や、慢性的な呼吸器の病気で痰の排出に困っている場合などに使われます。

どんなときに使う?(適応疾患)

  • 急性気管支炎
  • 慢性気管支炎
  • 気管支拡張症
  • 気管支喘息(発作時ではなく、痰の排出を助ける目的で)
  • 肺結核
  • 塵肺症(じんぱいしょう)
  • 手術後の喀痰喀出困難(痰が出しにくい状態)

これらの病気に伴う、痰が絡んだり、出しにくかったりする症状を和らげるために処方されます。

ムコソルバンは喉の痛みや咳に効く?

ムコソルバンは喉の痛みや咳にも効くの?」という疑問をよく耳にします。

咳について

ムコソルバンは直接的に咳中枢に作用して咳を止めるお薬(鎮咳薬)ではありません。しかし、痰が気道に絡んでいることが咳の原因になっている場合、ムコソルバンが痰を出しやすくすることで、結果的に痰が絡む咳を和らげる効果が期待できます。

「痰がスッキリすれば咳も楽になる」というイメージですね。

喉の痛み

ムコソルバンには、実はわずかながら局所麻酔作用(痛みを感じにくくする作用)があることも知られています。実際に、海外ではアンブロキソール塩酸塩を含むトローチが喉の痛みの緩和に使われていることもあります。

ただし、日本で処方されるムコソルバンの飲み薬は、主に痰を出しやすくすることを目的としており、喉の痛みを直接治療するお薬として処方されることは一般的ではありません。喉の痛みが強い場合は、炎症を抑える別のお薬や、専門的な治療が必要になることがあります。

ですので、「ムコソルバンを飲めば喉の痛みが治る!」と期待しすぎず、あくまで主目的は「痰を出しやすくすること」と理解しておくと良いでしょう。

ムコソルバンの使い方(用法・用量

ムコソルバンの用法用量は、年齢や症状、お薬の形(錠剤、Lカプセル、シロップなど)によって異なります。必ず医師や薬剤師の指示に従って服用してください。

錠剤(ムコソルバン錠15mg)の場合

通常、1回1錠(アンブロキソール塩酸塩として15mg)を1日3回服用。

Lカプセル(ムコソルバンLカプセル45mg)の場合

1回1カプセル(アンブロキソール塩酸塩として45mg)を1日1回服用。
ゆっくりと成分が放出されるように作られているので、1日1回の服用で効果が続きます。ムコソルバンL錠は徐放性製剤(薬が徐々に放出されるタイプ)のため、噛み砕いたり割ったりせずに、そのまま飲むようにしてください。

内用液(ムコソルバン内用液0.75%)の場合

通常、成人は1回2mL(アンブロキソール塩酸塩として15mg)を1日3回服用

小児の場合

  • 小児用ムコソルバンシロップ0.3%
    体重1kgあたり1日0.3mL(アンブロキソール塩酸塩として0.9mg/kg)を3回に分けて服用
  • 小児用ムコソルバンDS(ドライシロップ)1.5%
    小児の体重に応じて調整

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、ムコソルバンをはじめとした痰切り薬の処方や風邪の治療なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

ムコソルバンの注意事項(禁忌)

使用に注意が必要な方

  • 過去にムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)でアレルギー症状を起こしたことがある方
  • 高齢者: 副作用が出やすい可能性があるため、少量から開始するなど慎重な投与が必要。
  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の方

飲み合わせに注意が必要な薬

ムコソルバンとの飲み合わせで特に注意が必要とされているお薬は、現在のところ多くはありません。

しかし、市販の風邪薬や総合感冒薬には、すでにアンブロキソール塩酸塩やその他の去痰成分が含まれていることがあります。重複して服用しないよう注意が必要です

使用上の注意

  • アレルギー症状に注意: 発疹やかゆみなどが出たら、すぐに医師に相談してください。
  • Lカプセルは噛まない: ゆっくり効くように作られているので、カプセルは噛まずにそのまま水やぬるま湯で飲んでください。

医師の指示を守って服用し、それでも改善が見込めないときは医師に相談しましょう。

保管方法

  • 直射日光や高温多湿を避けて保管
  • 子どもの手の届かない場所へ
  • シロップ剤は、開封後の保管方法や使用期限について薬剤師の指示をよく確認してください。

飲み忘れたら?

飲み忘れた場合は、気づいたときにできるだけ早く1回分を飲んでください。
ただし、次に飲む時間が近い場合は、忘れた分は飲まずに、次の通常の時間に1回分を飲んでください。

2回分をまとめて飲むのはNGです。

ムコソルバンの副作用

主な副作用

ムコソルバンで報告されている副作用は、比較的少ないとされています。

比較的よくみられる副作用

  • 食欲不振、下痢、腹痛、吐き気、胃の不快感
  • 発疹、かゆみ
  • 血管浮腫(顔やまぶた、唇などがはれる)

まれにみられる重篤な副作用

  • 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、: 高熱、目の充血、口や陰部のただれ、全身の赤い発疹や水ぶくれなどが現れる非常に重い皮膚障害です。
  • ショック、アナフィラキシー: 呼吸困難、じんましん、顔面蒼白、血圧低下などが急に現れることがあります。

副作用が出たときの対処法

  • 胃腸症状(胃の不快感、吐き気など)
    症状が軽い場合は様子を見ることもありますが、つらい場合や長引く場合は医師に相談しましょう。食後に飲むことで和らぐこともあります。
  • 皮膚症状(発疹、かゆみ、湿疹)
    このような症状が出た場合は、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

上記以外の症状や、いつもと違う体調の変化を感じた場合は、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。特に、重篤な副作用が疑われる症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。

ムコソルバンに市販薬はある?値段は?

市販薬

ムコソルバンそのものの市販薬はありませんが、有効成分であるアンブロキソール塩酸塩を含む総合感冒薬(風邪薬)や去痰薬の市販薬はあります。

  • パブロンSゴールドW(大正製薬)
  • コルゲンIB透明カプセルαプラス(興和)
  • エスタックEX Neo(エスエス製薬)
  • ルルアタックEX(第一三共ヘルスケア)
  • パブロンエースPro錠(大正製薬)
  • エスタックイブファイン(エスエス製薬)  など

ただし、市販薬は医療用医薬品と成分の含有量が異なる場合や、他の成分も配合されていることがあります。ご自身の症状や体質に合ったお薬を選ぶためには、薬剤師に相談することをおすすめします。

ジェネリック名

ムコソルバンには、有効成分「アンブロキソール塩酸塩」のジェネリック医薬品(後発医薬品)が多数あります。一般的に薬価がムコソルバンよりも安価なことが多いです。

商品名としては、「アンブロキソール塩酸塩錠「〇〇」」や「アンブロキソール塩酸塩Lカプセル「〇〇」」、「アンブロキソール塩酸塩シロップ「〇〇」」(〇〇には製薬会社名が入ります)などがあります。

ジェネリック医薬品を希望する場合は、医師や薬剤師に相談してみてください。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • ムコソルバン錠15mg: 1錠あたり約5.7円
  • ムコソルバンLカプセル45mg: 1カプセルあたり約19.0円
  • ムコソルバンシロップ小児用0.3%: 1mLあたり約2.1円
  • ムコソルバン内用液0.75%: 1mLあたり約4.0円

※2025年5月8日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

ムコソルバン錠15mg

小児用ムコソルバンDS1.5%

小児用ムコソルバンシロップ0.3%

よくある質問(FAQ)

Q. 妊娠中でも使える?
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ処方されます。特に妊娠初期(妊娠3ヶ月以内)は慎重な判断が必要です。自己判断での服用は絶対に避け、必ず医師に相談してください。

Q. 授乳中でも使える?
ムコソルバンの成分が母乳中に移行することが報告されています。服用する際は医師に相談し、指示に従ってください。医師の判断によっては、授乳を続けることができる場合もありますが、他の薬への変更や一時的な断乳を指示されることもあります。

Q. 子供でも飲めますか?
はい、ムコソルバンはシロップや内用液の形で、お子さんの痰の治療にもよく処方されます。ただし、年齢や体重によって服用量が細かく調整されるため、必ず医師の指示通りの量を飲ませてください。

Q. 車の運転への影響は?
ムコソルバンの副作用として眠気が報告されることは非常にまれです。そのため、添付文書上では運転に関する明確な禁止事項はありません。しかし、万が一眠気を感じる場合は、運転や危険な機械の操作は控えた方が良いでしょう。

Q. 飲み始めてどのくらいで効果が出る?
効果が現れるまでの時間には個人差がありますが、一般的には服用後30分~1時間程度で効果を感じ始めることが多いと言われています(特に内服液やシロップの場合)。Lカプセルの場合は、ゆっくりと成分が放出されるため、効果の持続性が期待できます。

Q. お酒と一緒に飲んでも大丈夫?
ムコソルバンとアルコールの間に特に強い相互作用は報告されていません。しかし、一般的に薬を服用中はお酒を控えることが推奨されます。アルコールは体の状態に影響を与えるため、薬の効果や副作用に予期せぬ影響が出る可能性も否定できません。心配な場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

Q. ムコソルバンとムコダイン(カルボシステイン)の違いは何ですか?
どちらも痰を出しやすくするお薬(去痰薬)ですが、作用の仕方が異なります
ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)
主に気道の潤滑油(肺サーファクタント)の分泌を促したり、線毛運動を活発にしたりして痰を出しやすくします。「気道のお掃除機能を高める」イメージです。
ムコダイン(L-カルボシステイン
主に痰の成分バランスを整えて粘り気を少なくしたり、気道粘膜を修復したりして痰を出しやすくします。「痰の質を変える」イメージです。

Q. ムコソルバンは抗生物質ですか?
いいえ、ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)は抗生物質ではありません。抗生物質は細菌を殺したり増殖を抑えたりするお薬ですが、ムコソルバンは痰を出しやすくするお薬です。細菌感染が原因で痰が出ている場合には、抗生物質とムコソルバンが一緒に処方されることはあります。

Q. ムコソルバンは販売中止になったとききました。
一部の剤形で出荷調整や販売中止の報告があります。例えば、「ムコソルバンRDS3%」は諸般の事情により販売中止となっています。また、「ムコソルバン錠15mg」と「ムコソルバンL錠45mg」は過去に出荷調整が行われましたが、現在(2025年5月時点)では出荷調整が解除されており、通常通り処方が可能です。詳しい情報は医師や薬剤師にお問い合わせください。

まとめ

今回は、痰を出しやすくするお薬「ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)」について、詳しく見てきました。

ムコソルバンは、気道の潤いを保ち、痰を排出しやすくすることで、呼吸を楽にしてくれるお薬です。副作用も比較的少なく、お子さんから大人まで広く使われています。

大切なのは、医師や薬剤師の指示通りに正しく服用すること。そして、何か気になる症状が出た場合は、遠慮なく相談することです。

この記事が、ムコソルバンに対する皆さんの疑問や不安を解消し、安心して治療に取り組むための一助となれば幸いです。早くつらい症状が和らぎますように。お大事にしてくださいね。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。