
気管支喘息の治療において重要な役割を担っている「パルミコート吸入液」。
この薬は特に幼児や吸入力が弱い患者さんに適した治療法として広く使われていますが、正しい使い方や効果の現れ方について疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、パルミコート吸入液の特徴や使用方法、注意点などについて詳しく解説します。ネブライザーでの吸入方法やメプチンとの併用についても触れますので、ぜひ参考にしてください。
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INDEX
パルミコートとは
パルミコートの成分
パルミコートは、ぜんそく治療の柱となる「吸入ステロイド薬(ICS)」です。気道の慢性的な炎症を直接抑えることで、ぜんそくの症状を根本からコントロールし、発作を予防する働きがあります。
パルミコートの有効成分は「ブデソニド」です。この成分が、気管支の粘膜で起きている「炎症」に直接作用します。 ぜんそくの方の気道は、アレルギー反応などによって常に軽い炎症が続いており、これが様々な刺激(ホコリ、ダニ、冷たい空気、ストレスなど)に対して過敏に反応してしまう原因となっています。
パルミコート(ブデソニド)は、この気道の炎症(腫れや赤みなど)を鎮めることで、気道の過敏性を改善し、ぜんそく発作が起こりにくい、より安定した状態へと導きます。
タービュヘイラー(吸入粉末剤)と 吸入液(ネブライザー用)
パルミコートには、患者さんの状況に合わせて選べるように、2つの異なる剤形(お薬の形と使い方)があります。
パルミコート タービュヘイラー(吸入粉末剤)

赤い回転グリップが特徴的な「タービュヘイラー」という吸入器に入った、粉末状のお薬です。吸入器の操作後、患者さん自身の吸い込む力(吸気力)で粉末の薬を気道に届けます。「強く、深く、速く」吸い込むのがコツです。
比較的操作が簡単で、電源も不要なため携帯に便利です。
自分でしっかり吸入する必要があるため、主に吸入力が十分にある年齢(目安として5歳以上)の小児や成人に使われます。
パルミコート 吸入液(ネブライザー用)

1回使い切りのアンプル(プラスチック容器)に入った液体状のお薬です。ネブライザーという専用の機械(電動式または電池式の噴霧器)を使って、薬液を細かい霧状(エアロゾル)にし、それをマスクやマウスピースを通して吸入します。
ネブライザー本体と、場合によっては電源が必要です。
患者さん自身の吸い込む力はほとんど必要なく、普段通りの自然な呼吸で吸入できます。そのため、乳幼児や小さなお子さん、自分で吸入器の操作が難しいご高齢の方、または重症の発作後などで吸入力が低下している方に適しています。
どちらのタイプを使用するかは、患者さんの年齢、ぜんそくの状態、吸入力、生活スタイルなどを考慮して、お医者さんが総合的に判断します。
パルミコートの効果
- ぜんそくの発作が起こる回数を減らし、症状を軽くする(発作予防)
- 咳、息切れ、ゼーゼー・ヒューヒューといった日常的なぜんそく症状を改善する
- 気道の過敏な状態を和らげる
- 呼吸機能(肺の働き)を維持・改善する
パルミコートは、ぜんそくを根本から治療し、症状を安定させるための基本薬です。
どんなときに使う?(適応疾患)
- 気管支喘息
パルミコートは、発作が起きた時に使うお薬ではありません!
パルミコートは、毎日続けることで気道の炎症をじっくりと抑え、発作が起こりにくい状態を作るための「長期管理薬(コントローラー)」です。急に起こった発作や息苦しさをすぐに和らげる効果はありません。
発作時には、お医者さんから指示された別の「発作治療薬(リリーバー)」(例:短時間作用型の気管支拡張薬)を使用する必要があります。
パルミコートの使い方(用法・用量)
パルミコートの効果を最大限に得るためには、それぞれの吸入デバイス(タービュヘイラー、ネブライザー)を正しく使うことが不可欠です。
パルミコート タービュヘイラーの使い方
- キャップを外す。
- 吸入器をまっすぐ立てて持ち、底の赤い回転グリップを「カチッ」と音がするまで右いっぱい→左いっぱいに回して薬をセット。
- 吸入口から顔を離し、息をしっかり吐き出す。(吸入口に息を吹き込まない)
- 吸入口をくわえ、「強く、深く、速く」スーッと息を吸い込む。(吸入感は少ない)
- 吸入器を口から離し、5~10秒ほど息を止める。
- ゆっくりと息を吐き出し、キャップを閉める。
- すぐにうがいをする。
【用法/用量】
- 成人は通常1回100~400µgを1日2回
- 小児(5歳以上目安)は通常1回100~200µgを1日2回
※最大量は医師の指示に従う。
パルミコート 吸入液(ネブライザー)の使い方
- 準備: 手洗い、ネブライザー部品の組み立て。
- 薬液準備: アンプルを振り、指示量をネブライザーカップへ。(混合指示がある場合は従う)
- 吸入開始: スイッチを入れ、霧を確認。
- 吸入: マスクまたはマウスピースで、普段通りの呼吸で約5~10分程度吸入する。
- 後片付け: 部品を毎回洗浄・乾燥させ、清潔に保管。(感染予防のため非常に重要)
- すぐに顔を洗い、うがい(または口すすぎ)をする。
【用法/用量】
- 成人は通常1回0.5~1mgを1日2回(または1回1~2mgを1日1回)
- 小児は通常1回0.25~0.5mgを1日2回(または1回0.5~1mgを1日1回)
※最大量は医師の指示に従う。
メプチンなど他の吸入液との混合してもいい?
パルミコート吸入液は、生理食塩液、ブリカニール吸入液、ベロテック吸入液、インタール吸入液、アトロベント吸入液との混合は安定性が確認されています。
メプチン吸入液ユニットとの混合については、公式な説明書(添付文書)では安定性が確認されていません。
自己判断で混ぜるのは絶対にやめ、必ず医師または薬剤師に確認してください。混合指示がある場合は、その指示に従い、混ぜたら速やかに吸入しましょう。
あくまでこれらは一般的な例です。あなたにとって最適な用法用量は、診察したお医者さんが判断します。
指示された吸入回数やタイミングを必ず守ってください。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、パルミコートをはじめとした吸入薬の処方や安定した喘息の治療なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

パルミコートの副作用
主な副作用
- 嗄声(させい):声がれ、声がかすれる。
- 口腔咽頭カンジダ症: 口の中や喉の粘膜に、白い苔のようなものが付着する(カビの一種)。ヒリヒリとした痛みを感じることもあります。
- 咽喉頭(のど)の刺激感、痛み、違和感口内炎
- 皮膚炎(吸入液マスク使用時): マスクが触れていた部分の皮膚がかぶれる。
これらの副作用は、吸入ステロイド成分が口や喉に残ることが原因で起こります。吸入後のうがい・顔洗いをしっかり行うことで、これらの副作用の大部分は防ぐことができます。
他にも
- 過敏症: 発疹、じんましん、接触性皮膚炎
まれに、長期間・大量に使用した場合、副腎皮質ステロイド薬の全身的な影響(例:お子さんの成長への影響、骨への影響、血糖値への影響など)が起こる可能性も理論上は考えられますが、適切に使用していればそのリスクは低いとされています。
副作用が出たときの対処法
- 口腔カンジダ症・嗄声:吸入後のうがいを徹底する
- 頭痛・動悸・頻脈:安静にし、症状が続く場合は医師に相談
重篤な副作用の兆候(息苦しさ、全身の発疹、めまい、失神など)が現れた場合は、使用を中止して直ちに医師または救急医療機関に連絡してください。
パルミコートの注意事項(禁忌)
使用に注意が必要な方や飲み合わせが悪い薬
- 有効な治療法がない感染症、深在性真菌症の方: 基本的に使用できません(禁忌)
- 結核にかかっている方: 慎重な管理のもとで使用されます
- 肝臓の機能が低下している方: 作用が強く出る可能性があります
- 高血圧、糖尿病の方: 長期・大量使用時に影響が出る可能性があります
- CYP3A4阻害薬(一部の抗真菌薬、抗生物質など)
現在使っているお薬(飲み薬、貼り薬、塗り薬、他の吸入薬、市販薬、サプリメントなど全て)は、必ずお医者さんや薬剤師さんに伝えるようにしましょう。
使用上の注意
- 吸入を毎日続けること
症状がない時でも、気道の炎症を抑えるために指示通りに継続することが大切です。自己判断で中止しないでください。 - 発作時の対応
パルミコートは発作を予防する薬であり、発作が起きた時の対処薬ではありません。発作時は医師から処方された発作止めの薬(リリーバー)を使用しましょう。 - うがい
吸入後は必ずうがいをして、口腔内に残った薬剤を洗い流しましょう。声がれ(嗄声)やカンジダ症(口腔内の真菌感染症)予防になります。 - デバイスの管理
- タービュヘイラー: 吸入口周りを乾いた布で拭きましょう(水洗い不可)。
- ネブライザー: 部品を使用ごとに洗浄・乾燥させ、常に清潔に保つ。
吸入を忘れたら?
気づいた時点ですぐに1回吸入し、次回は通常時間に吸入すればOK。
ただし、次の吸入時間まであまり時間がない場合は、忘れた分は飛ばして、次の時間に通常通り1回分を吸入してください。
2回分をまとめて吸入するのは避けましょう。過度の吸入は副作用リスクを高めます。
パルミコートに市販薬はある?値段は?
市販薬
パルミコートは医療用医薬品ですので、医師の処方箋が必要です。
ドラッグストアなどで購入することはできません。
ジェネリック名
タービュヘイラー、吸入液ともにジェネリック医薬品(後発医薬品)が存在します。
「ブデソニド」として販売されています。2024年に後発品が初めて薬価収載されました。
ジェネリック医薬品を希望される場合は、医師または薬剤師に相談してみましょう。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- パルミコート吸入液0.25mg:117.3円
- パルミコート吸入液0.5mg:160.1円
- パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入11.2mg:996円
- パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入11.2mg:996円
- パルミコート200μgタービュヘイラー112吸入22.4mg:1244円
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
パルミコート吸入液0.25mg/パルミコート吸入液0.5mg
パルミコート100µgタービュヘイラー112吸入/パルミコート200µgタービュヘイラー56吸入/パルミコート200µgタービュヘイラー112吸入
よくある質問(FAQ)
Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
パルミコートは吸入ステロイド薬の中では妊婦に対する安全性データが豊富で、比較的安心して使用できるとされています。医師が必要と判断すれば妊娠・授乳中でも使用されることがあります。自己判断せず、主治医とよく相談しましょう。
Q. 小児でも使える?
パルミコートタービュヘイラーは目安として5歳以上から、パルミコート吸入液は乳幼児から使用できます。年齢や状態に合わせて医師が判断します。
Q. 車の運転への影響は?
パルミコートの吸入自体が通常、運転能力に直接影響を与えることは少ないです。しかし、体調が万全でない時の運転は避けましょう。
Q. いつから効果が出ますか?効果が出るまでの期間は?
パルミコートは、コントローラー(長期管理薬)に分類される薬であり、使い始めてすぐに効果が現れるわけではありません。通常、著明な改善効果は1~2週間以上の継続投与で徐々に得られます。急な発作を抑えるための薬ではないので、毎日規則正しく使用することが重要です。
Q. お酒を飲んでも大丈夫?
直接的な重い相互作用は少ないですが、飲み過ぎはぜんそくを悪化させる可能性があるので控えめにしましょう。
Q. うがいはなぜ必要なの?忘れたらどうなりますか?
吸入ステロイドによる声がれや口の中のカビ(カンジダ症)を防ぐために必須です。忘れるとこれらの副作用のリスクが高まります。吸入後は必ずうがい(または口すすぎ)を習慣にしてください。
Q. 発作が起きた時もパルミコートを使用すべきですか?
いいえ、パルミコートは発作時の救急治療薬(レリーバー)ではありません。発作時には、必ずお医者さんから指示されている別の発作治療薬(リリーバー)を使用してください。
Q. メプチンと混ぜてもいい?(吸入液の場合)
自己判断は禁物です。 公式には安定性が確認されていません。必ず医師・薬剤師に確認し、指示があれば従ってください。
Q. タービュヘイラーと吸入液はどう違う?どう使い分ける?
デバイス(使い方)と主な対象年齢/状態が異なります。タービュヘイラーは自分で吸える方向け、吸入液は吸入力が弱い方(乳幼児など)やネブライザーが必要な方向けです。成分は同じブデソニドです。
Q. デバイスの手入れは?
タービュヘイラー: 吸入口周りを乾拭き(水洗い不可)。
ネブライザー: 部品を使用ごとに洗浄・乾燥(感染予防)。取扱説明書に従ってください。
まとめ
パルミコートは、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬「ブデソニド」を有効成分とする、ぜんそく治療の基本となるお薬です。
患者さんの年齢や吸入力に合わせて、自分で吸い込む「タービュヘイラー」と、ネブライザーで使う「吸入液」の2つのタイプが使い分けられています。
どちらのタイプを使用する場合でも、その効果を最大限に引き出し、安全に治療を続けるためには、
- それぞれのデバイスの正しい使い方を確実にマスターすること
- 吸入後の「うがい」(吸入液マスク使用時は「顔洗い」も)を毎回必ず行うこと
- 症状がない時でも、毎日指示通りに吸入を続けること
- 発作時には使わず、必ず別の発作治療薬を使用すること
- デバイスを清潔に管理すること(特にネブライザー)
これらの点が非常に重要になります。
使い方や副作用、他の薬との組み合わせ(特に吸入液の混合)など、分からないことや不安なことがあれば、決して一人で悩まず、お医者さんや薬剤師さんに気軽に相談してください。
この記事が、パルミコートというお薬への理解を深め、ぜんそく治療をより良いものにするための一助となれば幸いです。正しい吸入療法で、健やかな呼吸と穏やかな毎日が送れるよう、心から応援しています。
ウチカラクリニックではオンライン診療に完全対応し、忙しい方向けに夜間や土日も診療を行っております。
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