【漢方】人参湯の効果・副作用を医師が解説!

人参湯

「もともと胃腸が弱く、すぐにお腹の調子を崩す」 「手足やお腹が冷えやすく、食欲もない」 「冷たいものを摂ると、決まって下痢や胃痛が起きる」

そんな、体力や胃腸機能が低下し、「冷え」からくる不調に悩まされているときに、漢方薬の「人参湯(にんじんとう)」が処方されることがあります。

今回は、この人参湯がどのようなお薬なのか、その効果の仕組みや副作用、そしてどのような人に合うのかについて、医師がやさしく解説していきます。

 

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人参湯とは?効果は?

人参湯は、胃腸を中心にお腹を温め、消化機能を高めることで、様々な不調を改善する漢方薬です。その名の通り、「人参」が中心となって働く処方です。

胃腸虚弱で、体力・気力ともに落ち込んでいる方のための、基本的なお薬の一つです。

医療用では、主に「ツムラ人参湯エキス顆粒(医療用)」のように、製薬会社名がついたエキス剤(粉薬)が処方されます。

 

人参湯の成分

人参湯は、以下の4種類の生薬(しょうやく)で構成されています。

  • 人参(ニンジン)、乾姜(カンキョウ)
     →胃腸を温め、エネルギー(気)を補うグループ
  • 蒼朮(ソウジュツ)
     →胃腸の余分な水分を取り除くグループ
  • 甘草(カンゾウ)
     →全体の働きを調和させ、痛みを和らげるグループ

蒼朮/白朮などメーカーで朮の種類が異なります

漢方では、体のエネルギー(陽気)が不足すると、胃腸が「冷え」てしまい、消化・吸収する力が弱まると考えます。食べ物がうまく調理されず、胃もたれや下痢、食欲不振の原因となります。

人参湯は、生薬の働きにより、胃腸本来の元気な働きを取り戻します。

人参湯の効果

  • 胃腸を温め、消化機能を高める効果
  • 体力・気力を補う効果
  • 胃痛、胸やけ、吐き気、下痢などを改善する効果

どんなときに使う?(適応疾患・部位)

  • 体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの次の諸症:
    • 胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎

 

人参養栄湯との違いは?

名前が似ていて、どちらも体力が落ちたときに使う漢方なので混乱しやすいですが、得意とする「回復のさせ方」が異なります。

人参湯は「胃腸の冷え」に特化

人参湯は、胃腸を芯から温め、消化吸収の力を取り戻すことに集中します。
そのため、冷えによる胃痛、下痢、吐き気、食欲不振といった、症状の中心がはっきりと胃腸にある場合に適しています。

人参養栄湯は「心と体の消耗」をケア

一方、人参養栄湯は、胃腸の回復だけでなく、貧血のような「血(けつ)」の不足や、精神的な疲労、呼吸器の弱りまで、より広範囲をカバーします。
そのため、病後の全身倦怠感、貧血、手足の冷えに加えて、不安感や不眠、乾いた咳なども見られるような、心身ともに消耗しきった状態に適しています。

詳しい解説はこちら!
人参養栄湯のすごい効果とは?自律神経との関係や効果が出るまでを医師が解説!

 

不調の中心が「冷えた胃腸」にあれば人参湯、病後などで「心も体も全体的に消耗しきっている」場合は人参養栄湯、という使い分けが基本になります。

 

人参湯はオンライン診療で出せる?

「慢性的な胃腸の弱さや冷えを、体質から改善したい」「急に症状が出たけど、病院に行く時間がない…」

そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。

人参湯のような漢方も、医師が適切と判断すれば、オンライン診療で相談したり、処方を受けたりすることが可能です。

ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。

ウチカラクリニックでも、
人参湯に関するご相談や継続的な処方をオンライン診療にて承っております。

特に、症状が安定している場合の継続処方や、お薬への切り替え相談などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。

人参湯の使い方(用法・用量)

1日2〜3回、1回1包を食前または食間(食事と食事の間)の空腹時に服用するのが基本です。

水または白湯(さゆ)で服用してください。

メーカーにより1包の量などが異なります。詳細は医師や薬剤師の指示に従ってください。

人参湯の副作用

漢方薬は作用が穏やかですが、副作用が全くないわけではありません。

主な副作用

主な副作用として、発疹、かゆみなどが報告されています。

まれですが、注意すべき重大な副作用として、配合されている甘草(カンゾウ)による「偽アルドステロン症」やミオパチーがあります。

 

副作用への対処法

「手足のだるさ」「しびれ」「つっぱり感」「むくみ」「血圧の上昇」などは偽アルドステロン症の初期症状かもしれません。

このような症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。

 

人参湯の注意事項(禁忌)

注意が必要な方

  • アルドステロン症、ミオパチー低カリウム血症がある方(禁忌)
  • 過去にこの薬の成分でアレルギー症状を起こしたことがある方
  • 体力があり、暑がりの「実証」「熱証」タイプの方(体を温めすぎるため、向きません)
  • 高血圧、心臓病、腎臓病のある方

併用に注意が必要な薬

  • 甘草/グリチルリチン含有製剤(芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散、グリチルリチン配合製剤 など)
  • 利尿薬(ループ系:フロセミド/アゾセミド/トラセミド、チアジド系:ヒドロクロロチアジド等)

使用上の注意

漢方薬は、症状だけでなく、その人の体質(「証」といいます)に合わせて選ばれます。

人参湯は、体力がなく(虚証)、胃腸やお腹が冷えやすい(寒証)タイプの方で、食欲不振や胃痛、冷えによる下痢などの症状がある方に適しています。

保管方法

  • 直射日光や湿気を避け、涼しい場所に保管してください。
  • 子どもの手の届かない場所へ。

飲み忘れたら?

気づいた時点で、できるだけ早く1回分を服用してください。

ただし、次に飲む時間が近い場合は、忘れた分はとばして、次の時間に1回分だけ飲みましょう。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、人参湯をはじめとした漢方の処方なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

人参湯に市販薬はある?値段は?

市販薬

クラシエなどから、具体的な製品名で販売されています。

製品によって顆粒や錠剤といった剤形や、用法・用量が異なりますので、購入の際はパッケージをよく確認し、薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

ジェネリック

漢方薬には、西洋薬のような「ジェネリック医薬品」という概念は厳密にはありません。

しかし、ツムラ以外にも、コタローなど、複数のメーカーが同じ「人参湯」という名称で医療用エキス製剤を製造しており、薬価もそれぞれ異なります。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • ツムラ人参湯エキス顆粒2.5 g(医療用):約34.75円/包(3割負担の場合:約10円)
  • コタロー人参湯エキス細粒2.0 g(医療用):約25.60円/包(3割負担の場合:約8円)

※2025年10月1日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

ツムラ人参湯エキス顆粒(医療用)

よくある質問(FAQ)

Q.妊婦・授乳中でも飲めますか?

自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してください。妊娠中は体の状態が大きく変化するため、専門家による慎重な判断が必要です。

Q.子どもでも飲めますか?

はい、お子さんの胃腸虚弱や、冷えによる下痢・嘔吐などに使われることがありますが、臨床試験未実施です。その場合、年齢や体重に合わせて服用量が調整されます。

Q.飲むと眠くなりますか?運転はできますか?

眠くなる成分は含まれていないため、運転や機械の操作に影響はありません。

Q.いつから効き始めますか?

胃腸の働きを根本から立て直すお薬なので、即効性はありません。効果を実感するまでには、早くても1~2週間程度はかかります。焦らず、継続して服用することが大切です。

Q.お酒(アルコール)との飲み合わせは?

直接的な悪い相互作用はありませんが、ビールなど冷たいアルコールは、胃腸をさらに冷やしてしまいます。人参湯は胃腸を温める漢方なので、その働きと逆の作用になり、効果を妨げてしまう可能性があります。治療中は控えるのが望ましいです。

 

まとめ

人参湯は、体力・気力が落ち込み、胃腸が冷えきってしまった方のための、温かい「応援スープ」のような漢方薬です。つらい胃腸症状の根本的な原因である「冷え」にアプローチします。

「自分の胃腸の弱さは、冷えが原因かもしれない」
「体質に合った漢方薬で、根本から元気になりたい」

そんなときは、我慢せずに専門家である医師に相談しましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療なら、お忙しい方でもご自宅から気軽に医師の診察を受けることができます。

  • スマホやPCがあれば、全国どこからでも受診可能
  • 対面診療と料金は変わらず、安心してご利用いただけます
  • お忙しい方でも安心の年中無休で診療
  • 処方された薬は郵送、またはお近くの薬局で受け取り可能

通院の手間なく、ご自身の体質や症状に合った漢方薬についてじっくりと相談できます。長引く不調にお悩みの方は、ぜひお気軽にウチカラクリニックにご相談ください。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。