
ぜんそくやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をお持ちの方にとって、突然やってくる息苦しさや発作は本当につらいものです。
「サルタノール」は、そんなつらい発作が起きた時に、狭くなった気道をすばやく広げて呼吸を楽にしてくれる、発作治療薬(リリーバー)と呼ばれるタイプのお薬です。いざという時のための、
初めて使う方も、すでに使用している方も、ぜひ参考にしてください。
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サルタノールとは?効果は?
サルタノールの成分
サルタノールの正式名称は「サルタノール インヘラー」。インヘラーというのは吸入器の形の名前のことです。ここでは長いのでサルタノールと呼んでいきます。
サルタノールは、ぜんそくやCOPDなどの治療において、症状が急に悪化した時(急性発作時)に、一時的に症状を和らげるために使う「発作治療薬(リリーバー)」に分類されるお薬です。
毎日定期的に使用して病気の根本原因(気道の炎症など)を治療する「長期管理薬(コントローラー)」(例:吸入ステロイド薬など)とは、その目的と役割が全く異なります。
サルタノールの有効成分は「サルブタモール硫酸塩」です。これは、「短時間作用性β2刺激薬(SABA)」というグループのお薬で、例えばメプチンエアー(プロカテロール)などと同じ仲間です。
ぜんそくの発作時などには、空気の通り道である気管支の周りの筋肉が緊張してギュッと縮んでしまい、気道が狭くなって息苦しくなります。サルタノールは、この気管支の筋肉にある「β2受容体」という”スイッチ”のような部分を刺激します。すると、緊張して縮んでいた筋肉が緩んでリラックスし、狭くなっていた気道がすばやく広がります。その結果、空気の通りがスムーズになり、息苦しさやゼーゼーといった症状が和らぐのです。
サルタノールの効果
- 気管支喘息の発作時
- 小児喘息の発作時
- 肺気腫、急性・慢性気管支炎などの気道閉塞による呼吸困難時
サルタノールの主な効果は、発作によって急激に狭くなった気道を速やかに拡張させ、息苦しさ、咳、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)などの症状を一時的に和らげることです。
効果が現れるのが比較的早く、吸入してから数分程度で呼吸が楽になるのを感じられることが多いです。ただし、その効果が続く時間は4~6時間程度と、長くはないため、あくまで発作時の緊急的な対応(対症療法)として用いられます。
どんなときに使う?(適応疾患)
サルタノール インヘラーは、以下の疾患における気道閉塞性障害(気道が狭くなること)に基づく呼吸困難などの症状の緩解(症状を和らげること)に適応があります。主に気管支に作用します。
- 気管支喘息
- 小児喘息
- 肺気腫
- 急性気管支炎
- 慢性気管支炎
サルタノールの使い方(用法・用量)
正しい吸入・保管方法
サルタノールは、「定量噴霧式吸入器(MDI)」という、ボンベを押して薬を噴霧するタイプの吸入器です。お薬を確実に気道に届けるためには、正しい吸入方法を身につけておくことが非常に重要です。
- よく振る:キャップをつけたままの状態で、容器(ボンベ)を上下によく振りましょう。
- キャップを外す。
- 息を吐く: 無理のない範囲で、ゆっくりと「ふーっ」と息を吐ききります。
- 吸入口を口元へ: 吸入口を軽く歯でくわえるか、唇で隙間なくくわえます。(口から1~2cm離して構えるオープンマウス法も)
- 噴霧と吸入を同時に:息をゆっくりと吸い込み始めると同時に、容器(ボンベ)の底を「カチッ」と1回、最後まで押し込みます。 薬が噴霧されたら、そのまま焦らず3~5秒くらいかけて、ゆっくりと深く息を吸い続けます。
- 息を止める: 吸入器を口から離し、できるだけ長く(最低でも3~5秒、可能なら10秒程度)息を止めます。
- ゆっくり息を吐く: 鼻から、または口からゆっくりと息を吐き出します。
- 複数回吸入する場合: お医者さんから「1回に2吸入」と指示されている場合は、1分程度の間隔をあけてから、上記の手順3~7をもう一度繰り返します。
- キャップを閉める: 使用後は、吸入口を清潔にしてから、必ずキャップを閉めて保管しましょう。
吸入補助器(スペーサー)の活用
特に、噴霧と吸入のタイミングを合わせるのが難しい方(小さなお子さんやご高齢の方など)には、「吸入補助器(スペーサー)」という筒状の器具を使うことが強く推奨されます。
スペーサーを使うと、噴霧されたお薬が一時的に筒の中に溜まるため、タイミングを気にせず自分のペースでゆっくり吸い込むだけで、お薬をより効率的に気道へ届けることができます。スペーサーには様々な種類がありますので、ご希望の場合はお医者さんに相談してみてください。
用法/用量
メプチンエアーは、ぜんそく発作やCOPDの症状が急に悪化した時に、頓服(とんぷく:症状が出た時だけ使う)として使用するお薬です。
- 成人:1回に2吸入(サルブタモールとして200µg)します。
- 小児:1回に1吸入(サルブタモールとして100µg)します。
サルタノール使いすぎるとどうなるの? 知っておきたい危険性
1回の使用(お医者さんから指示された吸入回数)で呼吸が楽にならない場合でも、自己判断で続けて何度も吸入するのは大変危険です。
サルタノールのような発作治療薬(SABA)を、お医者さんの指示を超えて頻繁に使用したり、一度に決められた回数以上を吸入したり(過量投与)することは、体に様々な悪影響を及ぼす可能性があり、非常に危険です。
- 副作用が強く出やすくなる
動悸や手の震え、頭痛といった副作用がより強く、長く現れるようになり、不快感が増すだけでなく、体への負担も大きくなります。 - 心臓への負担が増加する
β2刺激薬の使いすぎは心臓の働きに影響を与え、特に心臓に持病がある方などでは、不整脈などの心血管系のトラブルを引き起こすリスクが高まります。 - 薬の効果が弱くなる(耐性の形成)
頻繁に使いすぎると、体が薬の刺激に慣れてしまい、β2受容体の反応が鈍くなることがあります。その結果、いざ本当に発作が起きた時に、サルタノールを使っても十分な効果が得られにくくなってしまう可能性があります。 - 重症な発作のリスクを高める
発作治療薬の使用頻度が増えているということは、根本的な気道の炎症コントロール(長期管理薬による治療)が不十分であるサインです。発作治療薬に頼りすぎていると、水面下で病状が悪化していることに気づかず、突然、命に関わるような重篤な発作(大発作)を引き起こしてしまう危険性が高まります。
サルタノールは、あくまで発作時の「一時しのぎ」のお薬です。
使う回数が増えている、最近効きが悪くなったと感じる場合は、絶対に「もっと使えばいいや」と考えずに、すぐに主治医に相談してください。 長期管理薬の種類や量を見直すなど、根本的な治療方針の変更が必要です。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、サルタノールをはじめとした吸入薬の処方や安定した喘息の治療なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

サルタノールの副作用
主な副作用
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
- 手指の震え
- 頭痛
これらは主に、有効成分(サルブタモール)が気管支以外の場所にあるβ2受容体も刺激してしまうことによって起こります。
その他、頻度はそれほど高くありませんが、吐き気、めまい、口の渇き、血圧の変動などが起こることもあります。
重篤な副作用としてアナフィラキシーショック(急激なアレルギー反応で、呼吸困難、血圧低下などが起こる)、重篤な血清カリウム値の低下などもあります。これらは、極めてまれですが、万が一体調に急激な異変を感じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
副作用が出たときの対処法
- 動悸や手の震えなどが出た
まずは安静にして様子を見ましょう。症状が非常に強い、なかなか治まらない、胸の痛みや強い息苦しさを伴うような場合は、医療機関を受診してください。 - 使いすぎている、効きが悪くなったと感じる
使用状況について主治医に正直に伝え、相談してください。
重篤な副作用の兆候(息苦しさ、全身の発疹、めまい、失神など)が現れた場合は、使用を中止して直ちに医師または救急医療機関に連絡してください。
サルタノールの注意事項(禁忌)
使用に注意が必要な方や飲み合わせが悪い薬
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の方: 動悸などの副作用が出やすくなる
- 高血圧の方: 血圧が一時的に上昇
- 心臓に病気(不整脈、心不全、虚血性心疾患など)をお持ちの方: 心臓への負担が増す可能性
- 糖尿病の方: 血糖値が一時的に上昇
- 低酸素血症の状態にある方
- カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプロテレノールなど): 不整脈や、場合によっては心停止を引き起こすリスク
- キサンチン誘導体(テオフィリンなど): 低カリウム血症や動悸などの心血管系副作用のリスクが高まる
- ステロイド剤、利尿剤: 低カリウム血症のリスクを高める可能性
- β遮断薬(高血圧や心臓病などの治療に使われる一部の薬): 気管支を広げる効果を弱める
現在使っているお薬(飲み薬、貼り薬、塗り薬、他の吸入薬、市販薬、サプリメントなど全て)は、必ずお医者さんや薬剤師さんに伝えるようにしましょう。
使用上の注意
- 用法・用量を守り、絶対に使いすぎない
医師から指示された1回の吸入回数、そして1日の使用回数の上限(または、どのような状況になったら受診するか)を必ず守ってください。繰り返しになりますが、効かないからといって安易に使い続けるのは非常に危険です。 - 発作治療薬(リリーバー)であることを常に意識する
毎日定期的に使うお薬ではありません。発作時、または医師の指示があった時(例:運動前など)のみ使用します。 - 長期管理薬(コントローラー)をきちんと使うことの重要性
発作を起こさないためには、日頃から長期管理薬(吸入ステロイド薬など)を指示通りにしっかり使うことが最も大切です。発作治療薬の使用頻度を減らすことにつながります。 - 常に携帯すること
いつ発作が起こるかわからないため、外出時なども忘れずに携帯するようにしましょう。 - 吸入方法を定期的に確認する
正しく吸入できていないと十分な効果が得られません。時々、薬剤師さんなどに吸入方法をチェックしてもらうと安心です。 - 残量の確認方法
サルタノールにはカウンターが付いていないため、残量が非常に分かりにくいです。使用開始日を本体や箱に記入しておき、おおよその使用回数を記録する、処方時に医師や薬剤師に残量管理の方法を確認する、常に予備を1本持っておくなどの対策が必要です。「振っても音がするからまだ大丈夫」というのは間違いですので注意しましょう。
吸入を忘れたら?
サルタノールは発作時に使用するお薬なので、「吸入を忘れる」という状況は通常ありません。
もし、携帯するのを忘れて外出先などで発作が起きてしまった場合は、無理をせず安静にし、可能であれば周囲の人に助けを求める、状況によっては救急要請をするなどの対応を考えましょう。
サルタノールに市販薬はある?値段は?
市販薬
サルタノールは医療用医薬品ですので、医師の処方箋が必要です。
ドラッグストアなどで購入することはできません。
ジェネリック名
サルタノールの有効成分である「サルブタモール硫酸塩」を含む吸入液(ネブライザーで使用するタイプ)や、ドライパウダー吸入剤(例:ブリーズヘラーを使用するものなど)には、ジェネリック医薬品が存在します。
しかし、サルタノールと同じ定量噴霧式吸入器(MDI)のタイプのジェネリック医薬品は、現在(2025年5月時点)国内では発売されていません。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- サルタノールインヘラー100μg(13.7g:約200吸入分): 1容器あたり 約1,078.0円
※2025年4月29日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
よくある質問(FAQ)
Q. 妊娠中や授乳中でも使える?
現在使われている喘息治療薬の中では比較的安全とされていますが、必ず医師に相談してください。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、慎重に使用されます。自己判断での使用や中止は絶対にしないでください。
Q. 小児でも使える?
はい、小児でも使用できますが、用法用量が異なります(通常、小児は1回1吸入)。また、噴霧と吸入のタイミングを合わせるには練習が必要なので、大人がサポートしてあげることが大切です。
Q. 車の運転への影響は?
副作用としてめまいなどが起こる可能性はありますが、通常、運転能力に大きな影響を与えることは少ないと考えられています。ただし、副作用が出ている時や、発作によって体調が優れない時の運転は避けるべきです。
Q. いつから効果が出ますか?効果が出るまでの期間は?
サルタノールは効果が現れるのが非常に早いのが特徴です。吸入後、数分程度で気管支が広がり始め、呼吸が楽になるのを感じられることが多いです。
Q. お酒を飲んでも大丈夫?
アルコールとの直接的な相互作用は少ないとされていますが、心臓への負担を増やす可能性があるため、併用は推奨されません。 また、飲酒自体がぜんそく発作の引き金になることもあります。
Q. 吸入後にうがいは必要ですか?
サルタノールはステロイド薬ではないため、うがいは必須ではありません。 ただ、吸入後に口の中に薬剤が残るのが気になる場合や、口の渇きを感じる場合は、うがいをしても問題ありません。
Q. 使いすぎるとどうなりますか?
動悸や手の震えなどの副作用が強く出たり、心臓に負担がかかったり、薬が効きにくくなったり、重症な発作につながるリスクが高まったりします。 絶対に指示された回数以上は使わないでください。使用回数が増えたらすぐに医師に相談が必要です。
Q. 毎日使ってもいいですか?
絶対にダメです。 サルタノールは発作が起きた時だけ使うお薬です。毎日使う必要があるということは、ぜんそくやCOPDのコントロールが非常に悪い状態です。すぐに主治医に相談し、長期管理薬(コントローラー)による根本的な治療を見直してもらう必要があります。
Q. メプチンエアーとの違いは何ですか?
どちらも同じSABA(短時間作用性β2刺激薬)で、発作時に使うお薬ですが、有効成分が異なります(サルタノール:サルブタモール、メプチン:プロカテロール)。効果の現れ方や持続時間、副作用の出やすさなどに若干の違いがあると言われており、どちらが合うかは個人差があります。
Q.残量はどうやって確認するのですか?
残念ながらカウンターが付いていないため、正確な残量確認は難しいです。使用開始日を本体に記入し、おおよその使用回数を記録する、常に予備を携帯するなどの工夫が必要です。お医者さんや薬剤師さんに残量管理の方法を相談しましょう。
まとめ
サルタノールは、ぜんそくやCOPDの発作時に、狭くなった気道をすばやく広げて息苦しさを和らげてくれる、非常に重要なお薬(発作治療薬:リリーバー)です。いざという時の「お守り」として、正しい使い方をマスターし、常に携帯しておくことが大切です。
しかし、その一方で、サルタノールの「使いすぎ」は副作用のリスクを高めるだけでなく、根本的な病状の悪化を見逃し、重篤な発作につながる危険性もはらんでいます。
サルタノールを安全かつ効果的に使うためには、
- 定量噴霧式吸入器(MDI)の正しい使い方を確実に身につけること(必要ならスペーサーも活用)
- 医師から指示された用法・用量を必ず守り、絶対に使いすぎないこと
- あくまで発作治療薬であり、毎日定期的に使う薬ではないことをしっかり理解すること
- 使用頻度が増えたり、効きが悪くなったと感じたら、すぐに主治医に相談すること
- 日頃から長期管理薬(コントローラー)を指示通りにきちんと使い、発作そのものを起こさないように努めること
これらの点をしっかりと心に留めておくことが何よりも重要です。
使い方や副作用、残量の管理方法など、もし分からないことや不安なことがあれば、遠慮なくお医者さんや薬剤師さんに相談してください。
この記事が、サルタノールというお薬を正しく理解し、いざという時に適切に、そして安全に使うための一助となれば幸いです。発作を上手にコントロールし、安心して毎日を送れるよう応援しています。
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