【漢方】十全大補湯のすごい効果・副作用を医師が解説

十全大補湯

「大きな手術や病気をしてから、すっかり体力が落ちてしまった」 「顔色が悪く、貧血気味で、いつも疲れきっている」 「食欲もなく、手足が冷えてぐっすり眠れない」

そんな、心と体がエネルギー不足で消耗しきった状態のときに、漢方薬の「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」が処方されることがあります。

今回は、この十全大補湯がどのようなお薬なのか、その効果の仕組みや副作用、そして正しい飲み方について、基本からやさしく解説していきます。

 

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十全大補湯とは?効果は?

十全大補湯は、消耗した「気(き)」と「血(けつ)」の両方を強力に補うことで、心と体の回復を助ける漢方薬です。「補剤(ほざい)」という、体力を補うタイプの漢方の代表格で、「十種類の生薬で、気と血を完全に、大きく補う」という意味の名前がついています。

気力・体力・栄養をまとめてチャージする、漢方のパワフルな栄養剤で、病後や術後で体力が著しく低下している方、慢性的な疲労や貧血に悩む方に用いられます。

医療用では、主に「ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用)」のように、製薬会社名がついたエキス剤(粉薬)が処方されます。

十全大補湯の成分

十全大補湯は、以下の10種類の生薬(しょうやく)で構成されています。
エネルギーを補う漢方の基本処方「四君子湯(しくんしとう)」と、栄養を補う漢方の基本処方「四物湯(しもつとう)」を合体させ、さらに2つの生薬を加えています。

  • 人参(ニンジン)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)
     →エネルギー(気)を補う「四君子湯」グループ。
  • 当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、地黄(ジオウ)
     →栄養と潤い(血)を補う「四物湯」グループ。
  • 黄耆(オウギ)、桂皮(ケイヒ)
     →さらに働きを高めるサポートグループ。

※メーカーにより白朮/蒼朮の違いあり

漢方では、手術や病気、過労などで体力をひどく消耗すると、体を動かすエネルギーである「気」と、全身に栄養と潤いを運ぶ「血」の両方が空っぽの状態(気血両虚)になると考えます。これが、激しい疲労感や貧血、食欲不振、手足の冷えなどの原因となります。

十全大補湯は、「気」を補うチームと「血」を補うチームが協力して、まず体の土台を立て直します。
さらに、気を補う力を高める黄耆と、体を温めて巡りを良くする桂皮が加わることで、総合的に体力を回復させ、消耗しきった体を元気な状態へと導きます。

十全大補湯の効果

  • 気力・体力を補い、疲労倦怠感を改善する効果
  • 栄養状態を良くし、貧血や皮膚の乾燥を改善する効果
  • 胃腸の働きを高め、食欲不振を改善する効果

どんなときに使う?(適応疾患・部位)

  • 病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

十全大補湯はオンライン診療で出せる?

「病後の体力がなかなか戻らない」「急に症状が出たけど、病院に行く時間がない…」

そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。

十全大補湯のような漢方も、医師が適切と判断すれば、オンライン診療で相談したり、処方を受けたりすることが可能です。

ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。

ウチカラクリニックでも、
十全大補湯に関するご相談や継続的な処方をオンライン診療にて承っております。

特に、症状が安定している場合の継続処方や、お薬への切り替え相談などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。

十全大補湯の使い方(用法・用量)

1日2〜3回、1回1包を食前または食間(食事と食事の間)の空腹時に服用するのが基本です。

メーカーにより1包の量などが異なります。詳細は医師や薬剤師の指示に従ってください。

通常、そのまま水や白湯で服用しますが、お湯に溶かして、香りや温かさを感じながら飲むと、より効果的とされることもあります。

十全大補湯の副作用

漢方薬は作用が穏やかですが、副作用が全くないわけではありません。

主な副作用

主な副作用として、発疹、かゆみ、食欲不振、胃の不快感、下痢などが報告されています。

また、甘草(カンゾウ)による「偽アルドステロン症」(むくみ、血圧上昇など)や低K血症に伴うミオパチー、肝機能障害・黄疸にも注意が必要です。

副作用への対処法

  • 胃腸症状: 配合されている地黄(ジオウ)の影響で、もともと胃腸が弱い方は胃もたれなどを感じることがあります。
  • むくみやだるさ: 「偽アルドステロン症」の初期症状かもしれません。
  • 気になる症状が出た場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

十全大補湯の注意事項(禁忌)

使ってはいけない方

  • 過去にこの薬の成分でアレルギー症状を起こしたことがある方(禁忌)
  • 体力があり、暑がりで、食欲旺盛な「実証」タイプの方(栄養過多になり、症状が悪化することがあります)
  • 高血圧、心臓病、腎臓病のある方

併用に注意が必要な薬

  • 甘草(カンゾウ)を含む他の漢方薬や医薬品

使用上の注意

漢方薬は、症状だけでなく、その人の体質(「証」といいます)に合わせて選ばれます。

十全大補湯は、後や術後などで心身ともに消耗し、顔色が悪く、疲れやすいといった「虚証(きょしょう)」で、「気血両虚(きけつりょうきょ)」の状態の方に適しています。

保管方法

  • 直射日光や湿気を避け、涼しい場所に保管してください。
  • 子どもの手の届かない場所へ。

飲み忘れたら?

気づいた時点で、できるだけ早く1回分を服用してください。

ただし、次に飲む時間が近い場合は、忘れた分はとばして、次の時間に1回分だけ飲みましょう。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

ウチカラクリニックのオンライン診療でも、十全大補湯をはじめとした漢方の処方なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。

十全大補湯に市販薬はある?値段は?

市販薬

十全大補湯は、ドラッグストアなどで購入できる市販薬も多数販売されています。

  • 「クラシエ」漢方十全大補湯エキス錠 (クラシエ)
  • ツムラの漢方 十全大補湯エキス顆粒 (ツムラ)
  • JPS漢方顆粒-70号(十全大補湯) (ジェーピーエス製薬)

製品によって錠剤や顆粒といった剤形や、用法・用量が異なりますので、購入の際はパッケージをよく確認し、薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

ジェネリック

漢方薬には、西洋薬のような「ジェネリック医薬品」という概念は厳密にはありません。

しかし、ツムラ以外にも、クラシエなど、複数のメーカーが同じ「十全大補湯」という名称で医療用エキス製剤を製造しており、薬価もそれぞれ異なります。

薬価

時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。

  • ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用):約46.0円/包(3割負担の場合:約13.8円)
  • クラシエ十全大補湯エキス細粒2.5g(医療用):約52.5円/包(3割負担の場合:約15.75円)

※2025年9月15日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。

添付文書

ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用)

よくある質問(FAQ)

Q.妊婦・授乳中でも飲めますか?

自己判断での服用は避け、必ず医師に相談してください。妊娠中は体の状態が大きく変化するため、専門家による慎重な判断が必要です。

Q.子どもでも飲めますか?

はい、お子さんの虚弱体質や食欲不振などに処方されることがあります。その場合、年齢や体重に合わせて服用量が細かく調整されます。

Q.飲むと眠くなりますか?運転はできますか?

眠くなる成分は含まれていないため、運転や機械の操作に影響はありません。

Q.いつから効き始めますか?

体を土台から作り直していく漢方薬なので、即効性はありません。効果を実感するまでには、早くても2週間~1ヶ月程度はかかります。焦らず、じっくりと継続して服用することが大切です。

Q.お酒(アルコール)との飲み合わせは?

直接的な悪い相互作用はありませんが、十全大補湯は弱った体を回復させるための漢方です。アルコールは体に負担をかけるため、治療中は飲酒を控えるのが望ましいです。

Q.「人参養栄湯」との違いは何ですか?

どちらも気と血を補う、とてもよく似た漢方薬です。

  • 人参養栄湯: 十全大補湯をベースに、精神を安定させる生薬や、乾いた咳を鎮める生薬を加えて、より「心の疲れ」や「呼吸器の弱り」に寄り添った処方になっています。
  • 十全大補湯: 気力・体力をパワフルに補う「基本の総合栄養剤」のイメージです。

 

まとめ

十全大補湯は、病後や術後、慢性的な疲労などで、気力・体力・栄養のすべてが不足してしまった状態を、力強くサポートしてくれる漢方薬の王様のような存在です。

「何をしても疲れが取れない、気力が湧かない」
「病気は治ったのに、本調子にはほど遠い」

そんなときは、一人で抱え込まずに専門家である医師に相談してみましょう。

ウチカラクリニックのオンライン診療なら、お忙しい方でもご自宅から気軽に医師の診察を受けることができます。

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通院の手間なく、ご自身の体質や症状に合った漢方薬についてじっくりと相談できます。長引く不調にお悩みの方は、ぜひお気軽にウチカラクリニックにご相談ください。

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ウチカラクリニック代表医師

経歴

東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。