「更年期障害のせいか、急にイライラしたり、カーッと暑くなったりする」「PMS（月経前症候群）で、気分の浮き沈みが激しくてつらい」
そんな、女性特有のホルモンバランスの乱れに伴う、心と体のさまざまな不調。 「加味逍瘍散（カミショウヨウサン）」は、こうした「なんとなく不調」を、心身両面から穏やかに整える、婦人科領域で最も代表的な漢方薬の一つです。
この記事では、そんな加味逍遙散について、漢方ならではの効果の仕組みや副作用、そして正しい飲み方を、医師が分かりやすく解説していきます。
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加味逍遥散とは？効果は？
加味逍遙散（カミショウヨウサン）は、ストレスやホルモンバランスの乱れによって滞った「気（エネルギー）」と「血（けつ）」の巡りを改善し、体にこもった余分な熱を冷ますことで、イライラやのぼせ、不眠といった精神神経症状と、肩こりや疲れやすさなどの身体症状の両方を和らげる漢方薬です。
女性の不調を和らげる漢方薬として非常に有名です。
医療用では、主に「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」のように、製薬会社名がついたエキス剤（粉薬）が処方されます。
加味逍遥散の成分
加味逍遥散は、以下の10種類の生薬（しょうやく）で構成されています。
- 柴胡（サイコ）、芍薬（シャクヤク）、当帰（トウキ）、白朮（ビャクジュツ）、茯苓（ブクリョウ）、甘草（カンゾウ）
→気や血の巡りを整え、バランスを良くする基本の組み合わせ。 - 生姜（ショウキョウ）、薄荷（ハッカ）
→滞った気の巡りをスッとさせ、リフレッシュさせる。 - 山梔子（サンシシ）、牡丹皮（ボタンピ）
→この2つが、イライラやのぼせの原因となる「熱」を鎮める重要な役割を果たします。
漢方では、ストレスやホルモンバランスの乱れで、感情を司る「肝（かん）」の働きが乱れ、気の巡りが滞る（「気滞」）と考えます。この気滞が熱を持つと、イライラやホットフラッシュ、不眠などの症状が現れます。加味逍遙散は、気の巡りを良くしながら、こもった熱を冷ますことで、心身の不調を穏やかに整えます。
加味逍遥散の効果
気・血・水のバランスを整えることで、非常に幅広い症状に効果を発揮します。
- 精神神経症状：イライラ、怒りっぽい、不安感、不眠、のぼせ感
- 身体症状：肩こり、疲れやすい、頭痛、めまい、便秘、冷え症
どんなときに使う？（適応疾患・部位）
- 体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症状
- 冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症、神経症
加味逍遥散はオンライン診療で出せる？
「更年期障害がつらい…」「急に症状が出たけど、病院に行く時間がない…」
そんな方に知っていただきたいのが、オンライン診療という選択肢です。
加味逍遥散のような漢方も、医師が適切と判断すれば、オンライン診療で相談したり、処方を受けたりすることが可能です。
ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。
ウチカラクリニックでも、
加味逍遥散に関するご相談や継続的な処方をオンライン診療にて承っております。
特に、症状が安定している場合の継続処方や、お薬への切り替え相談などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。
加味逍遥散の使い方（用法・用量）
1日2〜3回、1回1包（2.5g）を食前または食間（食事と食事の間）の空腹時に服用するのが基本です。年齢や体重、症状により調整されるので、必ず医師の指示通りに使用してください。
通常、そのまま水や白湯で服用しますが、お湯に溶かして、香りや温かさを感じながら飲むと、より効果的とされることもあります。
加味逍遥散の副作用
漢方薬は作用が穏やかですが、副作用が全くないわけではありません。
主な副作用
- 発疹、かゆみなどの皮膚症状
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、下痢などの消化器症状
構成生薬の「甘草（カンゾウ）」の長期・大量服用により、まれに偽アルドステロン症が起こることがあります。主な症状は、むくみ、血圧の上昇、手足の脱力感・しびれ、筋肉痛などです。
頻度は極めてまれですが、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症にも長期服用する場合には注意が必要です。
副作用が出たときの対処法
何か異常を感じた場合は、服用を中止し、速やかに医師や薬剤師に相談してください。
加味逍遥散の注意事項（禁忌）
使ってはいけない方
- 過去にこの薬の成分でアレルギー症状を起こしたことがある方（禁忌）
- 胃腸の弱い方（食欲不振や胃部不快感が現れることがある）
- ご高齢の方
- 高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けている方
- 妊娠初期→子宮収縮リスクは低いが要相談
併用に注意が必要な薬
- 現在、他の漢方薬（特に「甘草」を含むもの）を服用中の方
- ループ／チアジド利尿薬
- ステロイド薬→甘草重複で低K血症
- ほてり改善薬（ブラックコホシュなど）→作用重複
使用上の注意
漢方薬は、症状だけでなく、その人の体質（「証」といいます）に合わせて選ばれます。
加味逍遥散は、比較的体力がなく、疲れやすく、精神的な症状が出やすい「虚証（きょしょう）」から「中間証」の方向けの処方です。
1日3回きちんと続け、2週間経っても変化がなければ医師へ相談しましょう。
保管方法
- 直射日光・高温多湿を避け、室温で保管してください。
- 子どもの手の届かない場所へ。
飲み忘れたら？
気づいた時点で、できるだけ早く1回分を服用してください。
ただし、次に飲む時間が近い場合は、忘れた分はとばして、次の時間に1回分だけ飲みましょう。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。
ウチカラクリニックのオンライン診療でも、加味逍遥散をはじめとした漢方の処方なども行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。
加味逍遥散に市販薬はある？値段は？
市販薬
「ツムラ漢方加味逍遥散エキス顆粒」や「クラシエ薬品「クラシエ」漢方加味逍遥散エキス顆粒」などの名前で、多くのメーカーから市販されています。
ジェネリック
漢方薬には、西洋薬のような「ジェネリック医薬品」という概念は厳密にはありません。
しかし、ツムラ以外にも、クラシエなど、複数のメーカーが同じ「加味逍遥散」という名称で医療用エキス製剤を製造しており、薬価もそれぞれ異なります。
薬価
時期や規格によって金額は変わってきますが、以下のような目安です。
- ツムラ加味逍遥散エキス顆粒（医療用）：約27.7円/包（3割負担の場合：約8円）
- クラシエ加味逍遥散エキス細粒（医療用）：約14.6円/包（3割負担の場合：約4円）
※2025年6月4日現在
※薬価は改定などで変わる可能性があります。
添付文書
よくある質問（FAQ）
Q. 妊婦や授乳中でも使えますか？
配合生薬の「牡丹皮」などの影響を考慮する必要があるため、自己判断での服用は絶対にやめてください。必ず医師に相談し、慎重な判断のもとで使用されます。
Q. 子供でも使えますか？
主に成人の、特に女性に使われる漢方薬であり、通常、小児には使用しません。
Q. いつから効きますか？
漢方薬は、体質をじっくりと改善していくお薬です。即効性は期待しにくいです。個人差はありますが、まずは1ヶ月程度、毎日きちんと飲み続けることで、イライラや気分の浮き沈み、体の不調などに少しずつ変化が現れてくることが多いです。早い人で1〜2週間、3〜4週間で安定する例が多いです。
Q. ホルモン補充療法（HRT）との違いは何ですか？
HRTが、不足した女性ホルモンを直接「補充」するのに対し、加味逍遙散は、ホルモンバランスの乱れによって生じた気・血の滞りや熱といった「体全体のバランスの乱れ」を整えることで、様々な症状を和らげます。
Q. 男性でも飲めますか？
はい、男性でも飲めます。 女性特有の薬というイメージが強いですが、「体力があまりなく、疲れやすく、精神不安やイライラがある」という体質（証）が合えば、男性の更年期障害やストレスによる不調にも効果が期待できます。
まとめ
加味逍遙散は、気と血の巡りを整え、体にこもった熱を冷ますことで、更年期やPMS、ストレスなどによる、イライラ・不安・のぼせ・不眠といった心身の様々な不調を穏やかに改善する、婦人科領域で最も代表的な漢方薬の一つです。
効果を実感するには、毎日コツコツと飲み続けることが大切です。色々な症状が出てきて「何だか分からないけどつらい」という方は、一度、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみてはいかがでしょうか。
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