すい臓がんの症状・原因・検査について【医師解説】
こんにちは。ウチカラクリニック健康メディア「予防医学大辞典」です。
今回は「すい臓がん(膵臓がん)」について症状・検査方法など医師の視点から徹底解説していきます。
「沈黙の臓器」これはすい臓という臓器の別名です。
すい臓がんは本当に症状が出にくいのでこう呼ばれています。
元プロ野球選手の星野仙一さん、大相撲の元逆鉾の井筒親方や元千代の富士の九重親方など、屈強な著名人の方々も犠牲になった怖いがんです。
そしてがんの中で最も生存率が低いものが、まさにすい臓がん。
現場の医師にとっても早期発見が非常に難しく、悲しい思いをする事が多いがんなんです。
そんなすい臓がんですが、今回は引き起こされる症状や、現代の医学でわかっている事、日常できる対策についてしっかりお話します。
できる事を未然にできる限り行う為に、是非今回のお話は覚えておきましょう。
INDEX
「すい臓」とは?体のどこに位置している?
まず、「すい臓」という臓器にいまいちなじみのない方も多いと思うので、すい臓について簡単な解説をしておきます。
そもそもすい臓がどこにあるか、皆さんご存じでしょうか?
すい臓は実は胃の裏側にあります。おたまじゃくしのような形をしているんです。
そして胃や肝臓など、多くの臓器は腹膜という膜に覆われているのですが、膵臓はその腹膜には覆われておらず、膜の外の背中側に存在しています。
腹膜の後ろ側にある臓器なので、すい臓は「後腹膜臓器」という呼ばれ方をする事もあるんです。
この構造がのちに紹介するすい臓がんの症状にも関係してくるので、覚えておいて下さいね。
すい臓の働きとは?
すい臓の主な働きは2つあります。
すい臓の働き①消化酵素の分泌
一つ目は「食べ物を消化する酵素の分泌」です。
・糖質を分解する「アミラーゼ」
・中性脂肪を分解する「リパーゼ」
・タンパク質を分解する「トリプシン」
このような食べ物の消化に必要な酵素たちを作る、という重要な役割があるんですね。
そしてすい臓は胃の下の食べ物の通り道である十二指腸、という場所と繋がっていて、そこにすい液を送りこむ事で食べ物の消化の援護射撃をしている、いわば「縁の下の力持ち」なんです。
すい臓の働き①インスリンの分泌
また2つめの役割としては、「インスリン」と呼ばれる人間にとって死ぬほど重要なホルモンを作っています。
このインスリンの役割は、「血糖値のコントロール」なんですね。
インスリンのおかげで人間は血糖値の調整ができていて、インスリンが不足していると様々な弊害が生じてきます。
例えば糖尿病の中でも、1型糖尿病という種類のものは、すい臓の中の「β細胞」というインスリンを作る工場の役割がある細胞が上手く機能しない為に、血糖値のコントロールができず糖尿病になってしまう、というものなんです。
普段あまり気にかけないであろうすい臓という臓器のすばらしさ、重要性についておわり頂けたでしょうか。
ではそんなすい臓にがんができた時の検査や治療は、実際の現場ではどのように行われるのでしょうか?
すい臓がんの検査法は?治療法は?
まずよく「すい臓がんは血液検査でわかるんですか?」という質問をされる事があります。
結論からいうと、血液検査で診断はつけられません。
確かに、血液検査では腫瘍マーカーと呼ばれる、ある種のがんが存在すると数値が上がりやすいタンパク質を測定できます。
すい臓がんにもその腫瘍マーカーは存在はするのですが、(CA19-9,Dupan-2)すい臓がんがあっても上がらない事もあれば、なくても上がる事があるので、疑わしい人を対象に参考にはなれど決定的な診断には使えないんですね。
すい臓がんの診断は主に画像を使った検査が使われます。
・超音波をお腹にあてる検査(腹部エコー)
・造影剤を使ってCTを撮影する検査
等を行うことで、すい臓のおたまじゃくしの頭の部分にできた腫瘍を発見できたり、またすい臓の中に「膵管」という管が通っているのですが、その管が腫瘍でせきとめられることで拡張する事があり、その管の拡張からがんの発見に繋がる事もあります。
またすい臓は十二指腸と繋がっているので、胃カメラを使ってカメラの先っぽを十二指腸の所までたどりつかせて、そこから膵臓の方へ細い管をもぐりこませ細胞をとってきて、良性か悪性か診断するという方法もあるんです。
すい臓がんの治療としては、早期の段階で発見する事ができれば手術を行う事ができます。
ただし、すい臓は先ほど説明したように十二指腸と繋がっていたり、かなり複雑に入り組んでおり、すい臓だけをくるりと取り出す事はできず、すい臓の周りの十二指腸や、胃の下の部分の切除も余儀なくされる場合があります。
例えば膵臓のおたまじゃくしの頭の部分、膵頭部、と呼ぶのですが、ここのがんに対する手術方法を膵頭十二指腸切除術、通称「PD手術」と呼びます。
このPD手術は外科医にとっても患者さんにとっても、手術時間がかなり長い、体力のいる手術になる事が多いんですね。
また、転移があれば他のがんと同様に放射線を使った治療や、抗がん剤を用いた治療を行う事になります。
すい臓がんの症状とは?何をチェックしたらよい?
ではすい臓がんの症状について解説していきます。
すい臓がんの症状:①お腹や背中の痛み
まず、すい臓がんにより「痛み」の症状が起こる場合があります。
場所としては、お腹や、はたまた背中の痛みとして現れる事があります。
先ほど説明したように、膵臓は胃のうらに存在する「後腹膜臓器」です。
この後腹膜臓器からのサインに共通する事として、背中に異常が生じる事があるんです。
ただお腹や背中の痛みは色んな原因で起こりますので、=すい臓がんだ!と言いたい訳ではありません。
この場合の痛みも、すい臓がん自体によるもの、というよりは腫瘍によって、すい臓の中を走っている膵管という管がつまってしまい、中で逃げ場のなくなった膵液がたまり結果として炎症が起きる事が原因なんです。「膵炎」という状態です。
膵炎自体はお酒の飲み過ぎや、中性脂肪が高すぎる事で引き起こされる場合もあります。
また例えば腎臓も後腹膜臓器なのですが、腎臓の炎症や尿管結石などでも同様に背中が痛くなる事がありますので覚えておいて下さい。
もう少し、すい臓がんに特徴的な症状について見ていきましょう。
すい臓がんの症状:②黄疸
次に紹介するのは、「黄疸」です。
黄疸とは言葉は難しいですが、意味自体は簡単で、要するに「見た目が黄色くなること」なんです。
シンプルに皮膚が黄色がかった色になっている場合は、すい臓がんの可能性があります。
この黄疸は「胆汁」という液体が原因なんです。
まず胆汁とは、脂肪の吸収を助ける役割のある液体で肝臓で作られて、胆管という管を通って消化管に運ばれます。
この通り道である胆管は実は膵臓を貫いて走っているので、膵臓にガンができるとこの胆管を圧迫してしまい、胆汁が逆流していってしまう、という仕組みなんです。
胆汁が逆流すると全身をめぐり、この胆汁の作用によって皮膚などが黄色くなってしまうんですね。ひどい場合はかゆみを伴ってくる場合もあります。これは胆汁にくっついているビリルビンという成分が原因なんです。
ただ日焼けをしている人や、もともと皮膚が黄色っぽい人など、皮膚だけだと個人差があるので、わかりにくい場合があります。
そんな時にチェックして欲しいポイントが3つあります。
一つ目、まずは眼をチェックしてみて下さい。眼はほとんどの人が白いので、皆さん確認がしやすいですし、皮膚が黄色くなるより前に目の方に黄疸が出てくる事が多いんです。
確認の仕方としては、鏡をみて、眼をあっかんべーしてみて、黄色がかっている場合は黄疸のサインの可能性があります。一度チェックしてみて下さい。
そしてもう2つ併せてチェックして欲しいのがおしっことうんちなんです。
実は、胆汁はほとんどが十二指腸に出されてから腸を通り、便として体の外に出されます。
しかし、すい臓がんのせいで、通り道がふさがれてしまい、逆流して全身めぐった胆汁が最後にたどりつくのが腎臓なんです。
要するに、本来便として排出される胆汁が尿として排出されてしまうんですね。
この場合どのような現象が起こるでしょうか?
尿は胆汁にくっついているビリルビンの影響で色が濃くなりますし、便は反対に胆汁が抜けてしまい薄い、茶色ではなく白に近いような色になるんです。
膵臓の異常がめぐりめぐって尿や便のサインとして現れる事があるんですね。
眼と合わせて、おしっこやうんちの色にも時には気を配るようにしましょう。
まあ黄疸自体の原因には、膵臓がん以外にもあるんですが、どれも放置していいものはないので、もう明らかに怪しい場合は病院を受診しましょう。
ちなみに余談ですが、ミカンを食べ過ぎても手足が黄色くなる事がありますが、こちらは黄疸とは何の関係もないのでご安心下さい。
すい臓がんの症状:③心当たりのない急な血糖値の上昇
また厳密には症状ではありませんが「心当たりのない急な血糖値の上昇」こちらも膵臓癌のサインである場合があります。
先ほど説明したように、膵臓では血糖値をコントロールするインスリンというホルモンを作っており、膵臓にがんができるとこのインスリンの工場が上手く機能しなくなり、急な血糖値の上昇につながってしまう、という場合があるんです。
多くの場合は血糖値の乱れは普段の生活習慣で暴飲暴食をしたり、在宅勤務で全く歩かなくなったりなど、何か思いあたる原因があるものです。
心当たりが全然ないのに健康診断などで血糖値や、血糖値の指標になるHbA1cの数値が急激に短い期間で上昇している場合は要注意なんです。
すい臓がんの原因とは?予防法とは?
はい、ではこんな恐ろしいすい臓がんなのですが、予防法はあるのでしょうか?
まず、がん検診に関してですが、現状は有効とされる予防法は存在していません。
アメリカの予防医学専門委員会、通称USPSTFでも、すい臓がんの検診はグレードD、要するに受けるとメリットより検査の合併症などデメリットの方が大きいだろうという見解が示されています。
検査の所で紹介した腫瘍マーカーや超音波の検査を、健康な人に行うがん検診に取り入れても結果的には成果が出なかった、そういう事なんですね。
また近年話題になっている「線虫がん検診」という検査をご存じですか?メディアで見た事がある人もいるかもしれません。
こちらは線虫、と呼ばれる1mmくらいの細長い生き物が、人の尿に含まれるがんの匂いを検知する、という仕組みをがん検診に使用するという超画期的な検査方法で、よく話題になっている方法なんです。
こちらですい臓がんをはじめとしたがんの早期発見に繋がる、という近未来的な検査なんですね。
ただ、この線虫がん検診に関しても、まだ明らかに有効、というデータはありませんし、その上で検査を受けた後の精密検査が高額な自費診療になったり、逆に精密検査の害の方が大きいのではないか、とか、そもそもがんがある確率がかなり低い若者に行うのは問題だ!とか、色々課題が山積みなんです。
詳しくはダイヤモンド・オンラインに記事としても寄稿させて頂きましたので、そちらも併せてご覧ください。
ただ全然線虫自体の未来の可能性を否定する訳ではないので、今後の正しい研究に期待したいと思います。
原因としては、喫煙や大量の飲酒がリスクを上げます。
また糖尿病のある人は、糖尿病がすい臓がんのリスクを2倍にした、という論文もあるので血糖値のコントロールも気を付けましょう。
すい臓がんの症状や予防法について まとめ
では今回の内容をまとめておきます。
①まず現段階では明確に効果が証明されているすい臓がん検診はない事を知り、真新しい情報に踊らされない事。
②すい臓がんのリスクとされる行動(喫煙・大量飲酒など)を控えること。血糖値のコントロールも気を付けましょう。
③2次予防として今回紹介したすい臓がんの症状を知っておき、もし怪しい場合はすぐ病院に行く事。
今回はこの3ポイントを絶対に覚えて帰ってくださいね。
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