【危険】知らないと後悔する。全身で動脈硬化が進行すると起きる要注意な危険サイン。血管が詰まる寸前必ずこうなる。動脈硬化を防ぐ術はないのか。医師が完全解説。

動脈硬化の最も恐ろしい特徴は、進行して血管が詰まる寸前まで症状が出ないことです。

動脈硬化が進行すると、頭からつま先まで全身のあらゆる場所を走っている動脈で次々と異変が起きます。

全身あちこちで起きるからこそ症状は非常に様々です。

自覚症状がないまま進行し、ある日突然詰まってしまい、意外な症状が起きることも。

そこで今回は静かな殺し屋、サイレントキラーと呼ばれる動脈硬化について

  • 動脈硬化が進行すると何が起きるのか。
  • 体のどんな臓器に影響があるのか。
  • どんな人が動脈硬化が起きやすいのか、血管守るために私たちは何をすればいいのか。

一生のどこかできっと役に立つ知識なので、是非家族や友人でシェアをして、命に関わる動脈硬化から体を守るための医学知識を身に着けていきましょう!

主な診療科目:一般内科、皮膚科、小児科、婦人科、アレルギー外来など

①脳と動脈硬化

では早速動脈硬化が進行している、血管が詰まる寸前のサインについて紹介していきます。

動脈硬化は全身で起きる病気です。
血管は全身にあるため、進行する場所によって症状が全く違ってくるので、頭から足の先まで、順番に見て、医学の知識を身に着けていきましょう。

では、大事な頭<脳>から。

最初は血管は柔軟性があり、ぷにぷにの状態で非常に柔らかいものです。

しかし、まるで柔らかい輪ゴムが古くなり、固くなり簡単にちぎれてしまう、古いホースがカチカチになってしまうように、血管も人間が年をとるとともに段々硬くなっていくわけなんですね。

これが<動脈硬化>のイメージです。

そして、この動脈硬化が進むスピードは人によって違い、

どのくらい進みやすいのかは、それぞれの遺伝や、生活習慣によって変わってきます。

例えば、たばこを吸う人は活性酸素によって血管が他の人よりも老朽化するスピードが早くなりますし、
血圧の高い人は、常に血管が内側から圧力を受けているのでだんだん血管がダメージを受けていきます。

さらに<悪玉コレステロール>と呼ばれるLDLも高い場合も動脈硬化に注意が必要です。

このLDLが血管のダメージにより傷ついた内膜から裏側に入っていってしまう事があります。

このLDLは活性酸素という物質によって「酸化」させられてしまいます。

LDL自体は普段は全身に必要なものを運搬している良いやつなんですが、ひとたび酸化されてしまうと「異物」「悪者」としてみなされ、白血球の中の異物を食べる能力を持ったマクロファージに食べられてしまいます。

その後酸化LDLを食べ終えたマクロファージは、血管の壁の中で残骸として蓄積してしまいます。

この残骸を粥腫、またはプラークと呼びます。

このプラークが大きくなり血管が狭くなってしまったり、または破裂してしまうと、その傷を治すために血小板という成分が集まり、最終的に血の塊である血栓を形作ってしまう事があります。

 

一過性脳虚血発作(TIA)

脳の動脈硬化で怖いのは、じわじわ進行する動脈硬化とは別に、急に詰まったり、血管が裂けてしまったりする命に関わる病気。

血管が詰まれば脳梗塞、破れれば脳出血の状態になってしまいます。

そして、どの場所に起きるのかによって、

  • 腕や足の力の入り辛さ
  • ろれつの回り辛さ
  • 感覚の感じにくさ
  • 目の見えにくさ

こういった症状が出る事があります。

万が一このような、脳卒中を疑わせる症状があなたに出現した時に必ず覚えておいて欲しいことがあります。

それは「症状が良くなったから大丈夫、という訳ではない」ということ。

脳梗塞では血栓が一旦詰まり、再度流れ出すと、30分や1時間など一定の時間だけ症状が出て、また元に戻ることがあります。

この現象を医学用語で一過性脳虚血発作、通称TIAと呼びます。

「え、でも血栓が流れていって元に戻ったならそれでいいんじゃないの?」

このように思われるかもしれません。

しかし重要なデータとして、TIA自体がその後の脳梗塞の発症リスクとなるというエビデンスがあり、一過性脳虚血発作(TIA)を起こした人の10~15%が3カ月以内に脳梗塞を発症し、その半数は2日以内に発症していることが明らかになっています。

TIAになった時点で血液をサラサラにする薬の内服が必要な場合があり、薬を飲まないと後々、脳梗塞になってしまう可能性も。

だからこそこの知識は本当に重要なんですが、明らかにおかしい症状が出た場合は、元に戻ったとしても病院を受診する。これを覚えておいて下さい。

この場合に受診する科は救急で大丈夫です。

 

脳血管型認知症

さらに、脳の動脈硬化が進行すると、認知症のリスクが上がります

当然、動脈硬化で血管が狭くなるわけなので、脳への血流が不十分になるため、認知症のリスクも上がってしまいます。

これを「脳血管型認知症」と呼びます。

認知症だとアルツハイマーが有名ですが、意外に知られていませんが実はその次に多いのが脳血管性の認知症で、全体の20%の割合です。

イメージがないかもしれませんが、実は認知症は「動脈硬化」が原因の病気でもあります。

具体的な症状で言えば一時的なめまい立ちくらみがあります。特に急に立ち上がったときに「ふわっ」とする感覚を頻繁に感じる方は要注意。
これは脳への血流が一時的に不足しているサインかもしれません。

 

②首と動脈硬化

そしてこの脳梗塞の原因。実はこれ、「脳」の動脈硬化ばかりではありません。

最も多いのが「」の動脈硬化。

首には「頸動脈(けいどうみゃく)」という太い動脈が左右一本ずつ走っています。
この頸動脈は心臓から脳へ血液を送る重要な血管で、まさに「命の通り道」です。

この部分に「プラーク」と呼ばれるコレステロールの塊ができると、血管が狭くなったり、完全に詰まったりすることがあります。

そしてこのプラークが破れて、その破片(血栓)が血流に乗って脳の細い血管に流れていき、そこで詰まってしまうことです。これが「脳塞栓(のうそくせん)」という脳梗塞の一種です。

首の動脈硬化が進行すると、脳梗塞や先ほど紹介したTIAのような症状を引き起こしたり、
一過性黒内障」と呼ばれる一時的な目の見えにくさ目のかすみ、といった症状を引き起こすこともあります。

また、首の動脈硬化は、症状が出る前に検査で判明することもあります。

超音波で血管を確認する頸動脈エコー検査

この検査で頸動脈の血管の壁の厚みを調べて、「IMT(内膜中膜複合体厚)」という数値で動脈硬化の進行度を測定できます。健康な人では1.0mm以下ですが、1.1mm以上になると動脈硬化が進んでいると判断されます。

自分は動脈硬化のリスクが高いかもしれない、、、と思われる方は一度検査を受けてみても良いでしょう!

特に喫煙は頸動脈の動脈硬化の大きなリスク因子です。喫煙者は非喫煙者に比べて、頸動脈プラークのリスクが約2〜4倍高いというデータもあります。

検査でプラークが見つかるとお薬を使ったり手術を行って治療できる場合もあります。

自覚症状がないうちからリスクが高い人は注意しておいて下さい。

 

③心臓と動脈硬化

さて次は、心臓の動脈硬化について。

心臓は24時間絶え間なく全身に血液を送るポンプのイメージが強いのではないかと思います。
実はこのポンプを動かすために、心臓をぐるりと囲んで動脈が走っています。

この動脈を「冠動脈」と呼びます。

この冠動脈も動脈硬化が進行すると、恐ろしい症状を引き起こします。

狭心症

狭心症」という病気があります。
冠動脈に動脈硬化が進行して、十分に血液や酸素を心臓に供給できなくなると起きます

特に「階段を上がったとき」「ちょっと急いで歩いたとき」など、心臓が多量に酸素を欲しがるタイミングで、満足に酸素を送れないので、胸がギュッと締め付けられるような痛みを感じることがあります。

しばらく休むと自然に落ち着きますが、このような症状がある場合は狭心症の可能性があります。
これを放置すると、血管が完全に詰まってしまうリスクが高まります。

 

心筋梗塞

血管が詰まり心筋梗塞が起きると、詰まった先の心筋(心臓の筋肉)は酸素不足で壊死(えし)を起こし、治療が遅れたり、場所によってはすぐに命に直結することも

心筋梗塞の症状は、胸の痛みが最も有名ですが、なんと10-20%は胸の痛みが起こらないことがあります。

その場合他には

  • 吐き気
  • 冷や汗
  • 肩の痛み
  • 動悸
  • 歯の痛み

など意外な症状で起きる場合もあります。

なんとも言えない症状でも、明らかに違和感が続いている。
こんな場合はすぐ病院を受診しましょう。この場合も救急でも良いですが、心臓の専門の科は循環器内科になります。

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④大動脈と動脈硬化

心臓から先に繋がる、全身に血液を送り届ける、体の中で一番太い血管である「大動脈」。

大動脈解離

大動脈解離(かいり)」という病気こそまさに 動脈硬化の影響で血管壁が弱まり、その内側の層に亀裂が入って血液が入り込む状態

脳や心臓より太い血管が裂けるので、本当に命に関わる病気です。

大動脈解離は突然発症するケースが多く、胸や背中を裂かれるような激痛を感じるのが典型的です。

血圧の高い人に起こりやすい病気ですので、突然の胸や背中の痛みには要注意です。

また、裂ける以外にも「コブができる」こともあります。

大動脈瘤・腹部大動脈瘤

大動脈の壁が動脈硬化によって弱くなると、その部分が風船のように膨らむことがあります。これを「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」と言います。「瘤(りゅう)」とは、血管の一部が膨らんでこぶのようになった状態のことを言います。

大動脈は心臓から出て、お腹の方まで走っているのですが、このお腹を走る部分にできる<腹部大動脈瘤>が起きやすいんです。

基本的に無症状ですが、大きくなると周囲の臓器を圧迫して痛みなどの症状を引き起こすことがあります。「お腹の中で脈打つような感覚」や「おへその周りの拍動感」を感じることがあります。大きくなると破裂のリスクが高まり、これも命に関わる緊急事態となります。

大動脈瘤は知らないうちに大きくなっていくことが多く、ある程度の大きさになると「破裂」のリスクが高まります。破裂すると、大量の出血を起こし、緊急処置が必要な命に関わる状態になります。

腹部大動脈瘤のリスクの御三家は

  • 男性
  • 喫煙者
  • 高血圧

この3つが揃っている方は腹部大動脈瘤のリスクが高いです。

対策としては、コブができていないかチェックするため、定期的な超音波検査をお勧めします。
65歳以上の男性で喫煙歴がある方は、一度検査を受けることを検討してみてください。
多くの場合、定期的な通院で経過観察ができますし、必要に応じて手術で治療することもできます。

心筋梗塞や脳梗塞よりは知名度が低い病気ですが、それ以上に本当に命に関わる病気なので、必ず知っておいてください。

⑤腎臓と動脈硬化

大動脈から枝分かれした細い動脈は、それぞれお腹の臓器にも血液を送っています。

例えば腎臓。大動脈から枝分かれして、腎臓に向かう血管を<腎動脈>と呼びます。

腎動脈が動脈硬化で狭くなると、腎臓への血流が減少し、十分に働けなくなります。その結果、腎機能が徐々に低下していきます。

腎臓は一日に約200L浴槽約1杯分もの血液をろ過して老廃物を尿として排出する重要な臓器です。体の中の「浄水器」のような役割

もし腎臓の機能が落ち、慢性腎臓病の状態になると、

  • 疲れやすくなる
  • むくみ(特に足首や顔) 
  • 夜間の頻尿
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • かゆみ 

このような症状があり、最悪の場合は透析が必要な状態になることもあります。

症状が出る前に健康診断でわかることもあります。もしGFRクレアチニン、といった数値が悪化しているようなら、自分の血管にダメージが加わっていないか気にしてみましょう。

 

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⑥腸と動脈硬化

食べ物を消化している腸も、動脈が栄養を送っています。

腸管虚血

珍しい病気ではあるのですが、腸に血液を送る動脈が狭くなったり、詰まったりしてしまう<腸管虚血>という状態で急なお腹の痛みが起こり、最悪の場合腸が壊死してしまう病気です。


虚血性大腸炎

大腸に血液が十分届かなくなると、大腸の粘膜がただれて血便腹痛を伴う「虚血性大腸炎」を発症することがあります。

本当に全ての臓器に影響を与える存在こそが血管、動脈です。
だからこそ、私たちが健康で長生きするためには、この血管をいたわりしなやかな血管を守ることが重要です。

⑦足の動脈硬化

足の動脈硬化も非常に怖い状態です。

足の動脈はひとたび詰まってしまうと、そこから先に血液が行き届かなくなり、血液が行き届かないと足先が壊死して、足の切断を余儀なくされる場合もあります。

閉そく性動脈硬化症(ASO)

足の動脈硬化が進行した状態を医学用語で「閉そく性動脈硬化症」、通称ASOと呼びます。

足の動脈硬化は、起こってから5年間の死亡率がなんと大腸がんや乳がんよりも高い
つまりがんと同じくらい気を付けなければいけない病気なんです。

間欠性跛行(かんけつせいはこう)

特徴的な症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)、というもの。

これは狭心症と同じ原理で、大きな足の筋肉を動かした時に、足の動脈硬化が原因で十分な血液と酸素を送れなくなるので、歩いたり走ったりすると筋肉の酸素不足でふくらはぎや太ももが痛み、少し休むと酸素が行き渡るので治り、また動くと痛くなる。

この症状はまさに足の血管が詰まる寸前のサイン

この間欠性跛行を放っておくと、血管がさらに詰まりやすくなることも。
重症化すれば足先の血流が途絶え、壊死(えし) に至る危険性もあるため要注意です。

他にも、足の動脈硬化が進行すると、血液が行き届かず冷えしびれの症状が出ることも。

この際特に要注意なのは<片方>だけの症状
動脈硬化は均等に進行せず、先に片側の症状だけ出ることがあります。


足の末端が片方だけ妙に冷たかったり、片方だけ温度や色が違う場合は、動脈硬化による血流不足が隠れているかもしれません。

皮膚に栄養や酸素が届きにくくなることで、傷が治りづらいとか、色が紫っぽくなる、といった症状が出ることも。

ABI検査

早期発見のために 足と腕の血圧を比較する<ABI検査>という検査があり、

このABIが0.9以下、要するに本来高いはずの足の血圧が腕の血圧よりはっきり低くなってしまったよ、こういう場合に、足の動脈硬化を疑います。

もし心配な方は一度検査をしてみてもいいでしょう。専門の科は循環器内科になります。

*オンライン診療では検査は対象外です。

動脈硬化の予防法

さて、このように動脈硬化と言っても、頭からつま先まで全身の様々な場所で様々な症状が起きることを紹介してきたと思います。

自分にも当てはまるかも!?

と心配になった方もいるかと思いますが、動脈硬化の予防法は場所によって変わるわけではなく、
シンプルなのでここで紹介しておきます。

まず、健康診断で生活習慣病が引っかかっている人や、肥満がある人は、その対策や必要があればその治療をしましょう。

メタボリックドミノ

あなたは<メタボリックドミノ>という言葉を聞いたことがありますか?

これは生活習慣病がドミノ倒しのように連鎖していった結果、最終的に大病としてあらわれてしまう、という流れをドミノに例えた概念です。

まず肥満の状態からはじまり、高血圧脂質異常症糖尿病といった連鎖が起き、最終的に様々な病気(ASO、心筋梗塞、脳卒中)に繋がっていく、この負の連鎖をドミノで表現したんですね。

動脈硬化は、最終的にドミノ倒しの終盤まで到達しないと、明確な症状が出てこないです。

このせいで進行するまで放置してしまう人が多いんです。

動脈硬化の予防法は、一口で言ってしまえば先ほど紹介した「メタボリックドミノ」、このドミノをいかに最初の段階で倒れるのを防ぐか、これに尽きるんですね。

健康診断を受けっぱなしにせず、もし結果で1枚目や2枚目のドミノ

  • BMI
  • 肥満
  • 脂質異常症
  • 高血圧

これらが倒れていたらもう一度立て直すし、ドミノ倒しの負の連鎖を防ぐことが大切です。
当たり前の事に感じるかもしれませんが、なかなかできない事です。

運動

数値が悪ければまず治療をしなければならないし、治療しなくても済むように定期的な有酸素運動
まずは1日8000歩を目標にしたり、毎日5分のジム通いから目指しましょう。
筋トレは糖尿病のリスクを下げるというエビデンスがあるのでできれば行うこと。

食事

高血圧であれば塩分はできるだけ減らすようにしましょう。
コレステロールは脂ものを控え野菜や果物中心に。
糖尿病には地中海食というものが有効なエビデンスもあります。
食事の質が良くでも量が多ければ肥満が進行しますからカロリーにも気を付けて。

睡眠

睡眠はしっかり1日7時間程度
睡眠不足は高血圧糖尿病のリスクを上げるエビデンスがあります。

 

まとめ

今回脳、首、心臓、大動脈、腎臓、腸、足と本当に様々な動脈硬化が進行した時のサインを学んできました。

知らなかった症状や病気もあったと思うので、忘れてしまった所はまた繰り返し復習して、ぜひ家族や友人と共有してください。

動脈硬化は「予防できる病気」です。今日お話しした内容を参考に、ぜひご自身の生活習慣を見直してみてください。少しの変化でも、継続することで大きな効果につながります。

みずみずしい血管を保って、みんなで健康長寿を目指していきましょう。

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東海高校、神戸大学医学部医学科卒業。名古屋記念病院基本臨床研修プログラム修了。藤田医科大学救急総合内科、株式会社リコー専属産業医を経てMEDU株式会社(旧Preventive Room)創業。|ウチカラクリニック代表医師|一般社団法人 健康経営専門医機構理事|日本医師会認定産業医|労働衛生コンサルタント(保健衛生)
YouTubeチャンネル「 予防医学ch/医師監修」監修 著書に「40歳からの予防医学(ダイヤモンド社)」など多数。

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