毛包炎（毛嚢炎）とは？ニキビとの違いや市販薬での治し方｜陰部や背中のブツブツ対策

「カミソリで処理した後に、赤いブツブツができて痛い」「ニキビ薬を塗っているのに、全然治らない」「デリケートゾーンに膿が溜まったおできができた…」

このような症状に悩んでいませんか？それはニキビではなく、「毛包炎（毛嚢炎）」という細菌感染症かもしれません。

毛包炎は、ニキビとは原因菌が異なるため、一般的なニキビ治療薬では治らないことがあります。間違ったケアを続けると、炎症が悪化して「しこり」になったり、色素沈着（跡）が残ったりするリスクも。

この記事では、毛包炎の原因やニキビとの見分け方、市販薬での正しい対処法、そして病院へ行くべきケースについて医師が詳しく解説します。

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毛包炎（毛嚢炎）とは？どんな症状？

毛包炎（もうほうえん）とは、毛穴の奥にある「毛包」という部分に、細菌が感染して炎症を起こした状態です。
「毛嚢炎（もうのうえん）」と呼ばれることもありますが、ほぼ同じ病気です。炎症が毛包の浅い部分にとどまるものを「毛包炎」、炎症が毛包の深い部分まで及ぶものを「毛嚢炎」と呼ぶ場合もあります。

主な症状

赤みのある小さなブツブツ（丘疹）ができる。
ブツブツの中央に白い膿が溜まる（膿疱）。
触ると軽い痛みやかゆみを感じることがある。

できやすい場所

毛穴がある場所なら全身どこにでもできますが、特に以下の部位によく見られます。

顔：特にカミソリを使うアゴ周りや口元
体：背中、お尻、太もも
デリケートゾーン： VIO（陰部）周辺

「ニキビ」と「毛包炎」の違い

「赤いブツブツ＝ニキビ」と思われがちですが、原因菌と対処法が異なります。

特徴	毛包炎（毛嚢炎）	ニキビ（尋常性ざ瘡）
主な原因	傷からの細菌感染（黄色ブドウ球菌など）	毛穴の詰まり・皮脂（アクネ菌）
きっかけ	カミソリ負け、擦れ、蒸れ	皮脂分泌の増加、ホルモンバランス
見た目	突発的にできる。中心に膿が見えることが多い。	段階がある（白→赤→黄）。芯（コメド）がある。
治療薬	抗生物質（抗菌薬）	アダパレン、抗菌薬など

最大の見分け方

ニキビ用の薬（角質を剥がしたり乾燥させたりするもの）を使っても効果がない場合や、カミソリ処理の直後にできた場合は、毛包炎の可能性が高いです。

「ニキビ」の詳しい種類や治し方については、以下の記事で解説しています。

【詳しい解説はこちら！】
🔗ニキビ治療の薬は？原因はなに？ニキビの部位別に医師が解説！【尋常性ざ瘡】

毛包炎の原因とメカニズム

毛包炎の直接的な原因は、細菌への感染です。

私たちの皮膚には、普段から「黄色ブドウ球菌」や「表皮ブドウ球菌」といった常在菌（じょうざいきん）が存在していますが、健康な肌であれば悪さはしません。

しかし、以下の4つの要因が重なると、毛穴の奥（毛包）に菌が入り込み、異常繁殖して炎症を引き起こします。

物理的なダメージ（ムダ毛処理・摩擦）

最も多い原因です。目に見える出血がなくても、角質層には微細な傷がついていることが多いです。

カミソリ・毛抜き：
特に「逆剃り」や、ジェルを使わない「空剃り」は角質を傷つけ、バリア機能を破壊します。また、毛抜きで無理に抜くと毛穴自体が傷つきます。
埋没毛（埋もれ毛）：
ムダ毛処理後、再び生えてきた毛が皮膚の下で伸びてしまうと、異物として認識されて炎症が起き、そこに菌が感染します。
衣服の摩擦：
ガードルやスキニーパンツなどの締め付け、ナイロンタオルの使いすぎによる摩擦も、皮膚の防御力を下げます。

高温多湿で不衛生な環境（蒸れ）

原因となるブドウ球菌は、温かくて湿った場所を好みます。

汗の放置：
背中やお尻は汗が乾きにくく、菌の温床になりやすい場所です。
長時間座りっぱなし：
デスクワークなどで長時間お尻が圧迫されると、通気性が悪くなり、菌が繁殖します。
マスクの着用：
口周りは呼気で湿度が高く、マスクとの摩擦も加わるため、顔の毛包炎（マスク荒れ）の原因になります。

肌のバリア機能と免疫力の低下

傷がなくても、体の内側の問題で発症することがあります。

乾燥肌・ターンオーバーの乱れ：
肌が乾燥すると、隙間だらけの状態（バリア機能低下）になり、細菌が容易に毛穴へ侵入します。
ストレス・疲労・寝不足：
免疫力が落ちると、普段は勝てる常在菌の繁殖を抑えられなくなります。
糖尿病などの持病：
血糖値が高いと細菌感染への抵抗力が弱まります。

特殊なケース（ステロイドや公衆浴場）

ステロイド外用薬の長期使用：
アトピー治療などでステロイドを長く塗っていると、その部分の局所的な免疫が下がり、副作用として毛包炎ができることがあります。
サウナや温泉（緑膿菌）：
稀なケースですが、しっかり消毒されていない温水プールや公衆浴場を利用した後、「緑膿菌（りょくのうきん）」という別の菌が原因で、赤いブツブツができることがあります（温浴毛包炎）。

背中やお尻のブツブツは「カビ」かも？

「背中やお尻のブツブツに抗菌薬を塗っても治らない」その場合、細菌ではなく「カビ（真菌）」が原因の『マラセチア毛包炎』の可能性があります。

マラセチア毛包炎は、見た目は通常の毛包炎やニキビとそっくりですが、「抗生物質（細菌を殺す薬）」が効きません。むしろ抗生物質を使うことで、常在菌のバランスが崩れて悪化することさえあります。

【詳しい解説はこちら！】
🔗マラセチア毛包炎とは？ニキビとの見分け方や原因、症状など医師が解説！

陰部（デリケートゾーン）の毛包炎

VIOの脱毛や自己処理後に、陰部に毛包炎ができるケースは非常に多いです。場所が場所だけに蒸れやすく治りにくいのが特徴です。

しかし、陰部のブツブツは、毛包炎だけでなく、性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどの性感染症（STD）の可能性もゼロではありません。「ただのデキモノ」と自己判断せず、専門医の診断を受けることが重要です。

毛包炎の治し方｜市販薬とセルフケア

軽度の毛包炎であれば、市販薬で治すことが可能です。

市販薬を選ぶポイント（抗生物質）

ドラッグストアで薬を選ぶ際は、ニキビ薬ではなく、細菌を殺す「抗菌成分（抗生物質や殺菌成分）」が配合された軟膏を選びましょう。

おすすめの成分： クロラムフェニコール、硫酸フラジオマイシン、オキシテトラサイクリンなど
商品例： ドルマイシン軟膏、テラ・コートリル（ステロイド配合）、オロナインH軟膏（軽度の場合）など

※市販薬の中には抗菌成分と合わせて、ステロイドが含まれているものも多いです。長期の連用は避け、数日使用しても症状が改善しない場合は病院を受診しましょう。

絶対にやってはいけないこと

膿を潰す： 雑菌がさらに入り込み、クレーター状の跡が残る原因になります。
不潔な手で触る： 炎症が悪化します。
同じカミソリを使い続ける： 刃に菌が付着している可能性があります。

治らない場合は皮膚科へ｜病院での治療法

市販薬を1週間ほど使っても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、皮膚科を受診してください。

受診すべき目安

赤みや腫れが強く、痛みがある（「せつ（おでき）」に悪化している可能性）。
個数が多い、または範囲が広い。
何度も繰り返す。

病院での治療【外用薬（塗り薬）】

軽度〜中等度の毛包炎で、まず処方されるのが塗り薬です。

ゼビアックス（オゼノキサシン）

比較的新しい薬で、1日1回の塗布で済むため続けやすいのが特徴です。黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌に強い殺菌力を持ちます。

【詳しい解説はこちら！】
→ゼビアックス油性クリーム

アクアチム（ナジフロキサシン）

ニキビ治療でもよく使われる薬です。クリームやローションなど種類があり、背中など広い範囲にも塗りやすいのがメリットです。

【詳しい解説はこちら！】
→アクアチム軟膏

ゲンタシン（ゲンタマイシン）

古くからある抗生物質軟膏です。傷口の感染予防など幅広く使われますが、最近は耐性菌（薬が効きにくい菌）の問題もあり、医師が慎重に使い分けます。

【詳しい解説はこちら！】
→ゲンタシン軟膏

病院での治療【内服薬（飲み薬）】

「背中全体に広がっている」「赤みが強く痛みがある」「しこりになっている」といった場合は、塗り薬だけでは不十分なことがあります。飲み薬で血液に乗せて全身に薬を届けることで、体の内側から菌を叩き、劇的に治りを早くします。

※抗生物質の飲み薬は、自己判断で中断すると菌が生き残り、薬が効かなくなる（耐性菌ができる）恐れがあります。処方された日数は必ず飲みきることが大切です。

テトラサイクリン系（ミノマイシン、ビブラマイシン）

抗菌作用に加え、炎症を抑える作用も強いため、赤く腫れた毛包炎によく効きます。

【詳しい解説はこちら！】
→ミノマイシン

マクロライド系（ルリッド、クラリス）

細菌の増殖を抑える効果が高く、副作用が比較的少ない薬です。

【詳しい解説はこちら！】
→ルリッド

セフェム系（ケフレックス、セフゾン）

黄色ブドウ球菌に対して高い効果を発揮します。

【詳しい解説はこちら！】
→ケフレックス

病院での治療【切開排膿（せっかいはいのう）】

膿がパンパンに溜まってズキズキ痛む場合や、おでき（せつ）に悪化している場合に行われる処置です。

処置内容：
消毒をした上で、滅菌された針やメスで患部に小さな穴を開け、溜まっている膿を物理的に外へ出します。
　
メリット：
内圧が下がるため、処置直後から「痛み」が劇的に引きます。また、膿（細菌の塊）がいなくなるため、薬の効きも良くなり、治癒期間が短縮されます。
　
注意：
これを自分で行うと、雑菌が入ってさらに悪化したり、皮膚組織が潰れて「クレーター状の跡」が一生残ったりします。必ず医師の管理下で行うべき処置です。

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FAQ｜毛包炎に関するよくある質問

Q. 毛包炎は自然に治りますか？

ごく軽度であれば、患部を清潔にして刺激を与えなければ数日で自然治癒することもあります。しかし、赤みが強かったり痛みがあったりする場合は、色素沈着（シミ）になるのを防ぐためにも薬での治療をお勧めします。

Q. 毛包炎は人にうつりますか？

基本的にはうつりません。原因菌は誰の皮膚にもある常在菌だからです。ただし、膿が出ている状態でタオルなどを共有すると、菌が付着して他人の傷口に入り込む可能性はあるため、共有は避けましょう。

Q. 繰り返さないための予防法は？

ムダ毛処理の方法を見直しましょう。

カミソリは毎回清潔なものを使う。
シェービングジェルを使って摩擦を減らす。
処理後は必ず保湿する。
可能であれば、肌負担の少ない電気シェーバーに変える。

Q. 市販の「オロナイン」は効きますか？

軽度の毛包炎であれば効果が期待できます。オロナインH軟膏には「クロルヘキシジングルコン酸塩」という殺菌成分が含まれているためです。ただし、赤みが強かったり膿が溜まっていたりする場合は、より殺菌力の強い「抗生物質」入りの軟膏（ドルマイシンやテラ・コートリルなど）や、処方薬の方が確実です。

Q. 潰して膿を出してもいいですか？

絶対に潰さないでください。無理に潰すと、皮膚の奥深くまで細菌を押し込んでしまい、炎症が悪化します。また、皮膚の組織が破壊されることで、治った後にクレーターのような凹みや、茶色い色素沈着（シミ）が残る原因になります。

Q. 「おでき」や「しこり」との違いは何ですか？

進行度合い（重症度）の違いです。毛包炎が悪化し、炎症が皮膚の深い部分や周囲に広がって硬くなったものを「せつ（おでき）」と呼びます。さらに複数の毛穴が合体して重症化したものを「よう」と呼びます。「おでき」レベルになると市販薬では治りにくく、切開して膿を出す処置が必要になることも多いため、早急に皮膚科を受診してください。