この腹痛の原因は？治し方はあるの？腹痛の薬や対処法を解説！【医師監修】

「急にお腹がキリキリと痛む…」「最近、ずっと下腹部がシクシク痛むけど、病院に行くべき？」

腹痛は、誰もが一度は経験するありふれた症状です。しかし、その背後には、単なる食べ過ぎから、速やかに治療が必要な病気まで、様々な原因が隠れています。

この記事では、腹痛の基本的な知識から、症状や原因、そして「どんな時に、何科に行けばいいのか」という疑問まで、網羅的に解説します。ご自身の体のサインを正しく理解し、適切に対処するための一助となれば幸いです。

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腹痛とは？

腹痛とは、一般的に「お腹の痛み」を指し、みぞおちから下腹部にかけての範囲に起こる痛みの総称です。

これは、胃、腸、肝臓、膵臓、胆のうといった消化器系の臓器だけでなく、泌尿器や婦人科系の臓器など、腹部にあるいずれかの臓器に何らかの異常が起きていることを知らせる重要なサインです。

腹痛は、痛みの性質によって、主に以下の3つに分類されます。

内臓痛：胃や腸などがけいれんしたり、伸びたりすることで起こる痛み。「シクシク」「キューッ」とした鈍い痛みで、痛みの場所がはっきりしないことが多いです。
　
体性痛：腹膜など、臓器を覆う膜が刺激されることで起こる痛み。「キリキリ」「ズキズキ」とした鋭い痛みで、場所が明確なのが特徴です。
　
関連痛：原因となっている場所とは別の場所に感じる痛み。例えば、胆石症で右肩が痛むことがあります。

腹痛の原因

腹痛の原因は非常に多岐にわたりますが、主に「消化器系」「泌尿器系」「婦人科系」、そして「その他日常的な原因」に大別されます。

消化器系の病気

腹痛の原因として最も多いのが、食べ物の通り道である消化器系のトラブルです。

急性胃炎・胃潰瘍

食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレス、薬の副作用などで胃の粘膜が荒れたり（胃炎）、深く傷ついたり（潰瘍）する病気です。
みぞおちのあたりにキリキリ、ズキズキとした痛みが起こります。

虫垂炎（ちゅうすいえん）

一般的に「盲腸」として知られ、大腸の一部である虫垂が炎症を起こす病気です。
はじめはみぞおちの痛みや吐き気から始まり、時間とともにはっきりとした痛みが右下腹部へと移動するのが特徴です。

感染性胃腸炎（食中毒）

ウイルスや細菌に汚染された食べ物を摂取することで発症します。
突然の腹痛に加え、下痢や嘔吐、発熱を伴うことがほとんどです。

【胃腸炎について詳しい解説はこちら】
→胃腸炎の症状は？うつるの？原因や薬について医師が解説！【感染性胃腸炎】

胆石症（たんせきしょう）・胆のう炎

肝臓で作られる胆汁の通り道（胆のうや胆管）に石ができる病気です。
特に脂っこい食事を摂った後などに、右上腹部に激しい痛みの発作が起こることがあります。

急性膵炎（きゅうせいすいえん）

アルコールの飲み過ぎや胆石が原因で、膵臓に急激な炎症が起こる病気です。
みぞおちから左上腹部にかけての持続的な激痛が特徴で、背中にまで痛みが広がることがあります。

腸閉塞（ちょうへいそく）

腸の内容物が流れなくなる状態で、緊急の処置が必要です。
激しい腹痛、お腹の張り、嘔吐などがみられ、便やガスが全く出なくなります。

過敏性腸症候群（IBS）

ストレスなどが原因で、腸の動きに異常が起こる病気です。
検査では異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘を慢性的に繰り返します。

【IBSについて詳しい解説はこちら】
→過敏性腸症候群（IBS）の治し方について医師が解説

泌尿器系の病気

尿を作る腎臓から、尿を排出する尿道までの経路に起こる病気です。

尿管結石

腎臓でできた石が尿管に詰まることで、突然、脇腹や背中に「七転八倒する」と表現されるほどの激しい痛みが起こります。
痛みは下腹部や足の付け根にまで広がることがあります。

膀胱炎（ぼうこうえん）・腎盂腎炎（じんうじんえん）

尿道から細菌が侵入し、膀胱や腎臓で炎症を起こす病気です。
下腹部痛のほか、頻尿、排尿時の痛み、血尿などの症状が見られます。腎盂腎炎では高熱を伴います。

婦人科系の病気（女性の場合）

女性の場合、子宮や卵巣といった生殖器の病気が下腹部痛の原因となることがあります。

月経困難症（生理痛）

生理に伴って起こる下腹部のけいれんするような痛みです。
多くの女性が経験しますが、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合は治療の対象となります。

子宮内膜症・卵巣嚢腫（のうしゅ）

子宮や卵巣の病気で、生理痛がだんだんひどくなったり、生理期間以外にも下腹部痛や腰痛が続いたりすることがあります。
卵巣嚢腫がねじれたり（茎捻転）、破裂したりすると、突然の激痛が起こり緊急手術が必要になります。

その他の日常的な原因

病気とは言えないものの、日常生活の中で腹痛を引き起こすこともよくあります。

便秘

腸内に便やガスが溜まることで、お腹が張ってシクシクとした痛みが起こります。

ストレス

脳と腸は密接に関係しており（脳腸相関）、強いストレスや不安は自律神経を乱し、胃腸のけいれんや痛みを引き起こします。

食べ過ぎ・飲み過ぎ

胃が過度に拡張したり、胃酸が多く分泌されたりすることで、みぞおちの痛みや不快感が生じます。

腹痛の症状からわかること

腹痛の原因を探る上で、「どこが」「どのように」痛むかは非常に重要な手がかりとなります。

痛む場所から考えられること

みぞおち：胃炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、胃に関連する病気の可能性。
右上腹部：胆のう炎、胆石症など、肝臓や胆のうの病気の可能性。
右下腹部：虫垂炎（盲腸）の典型的な場所。その他、憩室炎や婦人科系疾患も考えられます。
左上腹部：膵炎、胃炎など。
左下腹部：憩室炎、便秘、過敏性腸症候群（IBS）、婦人科系疾患など。
下腹部全体：膀胱炎、腸炎、婦人科系疾患（子宮や卵巣）など。

痛みの性質や伴う症状から考えられること

キリキリとした鋭い痛み：胃潰瘍や十二指腸潰瘍、尿管結石などで見られます。
シクシクとした鈍い痛み：胃炎や便秘、ストレス性の腹痛などで多い痛み方です。
周期的に繰り返す差し込むような痛み：腸の動きが過剰になることで起こり、腸炎や腸閉塞の可能性があります。
発熱を伴う：ウイルスや細菌による感染症（感染性胃腸炎など）や、虫垂炎、胆のう炎といった炎症性の病気が疑われます。
吐き気・嘔吐を伴う：胃腸炎や食中毒、腸閉塞など、多くの消化器疾患で見られます。

腹痛の受診の目安

救急車を呼ぶほどの激痛ではなくても、以下のような症状が見られる場合は、自己判断で放置せず、一度医療機関を受診することをおすすめします。

腹痛で受診すべきチェックリスト

□ 痛みが数日間、続いている
□ 特定のタイミング（食後など）で、決まって痛くなる
□ 痛み止めを飲んでも、あまり改善しない
□ だんだんと痛みが強くなってきている
□ 腹痛以外に、発熱、下痢、嘔吐、体重減少、黄疸（皮膚や白目が黄色くなる）などの症状がある
□ 痛みのせいで、食事がとれない、眠れないなど、日常生活に支障が出ている

腹痛は何科を受診

腹痛で病院にかかる際、何科を受診すればよいか迷う方も多いでしょう。

ほとんどの腹痛は胃や腸といった消化器系の問題が原因であるため、まずは「内科」、特に消化器を専門とする「消化器内科」を受診するのが基本です。

ただし、女性の方で下腹部痛が続く場合や、生理に伴う痛みであれば、子宮や卵巣の問題も考えられるため「婦人科」の受診を検討しましょう。
さらに、排尿時の痛みや血尿といった症状を伴う場合は、尿管結石や膀胱炎などが疑われるため、「泌尿器科」が専門となります。

このように原因によって専門科が分かれますが、どこに行けばいいか迷った場合は、まずかかりつけの「内科」に相談するのが最もスムーズです。

そこで診察を受けた上で、必要に応じて適切な専門科を紹介してもらうことができます。

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腹痛の検査

腹痛の原因を正確に突き止めるため、病院ではまず丁寧な問診を行い、必要に応じて様々な検査を組み合わせて診断します。

主に行われる検査

問診や診察の結果をもとに、医師が必要と判断した検査が行われます。

血液検査・尿検査
体の中で炎症が起きていないか、貧血はないか、肝臓や膵臓の数値に異常はないかなどを確認します。また、尿路感染や尿管結石の可能性も調べます。
　
腹部エコー（超音波）検査
体に超音波を当て、内臓の状態を画像で確認する検査です。胆石や虫垂炎、肝臓や腎臓の異常など、多くの病気の発見に役立ちます。痛みもなく、放射線被ばくの心配もありません。
　
腹部X線検査（レントゲン）
腸閉塞が疑われる場合の腸内のガスの状態や、尿管結石の発見などに有用です。
　
内視鏡検査（胃カメラ・大腸カメラ）
胃潰瘍や胃炎、大腸のポリープや炎症などが疑われる場合に、カメラで直接消化管の粘膜を観察します。
　
CT検査
体を輪切りにしたような詳細な画像を撮影する検査です。腹部エコーでは分かりにくい虫垂炎や膵炎、腸閉塞など、多くの病気の診断に非常に役立ちます。

腹痛の薬

腹痛の原因として多い消化器系の病気では、主に以下のような薬が処方されます。

胃酸を抑える薬・胃の粘膜を保護する薬

胃炎や胃・十二指腸潰瘍など、胃酸の過剰や粘膜の荒れが原因の場合に処方されます。

【代表的な薬】
プロトンポンプ阻害薬（PPI）：ランソプラゾール（タケプロン）、エソメプラゾール（ネキシウム）
H2ブロッカー：ファモチジン（ガスター）
粘膜保護薬：レバミピド（ムコスタ）

腸の動きを調整する薬（鎮痙薬など）

ストレスによる過敏性腸症候群（IBS）など、腸の異常なけいれんや動きが痛みの原因である場合に、その働きを正常に近づけます。

【代表的な薬】
臭化チメピジウム（ブスコパン）、モサプリド（ガスモチン）
過敏性腸症候群治療薬のラモセトロン（イリボー）

抗菌薬（抗生物質）

細菌による感染性胃腸炎（食中毒）や、虫垂炎、胆のう炎、憩室炎など、細菌感染による炎症が原因の場合に、原因菌を叩くために使われます。原因菌に合わせて様々な種類が選択されます。

【代表的な薬】
ホスホマイシン（ホスミシン）、レボフロキサシン（クラビット）

整腸剤

下痢や便秘、お腹の張りなど、腸内環境の乱れがみられる場合に、善玉菌を補うことで症状の改善を助けます。

【代表的な薬】：
ビオフェルミン配合散

薬以外の治療（食事指導・手術など）

原因に応じて、食事指導や生活指導も行われます。
また、虫垂炎や腸閉塞、胆石症の症状が強い場合など、病気によっては手術が必要になることもあります。
医師が原因を正確に診断し、一人ひとりに合った最適な治療法を選択します。

セルフケアでの対処法

病院に行くまでの応急処置や、原因がはっきりしている軽い腹痛の場合には、セルフケアで症状を和らげることができます。

安静にする：まずは体を休ませることが第一です。ベルトを緩め、楽な服装で、横になるのが良いでしょう。横向きで膝を軽く曲げると、お腹の緊張が和らぎます。
　
食事を控える：痛みが強い時は、無理に食事を摂らず、胃腸を休ませましょう。
　
水分補給：脱水を防ぐため、白湯や経口補水液、麦茶などでこまめに水分を補給します。
　
体を温める：ストレスや冷えによる痙攣性の痛み（シクシク、キューッとした痛み）の場合、腹部を温めると血行が良くなり、痛みが和らぐことがあります。
　
市販薬の注意点：安易な痛み止めの使用は、原因となっている病気の診断を遅らせる可能性があります。また、食中毒による下痢の場合、下痢止めを使うと原因菌を体内に留めてしまうことも。市販薬を使う際は、薬剤師に相談の上、用法・用量を守りましょう。