機能性ディスペプシアとは?原因や症状、治し方を医師が解説!
このように、胃の痛みや不快感が続いているにもかかわらず、検査ではっきりとした原因が見つからず、お困りではありませんか?
その症状、もしかしたら「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia: FD)」かもしれません。
目次
機能性ディスペプシアとは?
機能性ディスペプシアとは、胃潰瘍やがんのような明らかな病気(器質的疾患)がないにもかかわらず、胃もたれや胃の痛みといった、つらい症状が慢性的に続いている状態を指します。
以前は「気のせい」「ストレス性胃炎」などと片付けられてしまうこともありましたが、現在では「胃の機能や知覚に問題が起きている」病気として、はっきりとした診断基準と治療法が確立されています。
機能性ディスペプシアは珍しい病気ではなく、おおよそ数%〜十数%の方にみられるとされています。
※数値は調査の仕方や基準によって幅あり。

機能性ディスペプシアの症状チェック
機能性ディスペプシアの症状は、大きく2つのタイプに分けられます。両方の症状が混在している方も多くいます。
食後愁訴症候群(PDS)

食事をした後に出現する不快な症状が特徴です。
- つらい胃もたれ
食後にいつまでも食べ物が胃に残っているような、重苦しい感じがする。
- 早期飽満感
食事を始めても、すぐに満腹になってしまい、一人前を食べきれない。
心窩部痛症候群(EPS)

みぞおち(心窩部)周辺の痛みが主な症状です。
- みぞおちの痛み
食事とは関係なく、みぞおちがシクシク、キリキリと痛む。
- みぞおちの焼ける感じ
胸やけとは少し違う、みぞおちが熱くなるような、焼けるような感覚がある。
この他にも、お腹の張り(腹部膨満感)や吐き気、げっぷなどの症状が見られることもあります。
機能性ディスペプシアの主な原因
機能性ディスペプシアの原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
胃の運動機能の異常
胃の動きが悪い
食べた物を十二指腸へ送り出す胃の蠕動(ぜんどう)運動が弱く、食べ物が胃に停滞しがちになります(胃排出遅延)。

胃がふくらみにくい

食事の際に、食べ物を溜めるために胃がうまく広がらないため(適応性弛緩障害)、すぐにお腹がいっぱいになってしまいます。
内臓の知覚過敏
健康な人なら気にならない程度の、わずかな胃の刺激(食べ物や胃酸など)に対して、神経が過敏に反応してしまい、痛みや不快感として感じてしまいます。

ストレス・不安
脳と腸は自律神経などを介して密接につながっています(脳腸相関)。
そのため、脳が感じたストレスや不安が、胃の運動機能や知覚に直接影響を与え、症状を引き起こす大きな原因となります。

生活習慣の乱れ
不規則な食事、脂肪分の多い食事、睡眠不足、過労なども、胃の働きを乱す要因となります。

このほか、ピロリ菌感染や遺伝的要因などが関与している場合もあります。
ピロリ菌が陽性の方では、除菌治療によって症状がよくなることもあります。
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機能性ディスペプシアの処方薬
市販の胃薬で改善しない場合は、医師の診断のもと、症状や原因に合わせたお薬を使用します。
胃酸の分泌を抑える薬【胃酸抑制薬】
胃酸が関わるタイプの症状には、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーなどの胃酸を抑える薬が使われます。
近年はP-CAB(カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬)も選択肢になってきました。効果の出方には個人差があり、機能性ディスペプシアに対する効果を断定できるデータは限定的です。
P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)

効果が速く、食事の影響を受けにくい新しいタイプのお薬です。
【詳しい解説はこちら】
→ボノプラザン(タケキャブ)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)

胃酸分泌を強力に抑える、胃酸関連疾患の治療で中心的な役割を担うお薬です。
【詳しい解説はこちら】
→エソメプラゾール(ネキシウム)
→ランソプラゾール
H2ブロッカー
胃の運動機能を改善する薬【胃運動促進薬】
食後のもたれや早期飽満感が目立つ方には、胃の動きを整える薬を使うことがあります。
食後の不快感や胃の膨満感の軽減が期待でき、症状タイプに合わせて用法や期間を調整します。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

胃の運動に関わる神経伝達物質を増やし、胃の動きを活発にします。機能性ディスペプシアの食後症状のために開発された専門的なお薬です。
【詳しい解説はこちら】
→アコチアミド(アコファイド)
セロトニン受容体作動薬

胃や腸に広く存在するセロトニン受容体に作用し、消化管全体の運動を整えます。
【詳しい解説はこちら】
→モサプリドクエン酸塩(ガスモチン)
漢方薬

複数の生薬が協力し合うことで、弱った胃の働きを高め、食欲不振や倦怠感なども含めて総合的に改善します。
【詳しい解説はこちら】
→六君子湯(リックンシトウ)
胃の知覚過敏を改善する薬
ストレスが背景にあり、他の薬では改善しない痛みや不快感が続く場合に用いられます。
抗不安薬・抗うつ薬

脳と腸の間の過剰な情報伝達を調整し、胃が刺激に対して過敏に反応するのを抑えます。少量から使用することで、胃の症状に特化して効果を発揮することが期待されます。
機能性ディスペプシアの治し方・予防
機能性ディスペプシアの治療と予防の基本は、日々の生活習慣を見直して胃に優しい環境を整えることです。
症状を悪化させる原因を避け、心身のバランスを整えるセルフケアを始めましょう。
食生活を見直す
消化の良いものを中心に
脂肪分の多い食事(揚げ物、ラーメン、脂身の多い肉など)や、刺激の強い香辛料は控えめにしましょう。おかゆやうどん、豆腐、白身魚、ささみなどがおすすめです。
1回の食事量を減らし、回数を増やす(分割食)
一度にたくさん食べると胃に負担がかかります。食事の量を8分目くらいに抑え、間食を上手に取り入れるなどして、空腹にも満腹にもなりすぎない状態を保つのが理想です。
ゆっくり、よく噛む
よく噛むことで、消化を助ける唾液が十分に分泌され、胃への負担が軽くなります。早食いは避け、リラックスして食事する時間を確保しましょう。
避けた方が良い飲み物
コーヒーや緑茶に含まれるカフェイン、アルコール、炭酸飲料は胃酸の分泌を促したり、胃を刺激したりすることがあるため、症状が強い時は控えましょう。

ストレス管理
脳と腸は密接に関係しており(脳腸相関)、ストレスは胃の機能を低下させる大きな原因です。
リラックスする時間を作る
趣味に没頭する、音楽を聴く、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなど、自分が心からリラックスできる時間や活動を意識的に作りましょう。
十分な睡眠をとる
睡眠不足は自律神経の乱れに直結します。質の良い睡眠を確保することで、心と体の両方から胃腸のコンディションを整えることができます。
適度な運動を習慣にする
ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、気分転換になるだけでなく、血行を促進し胃腸の働きを整える効果も期待できます。
規則正しい生活リズム
毎日決まった時間に食事や睡眠をとることで、体内時計が整い、自律神経のバランスが安定します。不規則な生活は胃腸のリズムを乱す原因になるため、できる範囲で生活リズムを整えましょう。

機能性ディスペプシアのよくある質問
機能性ディスペプシアについて、よくあるご質問にお答えします。
ご自身の状況と照らし合わせて、解決のヒントを見つけてください。
過敏性腸症候群(IBS)との違いは何ですか?
機能性ディスペプシアは主に胃の症状(胃もたれ、胃痛)が中心ですが、過敏性腸症候群(IBS)は主に腸の症状(腹痛、下痢、便秘)が中心となります。両方を合併している方も少なくありません。
【詳しい解説はこちら】
→過敏性腸症候群(IBS)の治し方について医師が解説
胃カメラ検査は絶対に必要ですか?

機能性ディスペプシアと診断するためには、「症状の原因となる器質的疾患がないこと」を確認する必要があります。
そのため、胃がんや胃潰瘍など命に関わる病気を見逃さないためにも、一度は胃カメラ検査を受けることが強く推奨されます。
この病気は完治しますか?
機能性ディスペプシアは良くなったり、ぶり返したりを繰り返すことがあります。完全に症状が出なくなる方もいれば、波がありながら上手に付き合っていく方もいます。
生活習慣の見直し+薬物療法で“症状をコントロールする”ことを目標にし、再燃時の早めの受診も大切です。
市販薬で治せますか?
症状が軽い場合は、市販の胃腸薬で一時的に症状が和らぐこともあります。
しかし、市販薬を飲み続けても改善しない、または症状を繰り返す場合は、自己判断で続けずに医療機関を受診してください。機能性ディスペプシアの治療には、その人の症状のタイプに合わせた専門的なお薬が必要な場合があります。
食べるのが怖いと感じてしまいます。どうすれば良いですか?

「また食べたら胃が痛くなるかもしれない」という不安から、食事が怖くなってしまう(食事恐怖)のは、機能性ディスペプシアの患者さんによく見られる、つらい悩みです。
まずは、おかゆやスープなど、消化が良く安心できるもの少量から試してみましょう。無理に食べようとせず、「食べられるものを、食べられる量だけ」で大丈夫です。一人で悩まず、その不安な気持ちも含めて医師に相談してください。
機能性ディスペプシアは難病指定されていますか?
いいえ、現在のところ機能性ディスペプシアは、国が定める指定難病には含まれていません。しかし、症状が重く、日常生活に大きな支障をきたす場合があることも事実です。
制度は見直されることもあるため、最新の情報は公的機関の発表を確認しましょう。つらい症状は我慢せず、専門の医療機関に相談することが大切です。
つらい胃の不調、一人で悩まず、ウチカラクリニックに相談を
検査で異常がないのに続く胃の不快感は、ご本人にとって非常につらく、周りにも理解されにくいものです。
機能性ディスペプシアは、生活の質(QOL)を大きく低下させる病気ですが、正しい知識を持って適切に対処すれば、必ず症状を和らげることができます。
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