バンコマイシンの効果・副作用を解説!【医師監修】
「MRSA(耐性菌)の治療でバンコマイシンを使うことになったけれど、どんなお薬?」
「トラフ値やTDM(血中濃度モニタリング)が必要と言われたけれど、どうして?」
重症の細菌感染症や耐性菌治療の「切り札」として医療現場で広く使われている抗生物質が「バンコマイシン」です。
非常に強力で頼もしいお薬ですが、安全かつ効果的に使うためには、血中濃度の測定(TDM)や点滴スピードの厳密な管理が欠かせません。
この記事では、バンコマイシンの効果や使い方、気になる副作用、TDM(トラフ値)の測定が必要な理由、点滴速度の重要性について医師が詳しく解説します。
目次
バンコマイシンとは?効果は?
バンコマイシンは、「グリコペプチド系」に分類される抗生物質です。
細菌が自分を包む壁(細胞壁)を作るのを強く阻害することで、病原菌を殺菌・除去します。
一般的な抗生物質が効きにくいMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの耐性菌に対して、優れた効果を発揮します。
バンコマイシンの種類(剤型)
- バンコマイシン点滴静注用0.5g・1g
- 全身の感染症治療に使われる注射剤(点滴静注用)です。
- バンコマイシン散100%
- 主に腸の感染症(偽膜性大腸炎など)の治療で、口から飲みお腹の中で直接作用させる飲み薬(散剤)タイプです。
バンコマイシンの成分
有効成分はバンコマイシン塩酸塩です。
特定の細菌(MRSAなど)の細胞壁合成を妨げ、強力な殺菌作用を示します。
バンコマイシンの効果
主に以下のような効果があります。
- MRSA、MRCNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)、PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)などの耐性菌を強力に殺菌する
- 敗血症、感染性心内膜炎、肺炎、化膿性髄膜炎、腹膜炎などの深刻な感染症状を改善する
- MRSAやMRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症の治療
どんなときに使う?(適応疾患・部位)
- MRSA・MRCNS・PRSPによる敗血症
- 感染性心内膜炎
- 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
- 骨髄炎
- 関節炎
- 肺炎
- 肺膿瘍
- 膿胸
- 腹膜炎
- 化膿性髄膜炎
- 発熱性好中球減少症
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌やクロストリジウム・ディフィシルによる深刻な大腸炎(偽膜性大腸炎など)
バンコマイシンはオンライン診療で出せる?
バンコマイシンは原則として、オンライン診療で処方することはできません。
バンコマイシンは重症な感染症や耐性菌に対して使用される非常に強力なお薬であり、点滴中の速度管理や定期的な血中濃度モニタリング(TDM)、血液検査が必要となります。
そのため、入院や対面診療での厳密な管理が必須であり、オンラインでの処方には対応していません。
ただし、他のお薬のご相談や、感染症・風邪症状、体調不良全般に関するご相談・お悩みであればオンライン診療を活用することが可能です。
ウチカラクリニックでは、
日常的な体調不良やお薬に関するご相談や処方をオンライン診療にて承っております。
ご自宅や職場など、好きな場所からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられ、お薬も自宅に届けてもらえるので、通院の手間や待ち時間をぐっと減らすことができます。
特に、「体調が悪く外出がつらいとき」や「仕事の合間に受診したい」などに、オンライン診療は便利です。経験豊富な医師が親身になってお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。
バンコマイシンの使い方(用法・用量)
点滴静注の場合、成人では通常1日2g(力価)を1回0.5g 6時間ごと、または1回1g 12時間ごとに分割して、それぞれ60分以上かけて点滴静注します。
高齢者の場合は1回0.5g 12時間ごと、または1回1g 24時間ごとにそれぞれ60分以上かけて点滴静注します。
小児や新生児も体重や週数に応じた用量を、必ず60分以上かけて点滴投与します。
※急速なワンショット注射や短時間での点滴を行うと、ヒスタミンが遊離して「Red man(Red neck)症候群」と呼ばれる顔や首の赤み、かゆみ、血圧低下が発現するため、60分以上かけて投与することが極めて重要です。
バンコマイシンの副作用
主な副作用
一般的な副作用
- 発疹、発赤、顔面潮紅、そう痒、蕁麻疹、線状IgA水疱症
- BUN上昇、クレアチニン上昇、AST・ALT・ビリルビン上昇
- 白血球減少、血小板減少、好酸球増多
- 下痢
- 嘔気、嘔吐
- 腹痛
- 発熱
- 静脈炎、血管痛
- 注射部疼痛
重大な副作用
- 急性腎障害・間質性腎炎
- 第8脳神経障害(耳鳴り・難聴・めまい)
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)・SJS
- 薬剤性過敏症症候群(DIHS)
- 汎血球減少症
- 偽膜性大腸炎
- 肝機能障害・黄疸
副作用への対処法
バンコマイシンの点滴中に「顔や首が熱い」「身体がかゆい」「息苦しい」といった症状(Red man症候群やアナフィラキシー)を感じた場合は、すぐに点滴速度を緩めるか一時中断する必要がありますので、直ちに医療従事者(医師や看護師)へ伝えてください。
バンコマイシンの投与・服用は定期的な採血検査(腎機能や血中濃度モニタリング)や聴力検査を行いながら慎重に使用されます。
必ず医師の指示に従って、投与・服用しましょう。
バンコマイシンの注意事項(禁忌)
使ってはいけない方(禁忌)
- 過去に本剤の成分に対し過敏症(アレルギー)を起こしたことがある方(禁忌)
特に注意して使う方(慎重投与)
- テイコプラニン、ペプチド系又はアミノグリコシド系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある方
- 難聴またはその既往歴のある方
- 腎障害のある方
- 妊婦・授乳婦
- 小児・低出生体重児・新生児
- 高齢者
併用に注意が必要な薬
- 全身麻酔薬(チオペンタール等)
- 腎毒性・聴器毒性を有する薬剤
- アミノグリコシド系(アルベカシン等)
- シスプラチン
- アムホテリシンB
- シクロスポリン等
生活上の注意(使用上の注意)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定期的な血中濃度検査(TDM)を受ける | 適切な効果と安全性を保つため、指定されたタイミングで血中濃度モニタリング(採血)を行います。 |
| 点滴中の異変はすぐに伝える | 顔のほてり、かゆみ、息苦しさを感じたら、すぐに看護師や医師へ伝えてください。 |
| 血管外漏出や痛みへの注意 | 薬液が漏れると壊死の原因となるため注意します。また筋肉内注射は劇痛を伴うため行いません。 |
保管方法
- 直射日光や高温多湿を避け、室温で保管してください。(飲み薬・散剤の場合)
- 小さなお子様の手の届かない、安全な場所で保管してください。
飲み忘れたら?
入院・外来点滴の場合は医療従事者がスケジュールを管理します。
ご自宅で飲み薬(散剤等)を服用していて飲み忘れた場合は、気づいたときに服用するか、次の服用時間が近い場合は1回飛ばして指定の時間に服用してください。
絶対に一度に2回分をまとめて飲んではいけません。
ウチカラクリニックのオンライン診療では、お薬の処方を行っています。気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。年中無休で診察しています。


※心療内科ではシステム手数料をいただいております。
バンコマイシンに市販薬はある?値段は?
市販薬
バンコマイシン(バンコマイシン塩酸塩)と同じ有効成分を含む市販薬(OTC医薬品)はありません。
※重篤な感染症の治療に用いられる「処方箋医薬品」であり、医師の厳密な管理のもとで使用されます。
ジェネリック
「バンコマイシン点滴静注用0.5g『トーワ』」や「サワイ」、「バンコマイシン塩酸塩散0.5g『明治』」などの名称でジェネリック医薬品(後発品)が存在します。
薬価
| 薬剤名 | 区分 | 薬価 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|---|
| バンコマイシン点滴静注用0.5g「サワイ」 | 後発 | 681円/瓶 | 約204.3円 |
| バンコマイシン塩酸塩散0.5g「明治」 | 後発 | 1,150.8円/瓶 | 約345.2円 |
※2026年10月現在。薬価は改定などで変わる可能性があります。
※別途、処方箋料や調剤技術料などが加算されます。
添付文書
なぜTDM(トラフ値)測定や投与速度の管理が必要?
バンコマイシンを安全かつ効果的に使用するためには、「TDM(薬物血中濃度モニタリング)」と「投与速度の管理」が非常に重要です。
TDM(薬物血中濃度モニタリング)とトラフ値が必要な理由
バンコマイシンは、同じ量を投与しても、患者さん一人ひとりの年齢、体重、腎臓の働きによって体内の血中濃度が大きく変動するお薬です。
標準的な量をそのまま投与するだけでは、人によって「効かないほど薄くなってしまう(耐性菌のリスク)」か、「危険なほど濃くなってしまう(腎障害・難聴のリスク)」かのどちらかに偏ってしまいます。
そのため、患者さん個々の体の中で「今どれくらいの濃度になっているか」を血液検査で実際に測定(TDM)し、“その人にぴったりの投与量”を毎回計算・調整する必要があります。

なぜ「トラフ値(最低血中濃度)」を測るのか?
トラフ値とは、次の点滴を打つ直前(=体の中で薬の濃度が最も下がっているタイミング)の血中濃度のことです。
薬の効果をしっかり出しつつ副作用を防ぐための「安全ゾーン」に血中濃度が収まっているかを判定するには、この一番下がった状態(トラフ値)を調べるのが最も確実で標準的な基準となります。
トラフ値を測ることで、以下の判定と調整を行います。
- トラフ値が低すぎる場合
- 体内に効き目が残っていないため、投与量を増やしたり間隔を詰める調整を行います。
- トラフ値が高すぎる場合
- 薬が体内に過剰に残っていて腎臓等に負担がかかっているため、投与量を減らしたり間隔を空ける調整を行います。
投与速度と「Red man(Red neck)症候群」

バンコマイシンを急速にワンショット投与したり短時間で点滴投与すると、体内でヒスタミンが遊離します。
これにより、顔面、首、胸部などに赤みや充血、激しいかゆみ、血圧低下を引き起こす「Red man症候群」が発生しやすくなります。
この副作用を防ぐため、バンコマイシンは必ず60分以上かけて静かに点滴投与するルールが厳格に定められています。
まとめ
バンコマイシンは、MRSAをはじめとする重症難治性感染症に対して高い効果を発揮する非常に頼もしい抗生物質です。
安全に使用するためには、TDMによる血中濃度(トラフ値)のコントロールと、60分以上の適切な投与速度を守ることが何より重要となります。
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よくある質問(FAQ)
妊娠中・授乳中でも使えますか?
医師の慎重な判断が必要です。 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。また、授乳中の方は投与・服用しないか、授乳しないことが望ましいとされています。
小児(子供)でも使えますか?
使用されます。 新生児や乳幼児の重症感染症の治療にも広く使われています。ただし、腎機能の発達段階にあるため半減期が延長しやすく、血中濃度(TDM)をより慎重にモニタリングしながら投与量を調整します。
点滴中に顔が赤くなったりかゆくなったらどうすればいいですか?
すぐに看護師や医師に伝えてください。 急速投与による「Red man症候群」の可能性があるため、点滴のスピードを調節したり処置を行うことで症状が和らぎます。我慢せず速やかに知らせましょう。
いつから効き始めますか?
点滴開始後、適切な血中濃度が維持されれば1日〜3日程度で炎症数値や熱の下がりなどの効果が現れ始めます。十分な効果を得るためにTDMで血中濃度を確認しながら治療が続けられます。
お酒(アルコール)を飲んでもいいですか?
原則としてお控えください。 重症感染症の治療中であり、腎臓や肝臓への負担を避けるためにも禁酒が必須です。
点滴用と飲み薬(散剤)の違いは何ですか?
作用する場所が異なります。 点滴用は全身の血液を通じて全身の感染部位(肺や骨、心臓、血液など)へ届きます。一方、飲み薬(散剤)は腸からほとんど吸収されず、腸の中で直接MRSAやクロストリジウム菌に作用して強い大腸炎(偽膜性大腸炎等)を治療します。