前立腺肥大症の症状と治し方を解説!薬や予防法も【医師監修】
「最近おしっこの勢いが弱くなり、出終わるまでに時間がかかる…」
「夜中に何度もトイレで目が覚めて熟睡できずつらい…」
加齢とともに増える男性の排尿トラブルの中で、最も代表的な病気が前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)です。
放置すると尿が完全に出なくなってしまうリスクもありますが、初期段階から適切なお薬の服用や生活習慣の改善を行うことで、症状を大幅にコントロールできます。
この記事では、前立腺肥大症の主な原因や前兆サイン、受診時に使われる治療薬や手術の概要、日常生活で「やってはいけないこと」まで医師が詳しく解説します。
目次
前立腺肥大症とは?原因と前兆
前立腺肥大症とは、男性特有の器官である「前立腺」が加齢やホルモンバランスの変化によって大きくなり、内側を通る尿道を圧迫して排尿障害を引き起こす病気です。

前立腺肥大症の原因
明確な原因はまだ解明しきれていませんが、「加齢」と「男性ホルモンの変化」が大きく関係しています。
50歳以上の男性に多く見られ、80歳以上になると約80%の男性の前立腺が肥大しているとされています。
また、肥満や高血圧、高脂血症といった生活習慣病も悪化要因の一つです。
見逃しやすい「前兆」と初期症状
「急に尿が出なくなる」のではなく、以下のような小さな変化から始まります。
- おしっこの勢いが以前より弱くなった(尿勢低下)
- 尿が出始めるまでに少し時間がかかるようになった(排尿遅延)
- おしっこが終わった後も、すっきりせず残っている感じがする(残尿感)
「歳をとったから仕方ない」と見過ごしがちですが、これらは前立腺肥大症の重要な前兆サインです。
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前立腺肥大症の主な症状
前立腺肥大症の症状は、大きく「尿を出すとき」「尿を溜めるとき」「出し切った後」の3段階に分けられます。
排尿症状(尿を出すときの悩み)

・尿の勢いが弱い
・途中で途切れる
・腹筋に力を入れないと出ない
蓄尿症状(尿を溜めるときの悩み)

・昼間に何度もトイレに行く(昼間頻尿)
・夜間に1回以上トイレで起きる(夜間頻尿)
・急に強い尿意が襲ってくる(尿意切迫感)
排尿後症状(出し切った後の悩み)

・尿を出した後にまだ残っている感じがする(残尿感)
・尿切れが悪く下着が汚れる
性機能(ED)や性行為への影響

・前立腺の腫れや骨盤内の血流低下
・あるいは精神的なストレスによる勃起障害(ED)
・射精時の違和感
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前立腺肥大症の治し方(お薬・手術)
前立腺肥大症の治療は、まず負担の少ない「内服薬(飲み薬)」からスタートするのが一般的です。
代表的な処方薬
タムスロシン

「選択的α1(アルファワン)遮断薬」という種類に分類される、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬です。
肥大した前立腺や、尿道の筋肉の緊張をゆるめることで、尿の通り道を広げ、おしっこを出しやすくします。
シロドシン

主に男性の前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善するために使われる「選択的α1A受容体遮断薬」という分類のお薬です。
前立腺や尿道にある筋肉の過剰な緊張を和らげ、尿道を広げることで、おしっこの勢いを良くしたり出しやすくしたりする高い効果があります。
タダラフィル・ザルティア

前立腺や尿道の筋肉(平滑筋)を緩めるとともに、血管を広げて血流をスムーズにする薬です。
頻尿や排尿困難の双方に効果が期待できます。
アボルブカプセル

「5α還元酵素阻害薬」という種類に分類される、前立腺肥大症の治療薬です。
男性ホルモンに働きかけることで、肥大した前立腺を物理的に小さくし、尿道の圧迫を和らげます。
ベオーバ

有効成分「ビベグロン」を配合した過活動膀胱(OAB)の治療薬(選択的β3受容体刺激薬)です。
膀胱の緊張を和らげて広げることで、尿をしっかり溜められるようにし、急な尿意や頻尿症状を改善します。
手術療法について
お薬を飲んでも効果が不十分な場合や、尿が完全に出なくなってしまう「尿閉」を繰り返す場合は、内視鏡を用いた手術(TURPやHoLEP、最新の低侵襲治療など)が検討されます。
市販薬で治療する場合の注意点
近年、ドラッグストアでも頻尿・残尿感を改善する市販薬が販売されています。
しかし、これらの市販薬は、過去に医師から「過活動膀胱」など、と診断されたことがある人などを対象としており、誰にでも効果があるわけではありません。
特に、男性や、排尿時の痛みなど他の症状がある場合は、自己判断での使用は危険です。頻尿の原因は様々であり、原因に合わない薬を使っても効果がないばかりか、 根底にある病気の発見を遅らせてしまう可能性があります。
初めての症状で悩んでいる場合は、まず泌尿器科を受診し、正確な診断を受けることが最も重要です。

前立腺肥大症になったら「やってはいけないこと」
症状を悪化させないために、日常で注意すべきNG行動とセルフケアを押さえておきましょう。
やってはいけないこと(悪化させるNG行動)

【おしっこを無理に我慢する】
膀胱が伸び切ってしまい、突然おしっこが全く出なくなる「急性尿閉」を引き起こす原因になります。

【体を冷やす(特に下半身)】
寒さや冷えによって交感神経が刺激されると、尿道周辺の筋肉が固くなり、尿が出にくくなります。

【お酒(アルコール)やカフェインの摂りすぎ】
お酒は一時的に利尿作用が高まるものの、前立腺が充血して尿道を圧迫するため危険です。

【長時間の座りっぱなし】
長時間のデスクワークやドライブは、骨盤内の血流を悪くして前立腺を刺激します。
定期的に立ち上がりましょう。
自宅でできるトレーニング・ツボ・予防ケア
お薬による治療と並行して、日常でトレーニングやセルフケアを取り入れることで、症状の改善や予防効果が高まります。
骨盤底筋トレーニング(骨盤底筋体操)
骨盤底筋は、膀胱や尿道を支え、尿道を締める役割を持つ重要な筋肉です。この筋肉を鍛えることで、急な尿意や尿漏れの改善が期待できます。

- 仰向けに寝て、膝を軽く立てます。
- お尻の穴や膣を、きゅーっと5秒間かけてゆっくり締めます。
- その後、5秒間かけてゆっくりと力を抜きます。
- この動作を10回ほど繰り返します。1日に数セット行うのが理想です。
膀胱訓練
これは、尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、少しだけ我慢する習慣をつける訓練です。
最初は5~10分から始め、無理のない範囲で徐々に排尿間隔を延ばしていくことで、膀胱に尿を溜める容量を増やし、尿意をコントロールする感覚を取り戻していきます。
適度な運動(ウォーキングなど)で血行を改善する

ウォーキングなどの有酸素運動により骨盤周りの血流が良くなると、前立腺や膀胱の過剰な緊張がほぐれ、排尿トラブルの和らぎが期待できます。
膀胱を刺激する飲食物を避ける
特定の飲食物は、膀胱を直接刺激したり、利尿作用によって尿量を増やしたりします。次のようなものに心当たりのある方は、摂取量や時間帯を見直してみましょう。
- 利尿作用のあるもの: カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど)、アルコール
- 膀胱を刺激するもの: 炭酸飲料、柑橘類などの酸味の強い果物、トマト、香辛料の多い食事
- その他: 塩分の摂りすぎは、体の水分バランスを崩し、喉が渇いて水分摂取量が増える原因になります。減塩を心がけることも大切です。
体を温めて「冷え」を防ぐ
体が冷えると、膀胱の周りの筋肉が収縮・緊張し、膀胱が刺激されて尿意を感じやすくなります。特に下半身の冷えは頻尿に直結するため、体を温める工夫を生活に取り入れましょう。

腹巻きやレッグウォーマー、厚手の靴下などを活用し、腰回りや足元を冷やさないようにしましょう。
体を締め付ける服装は血行を悪くするので避けるのがベターです。

入浴もシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくり浸かって体を芯から温めましょう。
温かいスープや飲み物などを意識して摂るようにするのもオススメです。
便秘を予防する(溜まった便が前立腺を圧迫するため)

腸内に硬い便が溜まると目と鼻の先にある前立腺や膀胱を直接圧迫してしまうため、十分な食物繊維や水分を摂ってスムーズな通じを保つことが大切です。
まとめ
前立腺肥大症は、50代以上の男性にとって非常に身近な排尿の病気です。
「尿が出にくい」「夜中に何度も起きる」といった症状は、タムスロシンやタダラフィルなどの適切な処方薬を正しく使うことで、大幅な改善が期待できます。
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前立腺肥大症に関するよくある質問(FAQ)
ドラッグストアなどの市販薬で治せますか?
市販の漢方薬やサプリメントで症状が軽くなることはあっても、根本的に肥大した前立腺を治すことはできません。
前立腺肥大症を正しく治すには、医療機関で処方されるα1遮断薬やタダラフィルなどの処方薬が必要です。自己判断で放置せず受診をおすすめします。
前立腺肥大症は「前立腺がん」に進行しますか?
前立腺肥大症が進行して「前立腺がん」になるわけではありません。
ただし、良性の肥大症と悪性のがんは「発生する場所」が異なるだけで、併発(同時に存在する)することがあります。定期的にPSA検査(血液検査)を受けることが大切です。
前立腺肥大症は自然に治る(治癒する)ものですか?
加齢やホルモンが影響しているため、自然に前立腺が小さくなって治る可能性は低いです。
放置すると膀胱の機能まで低下してしまうため、早めに適切な処方薬でコントロールを行うことが重要です。
治療薬(タダラフィル等)を飲むと性機能に影響はありますか?
お薬の種類によって影響が異なります。
例えばタダラフィル(ザルティア)などは、血流を促す作用があるためED症状の改善にも良い影響を与えることがあります。一方、一部のお薬では射精障害などが起こる場合があるため、気になる方は医師に相談してみましょう。
症状があるとき、お酒(アルコール)を飲んでもいいですか?
症状が悪化したり「尿閉」を起こしたりする危険があるため、飲酒は極力控えましょう。
アルコールはお酒を飲んでいる最中に一時的な利尿作用をもたらしますが、その後前立腺が激しく充血し、尿道を完全に塞いでしまう事故が多く発生します。
