陰部のズキズキ・ツーンとした痛みや発赤、原因は？治療法、対策まで医師が解説！

「デリケートゾーンがヒリヒリ痛い」「赤くなっていてかゆい」など、陰部のトラブルは非常にデリケートな問題で、誰にも相談できずに一人で悩んでしまう方が少なくありません。

しかし、その痛みや赤みは、体が発している重要なサインかもしれません。

この記事では、陰部に痛みや赤みが生じる原因や症状、検査、治療法から予防策まで、医師がわかりやすく解説します。

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陰部の痛み/赤みの原因は？よくある症状とは

陰部の不快な症状は、生活の質を大きく低下させます。まずは、どのような症状があり、どんな原因が考えられるのかを正しく理解しましょう。

陰部の痛み/赤みとは？

陰部の痛み・赤みとは、外陰部（デリケートゾーン）やその周辺の皮膚・粘膜に生じる、様々な不快症状の総称です。

ヒリヒリ、ズキズキとした「痛み」や、皮膚が炎症を起こしている「赤み」のほか、かゆみや腫れ、できものなど、多彩な症状を含みます。これらの症状は単独で現れることもあれば、複数が同時に現れることもあります。

陰部の痛み/赤みでよくある症状

陰部のトラブルでは、以下のような症状がよく見られます。

皮膚が赤くなっている、腫れている
ヒリヒリ、チクチク、ズキズキとした痛み
じっとしていても、あるいは下着が触れるだけで痛い
我慢できないほどの強いかゆみ
皮膚がただれたり、じゅくじゅくしたりしている
小さな水ぶくれやブツブツができている
おりものの量、色、匂いがいつもと違う
排尿時や性交時に痛みを感じる

症状の程度や続く期間は原因によって様々ですが、感染症などが原因の場合、治療をしないと症状が続いたり、悪化したりすることが一般的です。

陰部の痛み/赤みの原因【感染症】

カンジダ膣炎・外陰炎

強いかゆみと、白いカッテージチーズ状のおりものが特徴的な、カンジダという真菌（カビ）による感染症です。

詳しくはこちらの記事をチェック！→膣カンジダとは？症状・原因・薬の治療法・予防法について医師が完全解説！

性感染症（STD）

性器ヘルペス
痛みを伴う複数の水ぶくれができます。一度感染すると、体調が悪いときなどに再発を繰り返すことがあります。
詳しくはこちらの記事をチェック！→性器ヘルペスとは？症状・原因・治療法・予防法について医師が完全解説！
クラミジア・淋菌感染症
おりものの増加や不正出血、下腹部痛などが主な症状ですが、外陰部の違和感や痛みを伴うこともあります。
トリコモナス膣炎
泡状で悪臭のあるおりものと、激しいかゆみ、赤みが特徴です。

細菌性膣症

膣内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増えることで起こります。魚が腐ったような生臭い匂いのおりものが特徴で、痛みやかゆみを伴うことがあります。

毛嚢炎（もうのうえん）

ムダ毛の処理後などに、毛穴から細菌が入り込んで炎症を起こし、ニキビのように赤く腫れて痛むことがあります。

陰部の痛み/赤みの原因【感染症以外】

接触皮膚炎（かぶれ）

生理用ナプキン、おりものシート、下着の素材、石鹸やボディソープ、コンドームのラテックスなどが肌に合わず、かぶれて痛みや赤みを引き起こします。

蒸れや摩擦

通気性の悪い下着や、締め付けの強い服装によってデリケートゾーンが蒸れると、あせもや炎症が起きやすくなります。

萎縮性膣炎

閉経後の女性ホルモンの減少により、膣や外陰部の粘膜が乾燥して薄くなり、些細な刺激で痛みや出血が起こりやすくなります。
「閉経で起こる体の変化」はこちらの記事をチェック！→閉経後気を付けること・体の変化と対策について医師が完全解説。

物理的な刺激

自己処理によるカミソリ負けや、洗いすぎによる乾燥も、痛みや赤みの原因となります。

陰部の痛み/赤みの検査

陰部の症状で医療機関を受診すると、まず詳しい問診が行われ、症状に合わせ原因を特定するための検査を実施します。

問診: 症状がいつからか、痛みやかゆみの程度、おりものの状態、生理周期との関連、性交渉の有無などを詳しく確認します。
視診: 医師が患部の状態（赤み、腫れ、ただれ、水ぶくれの有無など）を直接目で見て確認します。
おりもの検査: 膣や外陰部から綿棒でおりものを採取し、顕微鏡で観察して、カンジダやトリコモナス、細菌の状態などを調べます。
培養検査・PCR検査: 性器ヘルペスやクラミジア、淋菌といった性感染症が疑われる場合、原因となるウイルスや細菌を特定するために行われます。

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陰部の痛み/赤みの塗り薬

抗真菌薬

カンジダなどが原因の場合に処方されます。

エンペシドクリーム（クロトリマゾールクリーム）【抗真菌薬】

カンジダ菌の細胞膜を壊すことで、その増殖を抑える塗り薬です。

詳しい解説はこちら
→エンペシドクリーム

抗ウイルス薬

性器ヘルペスの水ぶくれや痛みを抑えます。

アシクロビル（ゾビラックス）

ヘルペスウイルスのDNA複製を阻害し、ウイルスの増殖を抑える塗り薬です。

詳しい解説はこちら
→アシクロビル（ゾビラックス）

ステロイド薬

かぶれや皮膚炎による強い炎症や赤みを抑えます。

リドメックスコーワ（プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル）

デリケートゾーンにも使用できる、比較的マイルドなステロイドで、かぶれによる炎症を鎮めます。

詳しい解説はこちら
→リドメックスコーワ

抗菌薬

毛嚢炎など細菌感染が原因の場合に用いられます。

アクアチム（ナジフロキサシン）

細菌の増殖を抑えるニューキノロン系の抗菌薬で、毛嚢炎などの治療に用いられます。

詳しい解説はこちら
→アクアチム（ナジフロキサシン）

陰部の痛み/赤みの飲み薬

抗真菌薬

塗り薬だけでは改善しないカンジダ症の場合に使われます。

フルコナゾール（ジフルカン）

体内に吸収され、血流に乗って全身に作用する飲み薬タイプの抗真菌薬です。

詳しい解説はこちら
→フルコナゾール

抗ウイルス薬

性器ヘルペスの症状が広範囲な場合や、再発を繰り返す場合の抑制療法として用いられます。

バルトレックス（バラシクロビル）

体内でアシクロビルに変化し、ヘルペスウイルスの増殖を強力に抑える飲み薬です。

詳しい解説はこちら
→バルトレックス（バラシクロビル）

抗菌薬（抗生物質）

クラミジア、淋菌、細菌性膣症などの治療に不可欠です。

ジスロマック（アジスロマイシン）

細菌のタンパク質合成を阻害する抗菌薬で、特にクラミDジア感染症の治療によく用いられます。

詳しい解説はこちら
→ジスロマック

陰部の痛み/赤みの膣錠

膣内で直接作用させるお薬で、カンジダ膣炎、トリコモナス膣炎、細菌性膣症などの治療に効果的です。

エンペシド膣錠（クロトリマゾール膣錠）

膣内で直接溶けてカンジダ菌を殺菌し、膣炎の症状を根本から治療します。

詳しい解説はこちら
→エンペシド膣錠

フラジール膣錠（メトロニダゾール膣錠）

トリコモナス原虫や特定の細菌に対して効果を発揮し、膣内の環境を正常化させます。

詳しい解説はこちら
→フラジール(メトロニダゾール)

市販薬で治療する場合の注意点

陰部の痛みや赤みに市販薬を自己判断で使うのは、原因の特定が難しく、大きなリスクを伴います。かゆみ、赤み、痛みといった症状は、カンジダ、ヘルペス、かぶれなど、様々な原因で起こるからです。

特に危険なのは、原因が感染症である場合に、かぶれ用のステロイド薬を使ってしまうことです。免疫の働きが抑えられ、かえって症状を悪化させる可能性があります。また、カンジダ用の薬を他の感染症に使っても効果はなく、適切な治療が遅れるだけです。

さらに、カンジダの場合、市販薬を使えるのは、過去に医師からカンジダと診断され、症状から再発だと確信できる場合などに限られます。

初めての症状や原因が不明な場合、また水ぶくれや発熱などを伴う場合は、市販薬に頼らず必ず医療機関を受診してください。

陰部の痛み/赤みの治し方・予防

陰部の不快な症状を少しでも早く和らげ、再発を防ぐためには、薬による治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。

通気性を保ち、締め付けを避ける

デリケートゾーンの蒸れは、炎症の悪化と雑菌繁殖の大きな原因です。症状があるときは特に、通気性の良い綿素材の下着を選び、締め付けの強いスキニーパンツなどを避けて、患部を乾燥した状態に保つことが治癒を助けます。

優しく洗い、清潔を保つ

ゴシゴシ洗うのは、痛みを悪化させ、治りを遅らせる原因になります。洗浄力の強い石鹸やビデは避け、ぬるま湯か低刺激のソープで外陰部を優しく洗い流す程度にしましょう。清潔を保つことは、二次感染の予防にも繋がります。

ナプキン・おりものシートはこまめに交換する

経血やおりものが付着したナプキンは、蒸れとかぶれを助長し、治癒を妨げます。症状があるときは特に、2〜3時間を目安にこまめに交換し、デリケートゾーンを清潔で乾いた状態に保つことが大切です。

免疫力を高める生活を心がける

症状からの回復力は、体の免疫力に大きく左右されます。十分な睡眠とバランスの取れた食事を基本とし、ストレスや疲労を溜めないようにしましょう。体が本来持つ治癒力を高めることが、症状改善への近道であり、再発防止の基本です。

性交渉に関する注意点

症状がある間の性交渉は、摩擦による悪化や、パートナーへの感染リスクがあるため避けるべきです。また、性感染症は再発や再感染を防ぐため、パートナーと同時に治療を受けることが原則となります。普段からの予防には、コンドームの使用が最も効果的です。

陰部の痛み/赤みのよくある質問

陰部のトラブルに関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
ご自身の状況と照らし合わせて、解決のヒントを見つけてください。

どんな人が陰部の痛み・赤みがでやすいですか？

疲労やストレスで免疫力が低下している方、抗生物質を服用中の方、妊娠中や糖尿病の方はカンジダ症になりやすいです。不特定多数の方と性交渉の機会がある方も性感染症のリスクは高まります。また、通気性の悪い服装を好む方は、蒸れによる皮膚トラブルが起きやすくなります。

受診や治療にかかる費用はどのくらいですか？

健康保険（3割負担）の場合、初診で問診と視診のみであれば2,000円～3,000円程度、おりもの検査を行うと5,000円～7,000円程度が目安です。クラミジアや淋菌など複数の性感染症検査を行うと、10,000円～15,000円程度になることもあります。これに加えて、薬代が別途かかります。

放置しても大丈夫？自然に治ることはありますか？

軽いかぶれなどであれば、原因を取り除くことで自然に治ることもあります。しかし、感染症は放置しても治らないことが多く、悪化するリスクがあります。特に、クラミジアなどの性感染症を放置すると、将来的に不妊症の原因になることもあります。また、パートナーにうつしてしまう（ピンポン感染）危険性もあるため、症状があれば必ず受診しましょう。

パートナーへの対応はどうすればよいですか？うつる可能性はありますか？

原因によって対応が異なります。性器ヘルペス、クラミジア、トリコモナスなどの性感染症（STD）と診断された場合は、パートナーにも感染している可能性が非常に高いため、症状がなくても一緒に検査・治療を受けることが必須です。治療が終わるまでは、性交渉は控えましょう。
カンジダは性感染症ではありませんが、性交渉によってパートナーにうつる（症状を引き起こす）可能性はあります。細菌性膣症は、基本的にはうつりません。いずれにせよ、症状がある間の性交渉は、摩擦による悪化を防ぐためにも避けるのが賢明です。

治療期間はどのくらいですか？

カンジダやかぶれであれば、1週間程度の治療で改善することがほとんどです。性感染症の場合は、原因菌によって異なりますが、数日～2週間程度の服薬が必要になることもあります。性器ヘルペスは、一度感染すると体内にウイルスが潜伏するため、再発を繰り返す可能性があります。

陰部の痛み・赤みがある場合、何科を受診すればよいですか？

女性の場合は、まず婦人科を受診するのが第一選択です。おりものの異常を伴う感染症から、かぶれなどの皮膚トラブルまで、幅広く診断・治療が可能です。
男性の場合は、泌尿器科または皮膚科を受診しましょう。尿道からの膿や排尿時痛があれば泌尿器科、皮膚の赤みやブツブツ、水ぶくれが主症状であれば皮膚科が適しています。